y.u mobileのシングルU-NEXTプランや、NUROモバイルのNEOプランは、U-NEXTが付帯していたり、ゼロレーティングやデータ容量の繰り越しがついていたりと、MNOのオンライン専用プランとは差別化が図れている一方で、料金そのものの水準はahamoやpovo2.0、LINEMOなどの20GBプランに近い。価格ではなく通信の上に乗るサービスで競争している点で、これまでのMVNOとは異なる動きといえそうだ。
背景には、MNOがMVNOの料金水準に踏み込み、競争が激化していることがありそうだ。もともと20GB一択の中容量プランとして導入されたMNO各社のオンライン専用料金プランだが、7月にはソフトバンクのLINEMOが3GBで990円の「ミニプラン」を導入。9月にはKDDIのpovo2.0も、月額料金を0円にして、トッピングで自由にデータ容量を追加できる形に料金プランを一新した。y.u mobileのシングルプランは5GBで1070円、NUROモバイルのバリュープラスは3GBで792円、5GBで990円と、MNOの低容量プランより一段安いものの、価格差が縮まりつつあるのも事実だ。
政府主導で進んだ携帯電話の料金値下げだが、値下げにも限界がある。MVNOの生存領域が狭まっている中、“新天地”として求めたのが中容量の料金プランだった。とはいえ、データ容量の利用が多いユーザーは、「小容量のお客さまと求めているものが違う。大容量になればなるほど、高い通信品質を求めるようになる」(同)。価格を下げるのではなく、一定程度の品質を保ちつつMNOに対抗する必要があるというわけだ。
NUROモバイルがNEOプランに専用の帯域を用意したのは、そのためだ。NUROモバイルは、ソニーグループの開発したAIを使い、最適な帯域を自動で割り当てているが、NEOプランにもこの仕組みを導入して、安定した通信速度を出していく方針だ。y.u mobileも、グループ内の法人回線と帯域を共有し、統計多重化効果を効かせることで品質を向上させている。MNOと完全に同じとはいかないまでも、従来のMVNO以上に通信品質を重視しているといえる。
ユーザー属性を見ても、小容量のプランだけでは取りこぼしがあったことは否めない。NUROモバイルの神山氏によると、NEOプランがターゲットとする10GBから20GB未満の料金プランを契約しているユーザーは、30代以下の割合が過半数を占め、「小容量のバリュープラスでは、このセグメントのニーズに対応できていないことが分かった」。結果として、ユーザー層が30代以上に偏っていたといえる。MNOのオンライン専用プランに対抗するには、20GBの容量が欠かせなかったのだ。
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