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銀行間の個人送金を手軽かつ安価に メガバンク5社が立ち上げた「ことら」の狙い(2/2 ページ)

» 2021年10月05日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]
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決済サービスの垣根を越えた送金も可能に

 銀行口座直結以外の、例えばPayPayのような決済サービスだと、基本的には銀行口座やクレジットカードから残高をチャージして決済を行う。送金する場合も、残高内のバリューを送り合う形だ。そのため、例えばPayPayからd払いに残高を送る、というような相互運用性は成り立ちにくかった。

ことら 既存の決済サービスから送金するには、まずはチャージをする必要がある(画像はPayPay)

 ことらは、こうした相互運用性の実現にも取り組んでいく考え。実現方法は検討段階だが、例えばPayPayに「ことらで送金」ボタンが加わり、送金相手の電話番号を入力すると相手の決済サービスを問わずに登録された口座にPayPayの残高が送金される、という方法などがあり得る。この場合、これまでのように「一度残高から自分の銀行口座に出金し、それを改めて相手の銀行口座に送金する」という二度手間が発生しない。ことらの手数料はかかるが、銀行での送金よりも有料だが安価に送れる。これまで通りPayPay同士の送金なら無料で済む、といったすみ分けになるだろう。

 pringを買収したGoogleも、ことらを使えばpringの資産を使わずに金融機関と接続できる。ことらと接続するためのAPIの開発を、国内の開発者を抱えるpringが担う、という可能性もありそうだ。

 ことらの手数料は、銀行間の送金手数料よりは安価なので、決済事業者によっては優良顧客には月数回無料にする、といったサービスもあり得る。ことらの手数料にはJ-Debitのネットワーク利用料も含まれるというが、それでも従来よりも安価になるため、手軽に送金が可能になることが期待できる。

 銀行間の送金でも、基本的には個人同士をターゲットにしているため、例えば法人口座ではことらを利用できないようだ。今後は法人利用も検討するとはしつつ、まずは個人間の利用で全銀システムとのすみ分けを図る狙いだ。

資金決済インフラをブレークスルー

川越洋

 さらに、税金の支払いにことらを利用する計画もある。現在、税金の支払いなどでは、自動引き落としや役所の窓口に加え、請求書記載の番号を入力して振り込むPay-easyや、コンビニエンスストアで支払うという方法はある。昨今ではコード決済アプリの中で請求書のバーコードを読み込んで支払う方法も出てきている。

 総務省は請求書にQRコードを付与して振り込みを容易にする計画を示しており、ことらではこのコードを読み取って送金できるようにしたい考えだ。これもJ-Debit基盤を使うことらならではで、新たに自治体などと交渉しなくても、コード決済事業者がことらのAPIに接続すれば、請求書払いに対応したほとんどの自治体で、QRコードを使った支払いが可能になるとみられる。

 こうした機能は、一部の地方銀行から要望があったとのことで、窓口に行かなくても容易に税金の支払いができるという点がメリットだ。

 今後、次期全銀システムの議論も始まるが、そうした議論にはことらとしても参画し、全銀ネットとの役割分担も議論して、決済システムとしてのあるべき姿を議論していきたい、と川越社長。

 川越社長は「全銀ネットにはない機能をことらで提供する。全銀ネットには流れない、(個人間送金という)キャッシュの部分を拾い、ことらに接続する事業者がエンドユーザーに対して新しいサービスを提供できるようにしていく」と意気込む。ことらによって、「日本の資金決済インフラをブレークスルーするために取り組んでいる」と川越社長はアピールしている。

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