NTTドコモがようやく「エコノミーMVNO」を発表した。
ただ、昨年12月に発表した「ahamo」の衝撃的なデビューに比べると何とも中途半端でインパクトに欠ける内容だった。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年10月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
実際のところ、どこまでユーザーが興味を示すかはかなり微妙だ。
現在のドコモユーザーで、あまりデータを使わない人が「それに見合ったプランがない」と嘆くのは無理もない。「ギガライト」を展開しているが、お世辞にもコストパフォーマンスがいいとは言えない。ドコモユーザーであまり容量を使っていないのであれば他社に乗り換えたくなるのもよくわかる。
だからといって「ドコモショップで契約できるMVNO」が、そうしたユーザーのニーズを満たすモノなのだろうか。おそらく、昨年12月の段階で登場していれば、印象も変わったが、すでにLINEMOが3GBで990円というミニプランを出し、povoは基本料金ゼロ円を打ち出している。
NTTコミュニケーションズで0.5GBで550円というプランを新設したが、他社に比べれば、安いという感じは全くしない。
ユーザーとすれば、一度、NTTドコモを解約し、MNP手続きをして、MVNOに新規契約する流れとなる。ソフトバンクなどはブランド間の移行がスムーズにできるのとは対照的だ。
KDDIとソフトバンクは一度、サブブランドを使っても、すぐにメインブランドに戻れるようになっているので、将来的に通信料収入の回復が見込める。
エコノミーMVNOでは、通信品質に満足できなかった場合、NTTドコモに戻るのも、他グループに行くのも同じ手間となるため、ユーザーが他グループに流出する可能性もあるだろう。
KDDIやソフトバンクの場合、電気とのセット割や家族まるごとでの契約など、ARPUを上げることのできる仕掛けが備わっている。一方、エコノミーMVNOは単なる収入減にしかならない。
ドコモショップでの手続きを売りとしているが、その費用を負担するのはMVNO側だ。dポイントの付与もMVNOが負担する。そもそも「サポートがないから安い」という触れ込みであったMVNOだが、店頭でのサポートをするとなると、それだけのコスト増を吸収するのは無理があるのではないか。
結局、ショップへの手数料をあまり支払えないようだと、ドコモショップとして、販売するモチベーションも下がることだろう。
確かにフリービットが手がけるトーンモバイルのように子供の初めてのスマホに特化したようなサービスをドコモショップで販売するというのは、ユーザーそしてMVNOであるフリービットにとってはメリットがあるだろう。
しかし、NTTドコモとすれば、ユーザーが他社に流れるエコノミーMVNOよりも、手数料はかかるが、店頭でahamoを販売する方に注力していくのではないか。
エコノミーMVNOは、もっと早くサービスを開始できていたら、状況は変わっていたはずだ。なぜ、昨年12月にチラ見せをしてしまったのか。あの段階でチラ見せするなら、もっと早くサービス開始すべきだったが、やはり、NTTと総務省の会食問題が足を引っ張ったのだろう。先週、総務省での情報通信行政検証委員会からの報告書が出たことで、ようやくエコノミーMVNOを発表できた感がある。
本来であれば、エコノミーMVNOはお蔵入りにして、ahamoで3GBプランを出せば良かったものの、昨年12月にチラ見せしたモノだから、何とも中途半端なサービスとなってしまったのが本当に残念だ。
© DWANGO Co., Ltd.