20GB+専用帯域で勝負 NUROモバイルはなぜ“格安”じゃないプランを導入するのかMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2021年12月20日 16時01分 公開
[石野純也ITmedia]

 3カ月に1回データ容量が付与される「Gigaプラス」を特徴とした「バリュープラス」や、20GBの中容量帯で大手キャリアのオンライン専用プランに挑む「NEOプラン」など、ソニーネットワークコミュニケーションズのNUROモバイルが矢継ぎ早に新料金、新サービスを打ち出している。

 11月に開始したNEOプランは、導入直後からサービス内容を改定。TwitterやInstagram、LINEのデータ容量をカウントしない「NEOデータフリー」にLINEの音声通話、ビデオ通話が加わった。12月からはNEOプランもGigaプラスでデータ容量が追加でもらえるようになるなど、さまざまな改良が加えられている。

NUROモバイル 「NEOプラン」の概要。月額2699円(税込み)で20GBという価格は大手キャリアのオンライン専用プランと大差ないが、専用帯域を設けることで通信品質を重視した

 一方の低容量を軸にしたバリュープラスも、8GBプランを10GBに増量するなど、攻めの姿勢を打ち出している。これまでのMVNOは低容量、低価格が強く、「格安SIM」「格安スマホ」として人気を博していたが、NUROモバイルは、それだけにとどまらないサービスの広げ方をしているといえそうだ。NEOプランは月額2699円(税込み、以下同)として専用帯域を用意するなど、品質を重視している点もMVNOの中では異色だ。

 NUROモバイルはなぜ“格安”以外のサービスを強化しているのか。ソニーネットワークコミュニケーションズでNUROモバイルを率いるMVNO事業室室長の神山明己氏と、サービス設計課 課長の亀井健男氏、同セールス&マーケティング課 課長の田中直樹氏の3人にお話をうかがった。

20GBプランの契約者が3.1倍に急増

―― 最初に、11月に導入したNEOプランについてうかがっていきます。20GBプランということで、バリュープラスとは別建てですが、なぜこのようなプランを導入したのでしょうか。

神山氏 NEOプランに関してですが、(導入したのは)MNOのオンライン専用プランが20GB帯として登場したことで、マーケットが大きく変化したからです。民間調査会社の調査を直近6カ月間分見ていくと、10GBから20GB、中でも主に20GBプランの契約者が3.1倍に急増しています。20GBを中心に中容量帯のニーズが一気に高まっていることが把握できました。

 あわせて、バリュープラスのお客さまを見ていくと、40代、50代が過半数を占めていました。20GBを選択されている方は、20代から30代のデジタルネイティブ層で、小容量のバリュープラスではこのセグメントに対応できていないことが分かりました。そこで、改めてお客さまニーズに合ったプランとして、20GB帯の新プランを企画しました。

NUROモバイル 神山明己氏

―― データ容量は確かにMNOのオンライン専用プランと並んでいますが、一方で価格も近くなってしまいました。この点はどうお考えでしょうか。

神山氏 従来のバリュープラスは、できるだけ料金をお客さまに還元しようということで業界最安値クラスを目指しています。結果、全ての容量帯で「安い」ということをご評価いただけています。方やNEOプランはMNOとほとんど変わらない価格帯であることは事実です。これは、NEOプランの特徴として、高い品質を提供したいという狙いがあるからです。通信品質を担保するため、お客さまに価格で還元していたところを品質にフォーカスして還元するという形で設定させていただきました。

NUROモバイル NEOプランでは、MNOと同等レベルの通信品質を目指した

昼間に遅くなるという事態にはなっていない

―― そのためにNEOプラン専用の帯域を設定したというお話でしたが、効果のほどはいかがですか。

亀井氏 定量的な効果はまだ出せていませんが、MNOとそん色ない形で快適にご利用いただけています。11月に開始したばかりで、まだ統計は多く取れていませんが、SNSなどではユーザーから昼でも快適に使えるという声は届いています。少なくとも一般的な格安SIMのように、昼間に遅くなるということにはなっていません。

NUROモバイル 亀井健男氏

神山氏 従来言われていた通り、MVNOとMNOの相互接続点が細いがために遅くなってしまうボトルネックがあります。ここの品質をある程度担保するために設けたのが専用帯域です。ただし、昼間はドコモ、au、ソフトバンクなどの無線部分も当然混み合うので、そこはMNOと同じように速度は落ちます。一方で相互接続の帯域は潤沢にご用意させていただき、そこがボトルネックにならないようにしました。

―― ただ、MNOと同品質を目指すとMVNOにとって費用対効果が非常に悪いという試算もあったと思います。こういった状況は接続料の値下げで解消されつつあるという理解でよろしいでしょうか。

神山氏 われわれはバリュープラスでお客さま還元していますが、NEOプランでも同じように低コストでオペレーションしながら品質面にコストをかけています。中長期的に見て、卸価格が下がっていくことを見据えた設計をして、これであればいけると判断しています。また、ソニーのAIを使った帯域の自動割り当てもしているので、そこも有効に使えると考えています。

―― 金額は並びましたが、NEOデータフリーのようなサービスはNUROモバイルならではです。これはなぜ導入したのでしょうか。

神山氏 メインターゲットが20代、30代で、その方々が普段のコミュニケーションで使われているSNSの通信をフリーにしようと企画しました。LINE、Twitter、Instagramはカウントフリーです。発表時はLINEの音声通話やビデオ通話が「今後対応予定」になっていましたが、すぐに対応できました。内部事情で大変申し訳ないのですが、実は検証が(サービス開始に)間に合いませんでした。とはいえ、そこの部分は大きなアドバンテージになるので、すぐに対応しました。

―― この中にFacebookが入っていないのは、“オジサン向けSNS”だからということでしょうか(笑)。

神山氏 (笑)。まず3サービスで開始しました。もちろん、Facebookやその他動画、音楽サービスにもカウントフリーのニーズはあり、実際にそういったお声もいただいています。どういう形でNEOデータフリーを拡張できるかは、日々検証しています。ただし、当然ゼロレーティングをやると、それだけ帯域を圧迫します。高品質なプランを提供するにあたっては、やはり品質とのバランスを見ながら検討していく形になります。

NUROモバイル LINE、Twitter、Instagramのデータ通信量を消費しない「NEOデータフリー」
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