MNOが回線を貸し出す際の接続料や、1回線あたりの基本料が下がり、MVNOが中容量以上の料金プランを設計しやすくなったという側面もありそうだ。かつては、MNOのサブブランドとデータ容量や通信品質をそろえると、料金がサブブランドより高くなってしまうといわれていた。具体的な数値は非開示だったが、接続料を検討する総務省の有識者会議にも、MVNO側の一部からそれを証明するデータが提示されていた。
一方で、MNOがサブブランドやオンライン専用料金プランで大幅な値下げに打って出たのを機に、総務省は接続料の見直しを要請。値下げによるトラフィックの増加などを織り込むことで、従来の見込み以上に接続料が下がっている。例えば、ドコモは2021年度の接続料を10Mbpsあたり28万3859円に設定しているが、22年度には22万1901円、23年度には18万146円まで料金を引き下げる見通しを示している。18年度には約50万円だったため、半額程度にまで下がっている。
オートプレフィックスに対応した音声接続では、基本料も大幅に下がっている。4月前後にMVNO各社が一斉に料金プランを改定したのは、そのためだ。基本使用料や接続料が下がったとき、MVNOが取れる選択肢は主に2つある。1つが、値下げをすること。もう1つは安くなった分だけ帯域を多く借り、通信品質を上げることだ。実際にはバランスを取りながら、価格を下げつつ品質を上げているが、どちらかといえば前者に重きを置いたのが低容量プラン、後者に重きを置いたのが中容量プランになる。
NUROモバイルの神山氏も、「従来はどちらかといえばお客さま還元側に安くする方向でバランスを取っていたが、今回(NEOプラン)はMNO品質を目指す形でバランスを取った。そこに対してコストをかけ、ある程度の費用をちょうだいしながら、品質を維持していくのがポリシー」と語る。対するy.u mobileは、コストが下がったことを生かし、U-NEXTをセットにして中容量プランとして仕立て上げた格好だ。いずれにせよ、基本使用料や接続料が安くなったことで、MVNO側が取れる戦略が広がったといえる。
ただ、MNO水準の料金プランがどこまで受け入れられるかは、不透明な部分もある。認知度の問題はその1つだ。オンライン専用プランながら、MNO各社はahamoやpovo2.0、LINEMOを、テレビなどのマスメディアで大々的にアピールしている。MVNOがここまで宣伝費をつぎ込むのは難しいため、口コミなどに頼っていく必要がある。少なくとも「MVNO=遅い」というイメージを払拭(ふっしょく)できなければ、選択の際に検討から外れてしまう可能性もありそうだ。
また、MNOのオンライン専用プランの場合、MNPでMVNOに移るよりもハードルが低い。y.u mobileのように、U-NEXTという分かりやすい差があればキャリアを変える動機になりそうだが、NUROモバイルのNEOプランには、それに相当する派手な売りがない。SNSのゼロレーティングやデータ容量の繰り越しだけで、MNPの壁を越えようと思わせることができるかは未知数だ。とはいえ、MVNOの料金プランに変化の兆しが出てきたのは事実。小容量だけでないMVNOの生き残り方として注目しておきたい。
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