ITmedia Mobile 20周年特集

5G時代にMVNOはどんな進化を遂げるのか カギを握る「非スマホ領域」と「VMNO」ITmedia Mobile 20周年特別企画(1/3 ページ)

» 2021年07月29日 06時00分 公開
[堂前清隆ITmedia]

 ここまでの稿ではMVNOのこれまでの20年間を振り返ってきました。この稿では未来に向けて、これからのMVNOの発展に目を向けたいと思います。

 筆者が所属するIIJ(IIJmio)は3月にトークイベント IIJmio meeting 29を開催しました。そのイベント内で有識者をお招きしてパネルティスカッションを開催いたしましたが、そこで今後のMVNOが進むべき道として「多様性」というキーワードが提示されました。モバイル業界における「多様性」についてもさまざまな解釈が考えられますが、今回は筆者の考える多様性と、そこに至るために必要な道のりについて考察します。

5Gで通信サービスはどう変わるのか

 これからのMVNOについて考える前に、MVNOを含めた携帯電話業界全体に与える技術、その中でも5Gについて考えたいと思います。

 携帯電話の技術は継続的に開発が進められていますが、その中でもおおむね十年ごとに大きな世代交代が起きています。これを世代(Generation)の頭文字をとって、1G(1980年台)から5G(2020年台)と呼びます。この1Gから5Gまでの世代交代の中でも、大きな転換点が2つありました。1つはアナログからデジタルへの変化があった、1Gから2Gの移行です。2Gの時代に開発された通信規格GSMは日本以外のほとんどの地域で利用され、その後の3G、4Gに続く技術の礎となりました。

MVNO 携帯電話で使われる通信規格の変遷

 そして次の大きな転換点は、4Gから5Gへの移行です。1Gから4Gまでの通信規格は、基本的に携帯電話とそれから派生したスマートフォンなどに通信機能を提供することを想定していました。

MVNO 携帯電話以外にも、さまざまな無線機器が活用されている

 ですが、私たちの身の回りで利用されている無線通信は、携帯電話だけではありません。自宅のコードレスホン、PCで使うWi-Fi、居酒屋の店員のインカム、警察無線、無線センサーなどなど、無線通信を使う機器はさまざまな用途のものがあります。これらの無線通信機器は、通信距離や通信内容、消費電力など、それぞれの用途の要求に合わせ別個に開発された異なる無線システムを利用してきました。

 4Gまでの携帯電話システムは、こうした他の無線システムがカバーしていた無線通信の需要はターゲットにしていませんでしたが、5Gではこれらの需要を5Gの無線システムの中に取り込むことを想定して企画が開発されています。つまり、5Gは「携帯電話網」を越えた規格を目指しているのです。

 4Gの開発の後期においても、LTE-MやNB-IoTなど携帯電話以外の機器、特に通信速度が遅くても構わないので消費電力を減らしたいIoT機器向けの規格が追加されています。しかしこれは、あくまでIoTという特定ターゲットに合わせた機能を携帯電話網に追加で組み込んだものです。機能の追加に際しては、全国の携帯電話基地局設備に個別に対応を行う必要がありました。また、あくまで特定の通信需要を満たすための機能を追加したものであり、その他の需要を満たすためにはさらなる個別対応が必要になるものでした。

MVNO 5Gが満たすべき機能

 これに対して5Gでは、5Gの規格内に定められた範囲で、任意の特徴を持った無線機能を個別対応することなく追加・変更することができるようになっています。

 例えば、5Gの特徴として高速(eMBB)、低遅延(URLCC)、高密度(mMTC)や、通信に必要な電力の削減などが取り上げられますが、これらの特徴は全て同時に実現できるわけでなく、通信の目的によって優先する機能を選択することになります。5Gではこういった要求ごとに異なる機能の集合を「スライス」という概念で表します。

 5Gの無線網では目的に応じた異なる性格のスライスが多数提供され、無線網に接続する通信端末は、自分の要求に応じたスライスを選択して利用することになります。こうしたに仕組みによって、5Gは1つの無線網でありながら、異なる特徴を持った別個の無線システムであるかのように振る舞うことができるのです。

 この「ネットワークスライシング」は、多様な無線通信の需要を5Gの中に取り込むためのキーになるコンセプトです。

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