どちらかといえば一人暮らしで固定回線を引く手間ややコストを敬遠するユーザーを狙うキャリアのFWAサービスに対し、NURO Wireless 5Gは、これまでのNURO光を5Gに置き換えたものだ。ターゲットにしているのは、マンション内の設備が古く、構内に光ファイバーを敷設できないユーザーだ。メタル回線を使うVDSLの場合、構内の速度は最大で200Mbpsに制限される。利用者が多いと、スループットはさらに下がる。
筆者の自宅もそうだが、古いマンションの中には、構内に光ファイバーを引けないケースがある。張り替えは可能でも、管理組合の許可が下りないなど、住宅環境による差は大きい。マンションで一括してインターネットサービスに加入しており、十分な速度が出ないという話も耳にする。コロナ禍でリモートワークやNetflixなどの動画を楽しむユーザーが増え、この問題がにわかに注目を集めた。
ソニーワイヤレスコミュニケーションズの永井氏も、「NURO光は集合住宅からのお申し込みも多数いただいている一方で、光ファイバーを配線できない建物が数多く存在する」と語る。無線としては免許が不要なWi-Fiもあるが、ローカル5Gは「免許制であることから、Wi-Fiと比べて混信(干渉)が発生しづらく、安定性が高い」(同)。光ファイバーだけでカバーしきれなかった集合住宅にサービスを提供するのが、NURO Wireless 5Gの目的といえる。
ただし、設置にはそれなりの時間がかかる。ローカル5Gは原則として自身の土地を利用する制度で、マンションなどをカバーする際には許可が必要だからだ。そのため、「基本的にはエントリーをしていただき、その件数も加味して基地局設置の順番は検討する」(同)。ソニーワイヤレスコミュニケーションズ側からも営業はかけるが、「所有者の方との話し合いから始まるため、時間は数カ月から半年ぐらいがめどになる」(同)という。
エリア化の仕方も、建物の構造や土地の使い方で大きく変わりそうだ。永井氏は「さまざまなケースがある」としながら、「敷地内にポールを建てたり、場合によっては壁面に設置したり、電柱に設置するのも選択肢の1つ」と語る。キャリアの5Gより各戸に合わせたチューニングがしやすいとはいえ、n79は直進性が高い周波数帯のため、間取りによっては電波が入りづらくなることもありそうだ。こうした点は、サービス開始後に解決していく課題といえる。
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