ソニーグループのソニーワイヤレスコミュニケーションズは、4月1日にローカル5Gを活用した「NURO Wireless 5G」を開始する。マンションなどの集合住宅を個別に5Gでカバーしていき、光ファイバーやメタル回線などの構内に引く固定回線の代わりにするというのが同サービスの特徴だ。
5GとWi-Fiのアグリゲーションを行うことで、下り最大4.1Gbps、上り最大2.6Gbpsの速度を実現する。最大10Gbpsでサービスを提供している光回線のNUROと比べると速度は落ちるが、無線を活用することで、配線工事などが不要になるのがメリットだ。4月時点のサービスエリアは、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府の一部地域。他にも、北海道、千葉県、愛知県、静岡県、岐阜県、三重県、京都府、兵庫県、奈良家、福岡県、佐賀県の一部地域で提供が可能になるという。
ローカル5Gは、主に法人や大学などの研究機関が、自社の工場やキャンパス内などのネットワークを構築するために使われているが、コンシューマー向けサービスとして展開されるのは異例。ソニーグループのサービスなだけに、端末やサービスなどとの連携にも期待が高まる。その可能性を読み解いていきたい。
ローカル5Gを活用したコンシューマー向けサービスのNURO Wireless 5Gが、4月1日にスタートする。同サービスは、いわゆるFWA(Fixed Wireless Access)に分類される、固定回線の代替としてモバイル回線を利用するもの。ドコモの「home 5G」やソフトバンクの「SoftBank Air」と同様、家庭内にルーターを設置するだけでよく、配線が不要になる。
キャリアのサービスとの違いは、パブリックに提供される4Gや5Gではなく、狭い範囲をカバーするローカル5Gを利用するところにある。全国にくまなく基地局を設置し、幅広いユーザーに提供するのではなく、ソニーワイヤレスコミュニケーションズがマンションなどの特定の場所だけをエリア化する。サービス対象を広く取ったキャリアの5Gに比べるとエリアは非常に限定的な一方、提供範囲が絞られているため、サービスの設計がしやすいのはメリットといえる。
例えば、キャリアの場合、その住居に住まないユーザーも接続できてしまうため、時間によって速度が上下する可能性がある。マンション用に特化していないこともあり、宅内まで高い周波数の5Gが届きづらいのも、パブリックなサービスゆえの課題だ。これに対して、ローカル5Gはごく一部のユーザーしか使えないが、その分エリアの設計がしやすく、スループットも確保しやすい。
固定回線と同様、データ通信に容量制限はなく、料金は月額4950円(税込み、以下同)。ここには、ソニーワイヤレスコミュニケーションズ製のルーターをレンタルする代金も含まれる。加入時の手数料として3300円かかるが、2年縛りのようなものはなく、解約金は発生しない。自宅のマンションがエリア化されていればという前提条件はつくが、入りやすく、止めやすい自由度があり、生活環境の変化にも柔軟に対応できそうだ。
サービス開始時点で使用するのは、ローカル5G用に割り当てられたSub-6の4.8〜4.9GHz帯のBnad n79。帯域幅は100MHz幅だという。基地局からは5GだけでなくIEEE 802.11axのWi-Fiも吹き、2つの電波を束ねることで通信速度は下り最大4.1Gbps、上り最大2.6Gbpsに向上させた。現時点では非対応だが、ソニーワイヤレスコミュニケーションズの執行役員 永井直紀氏によると、「ミリ波でのサービスも検討している」という。
ローカル5Gや工場内や大学のキャンパス内など、主に法人向けを想定していた制度だが、NURO Wireless 5Gは、コンシューマー向けのサービス。光ファイバーやVDSLの置き換えに5Gを使うのは、異例といえる。パブリックな5Gより提供エリアは限定されるが、自社内で完結していないという点では、一般的なローカル5Gよりはキャリアのサービスに性質が近い。
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