20GBの中容量帯でahamoやpovoに反撃 y.u mobileとNUROモバイルの新プランを解説石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2021年10月30日 08時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 大手キャリアが料金を値下げし、低容量プランでMVNOの得意とする領域に攻め込みつつある中、MVNO側も徐々に中容量プランの市場を開拓し始めるようになった。10月1日には、y.u mobileがU-NEXTをセットにした「シングルU-NEXT」プランをスタート。データ容量は10GBだが、U-NEXT側につくポイントでデータ容量を購入すると、20GBまで料金の範囲内で増やすことができる。料金は2970円で、オンライン専用料金プランとしてユーザー数を増やすドコモのahamoと同額だ。

y.u mobile y.u mobileは、U-NEXTをセットにしたシングルU-NEXTプランを10月1日に導入した

 11月1日には、ソニーネットワークコミュニケーションズのNUROモバイルも、データ容量20GBの新料金プランを追加する。「NEOプラン」がそれだ。同プランの価格は2699円で、こちらはKDDIのpovo2.0の20GBトッピングより1円だけ安い。同社はNEOプラン専用の帯域を用意し、通信品質でも“MNO並み”を目指す。低容量、低価格を得意としていたMVNOだが、MNO各社のサブブランドやオンライン専用プランに対抗する形で、下克上を狙う。その詳細を見ていこう。

NUROモバイル NUROモバイルは、20GBの中容量プランとなるNEOプランを11月に開始する

中容量の領域に攻め込むy.u mobileとNUROモバイル

 y.u mobileのシングルU-NEXTプランは、データ容量10GBにU-NEXTがセットになったプラン。料金は2970円で、ドコモのオンライン専用プランであるahamoと同額だ。一見すると、データ容量はahamoの半分しかないように思えるが、U-NEXTに加入していると、毎月1200ポイントが付与される。このポイントで、追加のデータ容量を10GB購入でき、合算すると20GBの中容量プランになる。

y.u mobile シングルU-NEXTプランのデータ容量は10GBだが、1200ポイントで10GBを追加でチャージでき、合計すると20GBになる

 最大の目玉は、月額料金が2189円のU-NEXTがセットになっていることだ。もともとU-NEXTを契約しているユーザーにとっては、差額の781円を払うだけで20GBのデータ容量を維持できることになる。U-NEXTをこれから契約したいという人にも、お得なプランといえる。U-NEXTの加入者は現在200万人を超えており、MVNOにユーザーを呼び込みやすい。U-NEXTの加入を促進できるという点では、まさにシナジー効果のあるプランといえる。

 10月1日にスタートしたシングルU-NEXTプランだが、ユーザーからの反響も大きいという。y.u mobileの運営元であるY.U-mobileの代表取締役社長、鹿瀬島礼氏は「(新規契約の比率は)全体を100とすると、60は(5GBの)シングルプランだが、シングルU-NEXTプランが35、残りの5がシェアプラン」と明かす。もともとは低容量のシングルプランに大きく偏っていたが、シングルU-NEXTプランを導入したことで、中容量が増えた格好だ。鹿瀬島氏は「U-NEXT付きをフックに、中容量に踏み込める環境が整った」と胸を張る。

y.u mobile 低容量で価格の安いシングルプランの契約者が圧倒的に多かったが、シングルU-NEXTプラン登場後は、契約比率が変わってきているという
y.u mobile Y.U-mobileの鹿瀬島礼社長

 対するNUROモバイルは、11月1日から新料金プランの「NEOプラン」を導入する。NUROモバイルは4月に「バリュープラス」を導入し、10GB以下の低容量ユーザーにターゲットを絞った。対するNEOプランは、データ容量が20GBと中容量で、料金は2699円。意識したのは恐らく2700円に設定されているpovo2.0の20GBトッピングで、料金は1円だけ安い。MVNOの料金は、MNOより割安になることが当たり前だったが、NEOプランはそのセオリーに沿っていないようにも見える。

NUROモバイル 新料金のNEOプランは、20GBで2699円。価格はMNOのオンライン専用プラン並みだ

 NEOプランでNUROモバイルが目指したのは、「MNOと同等の品質」(MVNO事業室 室長 神山明己氏)だ。NUROモバイルはMNOから借りるネットワークを分け、NEOプラン専用の帯域を用意。神山氏は「専用帯域を確保することで、MNOとの接続点がボトルネックにならないような設計思想を導入した」と語る。同社は以前、Xperia限定の「プレミアム帯域オプション」を提供し、高機能な端末と高速な通信を組み合わせていたが、NEOプランの設計もそれに近いといえそうだ。

NUROモバイル NEOプランには、専用の帯域が用意され、バリュープラスよりも安定して速度が出やすいという

 また、中容量以上のデータ通信量を求めるユーザーが、20代、30代といった若年層に多いことから、LINE、Twitter、InstagramといったSNSの通信量がカウントされないゼロレーティングを付けた。MNOのオンライン専用プランには導入されていないデータ容量の繰り越しに対応しているのも、差別化のポイントだ。さらに、オートプレフィックス機能に対応したことを生かし、通話料も30秒11円に抑えている。

NUROモバイル ターゲット層に人気の高いコミュニケーションサービスの通信は、「NEOデータフリー」で通信量から除外される
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