総務省が「スマホ乗換え相談所モデル事業」の実証実験を実施した狙いは、主に以下となる。理想的だが、非常に難しい内容だ。
問題は前述の点を含め主に3つ。スマホの安いプランは売上高が月額2980円や980円など廉価で、相談単体では人件費に見合った相談料や契約報酬を期待できない。複数社の最新のサービスやプランを理解した上で、有償の価値がある相談が可能な人材の確保も難しい。そして、利用者が携帯電話会社やプラン選びで重視する内容は必ずしも金額だけではなく、通信品質やエリア、対面サポート、独自機種、関連サービスやポイント経済圏などさまざまなニーズがあり分析が必要だ。
これらは、初回の有識者のワーキンググループや実施事業者の資料でも指摘されつつも、総務省内の議論もあり料金プランの提案を中心としたパターンが実施された。結果としては、今のところ乗り換えの相談所単体では事業化や認定資格制度は難しいであろう内容となっている。
また、総務省では並行して「デジタル活用支援推進事業」を実施しており、携帯電話会社のショップやショップのない地域にて、高齢者1000万人を目標としたスマホ教室を実施。携帯電話会社のショップの教室ではプラン選択の説明が含まれる場合もあり、こちらで吸収できるのではという指摘もある。
ただ、国が主体となって、市中の利用者の相談内容から得た利用サービスの傾向やアンケート結果というデータはあまりなかったものだ。ここからはこのデータから、今後のMNOとMVNOの関係性や、乗り換えの何がハードルなのかを考察していこう。
まず、相談所モデルに冠する総務省の最初の説明資料を2枚見ていこう。どれだけの人が乗り換えを考えているのかと、乗り換えない理由のWebアンケートだ。
乗り換えを考えている人の割合だが、「乗り換えを積極的に検討している」に「乗り換えを多少検討している」人を加えて約23%にとどまる。「乗り換えを検討していないが、内容次第では前向きに検討してみたい」層は、ahamoなど新料金プランを知れば乗り換えるかもしれない層といえる。
乗り換えをしない理由は、「より魅力的なサービスがないため」「手続きが面倒くさいため」「家族で同じ事業者を使っているため」の3点が大きい。
残念ながら、相談所モデル事業のツール作成に重要であろうこれらの要素については、あまり詳しく精査されずモデル事業が始まっている。そこで、もう少し具体的な調査となっている公正取引委員会の「携帯電話市場における競争政策上の課題について(令和3年度調査)」のアンケートも見てみよう。
このアンケートでは「乗り換えの手続きがややこしくて面倒だから」に次いで、通信品質の満足度、現在使用している携帯電話端末が使い慣れているから、キャリアショップ・アフターサポートがあるからといった理由が続く。乗り換えによる失敗リスクを懸念する回答も多い。また、同じアンケートでは、MNO契約者の66.7%が10年以上の長期契約という結果もある。
全体としては「どちらでもない」が多数と、乗り換えへの興味のなさがうかがえる。携帯電話会社を乗り換えるとなると、乗り換え先の調査や契約にかかる時間がかかる上に、乗り換え後の通信品質や使い勝手などのリスクや、乗り換え手続きや機種の移行の手間も考えると面倒なのは確かだ。
MNOとMVNOの違いやエリアを理解した上での通信事業者のこだわりは、ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルのMNOとそのサブブランドの支持が64.2%以上と大きい。一方、MVNOを含めて選びたい人は31.4%にとどまる。
特に、往来が多く回答数も多い商店街(491人)、イオンモバイル イオンモール船橋(197人)の相談者はMNOとサブブランドまでという回答が多い。一方、修理・サポート店のドクター・ホームネット埼玉大宮店(46人)とスマホスピタル堺東(85人)は、MNOのメインブランドか、MVNOを含む全携帯電話サービスかに2極化している。修理・サポート店の利用者の属性に偏りがあるのか、興味深い結果だ。
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