新型コロナワクチン接種証明書アプリ、AndroidスマホとiPhoneで変わる「ローマ字氏名」ふぉーんなハナシ

» 2021年12月21日 14時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 既報の通り、デジタル庁と厚生労働省は12月20日から「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」の運用を開始しました。

 このアプリにはAndroid版iPhone(iOS)版があるのですが、Android版とiOS版で“ある部分”の情報(表記)が異なることが分かりました。

【追記:12月22日15時】iOS版アプリにおける今後の対応について追記しました
【追記:12月22日19時15分】iOS版アプリの更新について追記しました

何か違う iOS版(左)とAndroid版(右)でアプリのユーザーインタフェース(UI)はほぼ共通しているのですが、それ以外の“何か”が違います……

アプリのセットアップは超簡単

 12月20日の記事でも記した通り、必要なモノさえしっかりとそろえれば、このアプリのセットアップは簡単です。サーバの混雑さえなければ、1〜2分程度で完了します。

 少し細かいことを指摘するなら、Android版はマイナンバーカードの読み取りの例示画像を見直した方が良いと思いました。iPhoneを前提とした例示画像になっているため、この通りにやろうとすると永遠に読み取れない人が出るんじゃないかと……。「モバイル非接触IC通信マーク」や「N-Mark」のロゴを使って、「これらのマークがある付近にマイナンバーカードを密着させてください。マークが見当たらない機種は、取扱説明書などで密着させる位置を確認してください」という説明にした方が親切かもしれません。

簡単セットアップ 12月20日の記事で使った画像を再掲しますが、セットアップのガイダンスは分かりやすいです
説明変えるべきじゃない? Androidスマートフォンの場合、NFCの読み書き位置が端末上部とは限りません。説明を変えるべきだと思うのは自分だけでしょうか……?

海外用証明書の「ローマ字氏名」が何かおかしい?

 ご時世もご時世なので、現時点において私が海外に渡航する予定はありません。ただ、「せっかく更新した新デザインの旅券(パスポート)を生かそう」と思い、海外用のワクチン接種証明書も合わせて発行することにしました。

 海外用証明書を発行する場合、旅券の3ページにある本人情報をカメラで撮影する必要があります。Android版とiOS版で若干見た目は異なりますが、映像をスキャンするという観点ではどちらも同等です。

Android版iOS版 Android版(左)とiOS版(右)の旅券読み取り画面。どちらも旅券の3ページを枠内に収めれば良いのですが、Android版は枠以外の映像がカットされるのに対し、iOS版は枠の外側まで写ります。好みの問題ですが、個人的にはAndroid版の方がいいと思います

 証明書の発行は、まずAndroid版、続けてiOS版で行ったのですが、Android版とiOS版で証明書におけるローマ字氏名の「姓(Surname)」と「名(Given name)」の表記が逆になっていることに気が付きました。具体的には以下の通りになっています。

  • Android版:INOUE SHO(姓→名の順)
  • iOS版:SHO INOUE(名→姓の順)

 「アプリの表示上の違いなのかな?」と思い、証明書本文やQRコードのデータを解析してみた所、データそのものもAndroid版とiOS版で“逆”になっていることも判明しました。

海外版 海外用証明書の概要表示。Android版とiOS版で氏名の順序が逆になっていることが分かります
海外版 海外用証明書の詳細表示。やはりAndroid版とiOS版で氏名の順序が逆になっています。なお、ICAO VDS-NC規格の証明書のQRコードには平文で氏名情報も含まれているのですが、その順序も逆になっていることが確認できました

旅券表記上はAndroid版が「正しい」

 このように、現時点ではAndroid版アプリを使う人とiOS版アプリを使う人でローマ字氏名の情報が異なる状況です。

 最近は「名前は国籍国における順序に従って表記しよう」という動きが見られます。日本でも、政府が「姓→名」の順序で表記する運動を推進しています。先般行われた東京オリンピックでは、日本代表の選手の氏名が中国、台湾(中華台北)や韓国の代表選手と同様に「姓→名」の順で表記されるようになりました。

 一方で、ローマ字(アルファベットなど)が広く使われている欧米では、氏名を「名→姓」の順で表記する国や地域がほとんどです。「国際的に分かりやすい表記にしよう」という観点から「ローマ字表記では『名→姓』に統一すべき」という意見も少なからずあります。

 今回の件に話を戻すと、旅券における氏名表記は「姓→名」の順番となっています。つまり旅券表記的にはAndroid版が「正しく」、iOS版が「誤り」ということになります。ただ、先述の通り、欧米で広く使われている方に合わせるという観点ではiOS版が「正しく」、Android版が「誤り」ということになります。

旅券のサンプル 旅券における氏名は「Surname(姓)→Given name(名)」の順に記載される。そのルールに従う場合はAndroid版の方が正しいということになる

 ともあれ、使うプラットフォームによって氏名の表記が異なってしまうのは、実際に証明書を使う際に不安要素になり得ます。どちらの表記でも有効なものとして扱えるのなら良いのですが、どうなのでしょうか……?

iOS版はアプリを更新予定 更新後に海外用証明書の再ダウンロードを

 本件についてデジタル庁に問い合わせた所、12月22日付で回答を得られました。体裁整えた上で、やりとりを記します。


筆者 海外用証明書をAndroid版アプリとiOS版アプリでダウンロードした所、ローマ字氏名の「姓」と「名」が逆になってしまいました。この事象について把握しておりますでしょうか。

デジタル庁 把握しています。ただ今、iOS版アプリの修正を準備しています

筆者 iOS版アプリで取得した証明書は海外でも問題なく使えるのでしょうか。

デジタル庁 直ちに「無効」というわけではありません。ただ、国や地域によっては旅券上の表記と“逆”になっていることで疑義を生じさせてしまう可能性は否定できません

筆者 そうなると、iOS版アプリを使っているユーザーは、アプリの更新後に証明書を再発行した方が良いということになるのでしょうか。

デジタル庁 iOS版アプリで海外用証明書をダウンロードした方には、アプリの更新後に証明書の再ダウンロードを案内させていただく予定です。


 iOS版アプリで既にダウンロードした海外用接種証明書は、直ちに無効というわけではありません。ただし、やりとりの中でデジタル庁の担当者が言及している通り、旅券の表記順と異なることでトラブルが生じる可能性がありますアプリが更新されたら、速やかに証明書の再発行(再ダウンロード)を行うことを推奨します。

 再ダウンロードをする際には、事前に古い海外用接種証明書を削除しておくことをお勧めします。証明書の削除は、証明書の詳細画面の右上にあるゴミ箱ボタンをタップすれば行えます。

 国内用を含め、接種証明書は自動で更新されません。証明書の内容に訂正あるいは追記がある場合は、都度「古い証明書の削除→新しい証明書の発行(ダウンロード)」を行う必要があります。

iOS版アプリに修正

 デジタル庁と厚生労働省は12月22日、今回の問題を修正するアプリの新バージョンを公開しました。詳しくは別記事で確認してください。

再発行 古い接種証明書は、証明書の詳細画面の右上にあるゴミ箱ボタンをタップすれば削除可能です(画像はAndroid版ですが、iOS版も同様です)

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