新しいIoTデバイスの実用化のためにバッテリーの開発を加速――ソフトバンクが「次世代電池Lab.」を公開(3/4 ページ)

» 2021年11月09日 18時00分 公開
[小山安博,ITmedia]

高密度化は段階的に実施

 ソフトバンクは、高密度バッテリーを段階的に実現していく方針である。

 まず、バッテリーの負極(マイナス極)側の活物質をカーボンやシリコンからリチウム金属に切り替える。400〜500カテゴリーのバッテリーであれば、これだけで実現可能だといい、実用化も間近なようだ。

 今回の説明イベントでは、Enpower Greentechと共同で試作/実証した520Wh出力のリチウム金属(空気)電池のセルの実物が展示されていた。このバッテリーの寿命は100サイクル以上で(※1)、この条件でのバッテリーセルの実証に成功したのは世界で初めてだという。

(※1)バッテリーセルの寿命評価は現在も継続中で、第62回電池討議会で発表される予定

プレゼン ソフトバンクは、Enpower Greentechと共同で開発した世界トップレベルの高密度バッテリーセル
実物 実際に試作された高密度バッテリーセル。このセルのエネルギー密度は500W/kgとなっている
Sion Power 同じリチウム金属を使ったSion Powerのモジュール。既にここまで実現できている
充放電試験 次世代電池Lab.では、Empower Greentechと共同開発した高密度セルの充放電試験が進められている

 高密度なリチウム金属電池を実現するには、バッテリーの外部と電力をやりとりするための「集電体」の改良や変更も欠かせない。

 従来のバッテリーでは、集電体として銅箔(どうはく)が使われている。しかし、最も薄い銅箔は6μmで、薄型化は限界に近づいている。これだけ薄型化されていても、バッテリーの重量の多くを占めているという。つまり、銅箔にこだわりすぎるとバッテリーのさらなる薄型/軽量化は難しいということでもある。

 そこで開発されたのが、次世代樹脂箔である。この樹脂箔は従来の銅箔と厚みが変わらないように見えるが、手に持つと明らかに銅箔よりも軽いことが分かる。これを採用することで、エネルギー密度は約50Wh/kg改善できるという。

樹脂 実際の銅箔(下)と樹脂箔。持ってみると、体感上の重さが明らかに違う
樹脂箔 樹脂箔を採用することで、エネルギー密度を約50Wh/kg向上できるという

 バッテリーのエネルギー密度を高める際には、安全の確保も欠かせない。その取り組みの1つが全固体電池の開発である。

 現在主流のリチウムイオン電池では、可燃性の液体電解質が使われている。何らかの理由でこの電解質が外に漏れると、引火したり爆発したりすることがある。液体電解質の代わりにポリマー電解質を使う「リチウムポリマー電池」でも成分的には同様のリスクを抱えている。

 そこでソフトバンクは、高密度バッテリーの電解質として「Li10GePS12系固体電解質」を採用した。正極(プラス極)には「リチウム過剰系正極活物質」を用いることで、250mAh/g以上という高容量を実現した。

 こうした過剰系の正極材料は、既に数十年前から高容量化につながるキーアイテムとして知られていた。しかし、電解液との組み合わせで成果が出せずに埋もれていた。固定電解質の技術が進んだことで、再び脚光を浴びるようになった。

 今回の過剰系正極材料は、東京工業大学の菅野了次教授と住友化学との1年半をかけた共同研究の成果だという。

正極側の改良 リチウム過剰系正極活物質を採用した全固体電池用材料によって、正極の容量向上を図った

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月06日 更新
  1. KDDIのローミング終了で楽天モバイルはどう変わる? 心もとない700MHz帯、独り立ちのカギは5Gにあり (2026年10月03日)
  2. ドコモがほぼ全ての料金プランを値上げ それよりも端末の値上げが気になるこの頃 (2026年10月03日)
  3. ドコモがRCSで同意未取得の不備 約1万6000件に影響、対象ユーザーは利用停止に (2026年10月04日)
  4. 高市首相がAppleに要請――「自殺防止機能の搭載を」 生成AIへの相談増加を受け (2026年10月03日)
  5. ahamoがついに料金プランを改定。段階制へ――「40GB」が業界の新たなスタンダードになるのか (2026年10月04日)
  6. JALモバイルはなぜIIJに加え「ahamo」を選んだのか? JALとドコモが明かす“ホワイトレーベル”の狙い (2026年10月05日)
  7. KDDIのローミング縮小でも「やめる理由にはならない」 楽天モバイルユーザー4人が語る本音と“経済圏”の囲い込み (2026年10月05日)
  8. WAON POINTやAEON Payのキャンペーンまとめ【10月4日最新版】 ポイント10〜20倍の獲得チャンス多数 (2026年10月04日)
  9. 【ワークマン】3900円の「防水ワールドウォークバックパック」 リュックやトートバッグ、ポーチになる (2026年10月05日)
  10. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー