600〜1000カテゴリーのバッテリーを開発する際には、正極材料に有機材料を使うことが想定されている。しかし、ソフトバンクの先端技術開発本部の西山浩司氏(先端マテリアル研究室室長)によると、候補となる有機材料は10の60乗ほどの組み合わせがあるという。さすがに、全てを検証することは非現実的となる。
そこで用いたのが、慶應義塾大学との共同研究に基づく、MIを用いた性能予測だ。モデルの作成に当たって用いる文献値は50個とそれほど多くはない。しかし、線形モデルを用いることで小規模のデータでも精度の高い性能予測ができるようになったという。西山氏によると、1000カテゴリーを目指せる物質の候補が見つかったとのことだ。
ただし。これはあくまでも“机上の計算”である。そのことは西山氏も認めているが、予測をすることで有望な材料を見つけるスピードが向上すると期待を込めているようだ。
先述の通り、バッテリーの高密度化には安全の確保が欠かせない。開発過程では、その安全性を高めるべく精密な試験が求められる。
今回、次世代電池Lab.がエスペックのバッテリー安全認証センター内に設けられたのは、同社が持つ試験や認証のための設備やノウハウを生かすことで、安全性の高い高密度バッテリーを開発するためだ。さまざまな電池メーカーが開発した電池セルを検証し、その結果を各社にフィードバックすることで電池開発のスピードアップを図る。
バッテリーセルの試験は、既にEnpower Greentechの他、Amprius TechnologiesやSion Powerとも共同で進めている。ソフトバンクから各社に対して材料の提案をするなど、連携して次世代電池開発につなげていきたい考え。西山氏は「(ソフトバンクは)セルメーカーになるつもりはない。我々が望む電池が安く出てくればいい。色んなメーカーにフィードバックするような拠点にしたい」と話す。
ソフトバンクでは、今後も次世代電池Lab.の機能を拡張し、エスペックと連携しながらバッテリーパックやバッテリーモジュールの評価を進めていきたいという。
将来の事業拡大を見据えて、ソフトバンクでは今後も電池開発を強化していく考えだ。
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