「フォルダブルはスマートフォンの新たなメインストリームだ」――こう語ったのは、サムスン電子のモバイル事業を率いるTMロー(ノ・テムン)氏だ。その言葉通り、同社が新たに発表した「Galaxy Z Fold3 5G」と「Galaxy Z Flip3 5G」は、2020年のモデルから価格を引き下げ、利用シーンを広げる防水に対応。初代「Galaxy Fold」の登場から3世代目にして、ついにフォルダブルスマートフォン普及のアクセルを踏んだ格好だ。
そんな2機種が、ついに日本で発売される。日本では、上記の特徴に加え、フォルダブルスマートフォンとして初めておサイフケータイに対応。取り扱いキャリアにはドコモが加わり、初代から継続的に販売しているauとの2キャリア展開になった。日本での戦略もグローバルと同じで、フォルダブルのメインストリーム化を狙う。ここでは、そんなGalaxy Zシリーズの特徴をおさらいするとともに、サムスンの狙いを読み解いていきたい。
Galaxy Z Fold3 5G/Flip3 5Gの投入にあたり、サムスンはこれまでのラインアップを大きく見直している。Galaxy Noteシリーズの投入を見送ったのだ。もともと同社は、フラグシップモデルのツートップ体制を取り、2月から3月にベーシックなハイエンドモデルであるGalaxy Sシリーズを、8月から9月に大画面とSペンを売りにしたGalaxy Noteシリーズを発表していた。このGalaxy Noteに代わって“主役の座”についたのが、フォルダブルスマートフォンのGalaxy Zシリーズだ。先に挙げたTMロー氏の言葉を借りれば、Galaxy Zのメインストリーム化ともいえる。
背景には、Galaxy SとGalaxy Noteの差別化が難しくなっていたこともありそうだ。通常のスマートフォンより大きなディスプレイを搭載し、一時は「ファブレット」とも呼ばれたGalaxy Noteだが、この狙いが当たったこともあり、各社とも大画面化に追随。結果としてスマートフォンそのものの大画面化が進み、今では6型以上のディスプレイを搭載する端末が当たり前の存在になっている。これは、サムスン自身も例外ではない。
Galaxy Sも、通常版と「+」を冠した大画面版に分かれ、2020年からはカメラを強化した最上位モデルとして、「Galaxy S20 Ultra 5G」がラインアップに加わっている。2021年もそのラインアップは継続しており、4月には、1億画素のカメラや最大100倍ズームが売りの「Galaxy S21 Ultra 5G」が発売されている。ディスプレイサイズだけなら、Galaxy Noteを選ぶ理由が薄くなってきていたというわけだ。
もう1つの特徴であるSペンも、Galaxy S21 Ultra 5Gが対応したことで優位性が失われている。本体にSペンを収納できるのは今のところGalaxy Noteだけだが、Galaxy S21 Ultra 5G用の純正のケースにその機能を持たせることで、端末本体と一緒に持ち運べるようになった。ケースに収納するのであれば、Sペンを利用しないユーザーは選択しなければいいだけで、大画面だけに魅力を感じていたユーザーとSペンまで利用していたユーザーの双方を取り込める。大画面化という1つのトレンドを作り出したGalaxy Noteではあるが、存在意義が薄れてきていたのも事実だ。
この間、2019年に紆余(うよ)曲折を経て投入されたフォルダブルスマートフォンも徐々に進化してきた。2020年にはシリーズ名称をGalaxy Zに改め、フィーチャーフォンのように折りたんでコンパクトなサイズになる初代「Galaxy Z Flip」を発表。同年8月には、5Gに対応した事実上の2代目である「Galaxy Z Flip 5G」と、Galaxy Foldの後継機にあたる「Galaxy Z Fold2 5G」を披露している。ディスプレイそのものを折り曲げる斬新な機構を採用していたこともあり、当初は設計や生産に苦労していたが、徐々にそれも解消。満を持して、3代目となるGalaxy Z Fold3 5G/Flip 3 5Gをメインストリームに押し上げた格好だ。
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