世界を変える5G

MVNOが5Gサービスを提供しても高速とは限らないワケMVNOの深イイ話(1/2 ページ)

» 2022年02月14日 17時04分 公開
[堂前清隆ITmedia]

 2021年はSIMフリー(オープンマーケット)のスマートフォンでも続々と5G対応端末が登場し、MVNOが提供する「格安スマホ(格安SIM)」で5Gを利用することも現実的になってきました。しかし、MVNOによっては通信サービスの5G対応を先送りにし、5G対応を積極的には訴求していないところもあります。MVNOと5Gの関係はどうなっているのでしょうか。

MVNOの5Gは速度が出ない?

 筆者が関わっているMVNOサービス「IIJmio モバイル」では、2021年4月に5Gに対応した通信サービスを開始しました。これは携帯電話の基地局を設置するキャリア、NTTドコモ、KDDI(au)の設備が5Gに対応しており、MVNOはその設備を利用することで5Gのサービスを利用者に提供しているものです。IIJmioでは利用していませんが、ソフトバンクも5G対応の通信サービスをMVNOに提供しており、例えばオプテージのMVNOサービス「mineo」ではソフトバンク設備を使った5Gサービスを提供しています。

 3G、4Gと同じように、5GでもMVNOのサービスは設備の提供を受けるキャリアの仕様や制限を受けることになります。例えば、通信に利用できるバンド(周波数)はそれぞれのキャリアと同じで、キャリアがミリ波に対応していればMVNOでもミリ波に対応します。一方、ドコモ網を使う「SMS対応SIM」で5Gが利用できないことや、5Gを有効にしたSIMで3Gが使えないことは、キャリア設備の仕様に由来しています。

IIJmio モバイルで提供しているeSIMはIIJのフルMVNO設備を利用しています。IIJのフルMVNO設備が5Gに対応できていないため、IIJmioのeSIMでは5Gが利用できません。


 ですが、キャリアが5Gの特徴として「高速」を強く打ち出している一方で、MVNOによっては5Gサービスで高速性の訴求をあまり行っていないケースもあります。例えば、IIJmioでは「5Gに切り替えることで通信速度が改善されるものではない」という説明をしています。

MVNOが5Gの高速性を生かしたサービスを提供するには?

 この説明の背景をもう少し詳しく見てみましょう。

 MVNOの通信サービスにおいて通信速度を決める要素はいろいろありますが、今、回の議論の中で注目したいのは、4G・5Gの基地局の通信容量と、キャリアとMVNOをつなぐ相互接続の容量です。

MVNO MVNOの通信速度に影響を与える要素

 ご存じの通り、5Gは4Gと比べて幅の広い電波が利用できること、また、通信規格自体も高速に対応した改良が加えられているため、仕様上の通信速度は5Gの方が速くなりますし、電波の状況さえ良ければ実際にかなり高速な通信ができます。また、5Gは4Gに比べて到達距離が短い電波を使っているため、1つの基地局を同時に利用する人数も少なくなります。もともと高速の基地局を少ない人数で利用するというのが「5Gが高速」という主張の裏付けです。

 一方、現在広く利用されている5G NSA(ノンスタンドアロン)では、基地局自体は前述の通り高速になっているものの、携帯電話網全体を管理するコアネットワークは4Gのままとなっています。このため、キャリアとMVNOを相互接続するインタフェース(POI)は4Gのまま、端末が4Gで通信しようが5Gで通信しようが、区別されずに同じPOIを通ることになります。

MVNO POIが混雑する時間帯は、4Gと5Gで速度は変わらない

 ここで問題になるのが、POIの容量不足と混雑です。3G、4Gの時代からよく「MVNOが遅い」と言われる原因は、POIの容量がMVNO利用者の通信需要に追い付いていないことです。回線の容量を超える通信需要があった場合、容量を超えた分の通信が破棄されてしまい、利用者視点では「通信速度が極端に遅い」という体感になります。もちろん、通信需要をまかなえるほどの容量が確保できれば良いのですが、現在の「格安SIM」の価格帯では、通信需要のピークに対応した容量を確保するのが難しいのが実態です。

 そのため、いくら端末が5Gで通信できたとしても、POIの容量が不足している状況では結局POIでの速度低下に巻き込まれてしまい、4Gと変わらない通信速度しか出せないということになります。

 ただ、POIの容量不足は24時間常に発生しているわけではありません。「格安SIM」のメインターゲットである個人利用のスマートフォンは平日の昼休みに極端に通信需要が増える傾向があります。そのため、多くのMVNOでは昼休みはPOIの容量不足に陥っているものの、その他の時間帯ではPOIに余裕があると思われます。IIJmioでも昼休みを含めた一部の時間帯以外ではPOIに余裕があり、そういう時間帯に5Gで通信すると「5Gらしい」速度を体感することができます。

 つまり、POIの容量さえ確保できていれば、MVNOでも5Gの高速性を生かしたサービスを作ることは不可能ではありません。ですので、これまでの4Gの契約とは別に、5G契約専用にPOIを設けそこに潤沢な容量を確保すれば「5Gらしい」速度のサービスは作れるでしょう。ただ、そのためには従来の4Gと比べて相当高額な価格設定が必要になると思われます。また、その高速性はあくまでPOIの容量の拡張によって実現したものであり、通信が4Gだったとしても速度は速くなります。それを「5Gだから高速」という名目で提供するのはいささか筋が通らないようにも思われます。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 庵野秀明、GACKT、ひろゆき、ドワンゴ川上らが集結 “カメラのいらないテレビ電話”をうたう新サービス「POPOPO」18日に発表へ (2026年03月11日)
  3. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  4. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  5. どこでもウユニ塩湖? 3COINSで550円の「スマホ用反射ミラークリップ」を試す (2026年03月12日)
  6. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  7. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  8. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  9. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  10. 「Galaxy S26」シリーズはどこが安い? 一括価格と2年間の実質負担額を比較、お得なキャリアはココだ (2026年03月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年