ワンプランで端末代1円 常識破りのMVNOサービス「一択モバイル」が誕生したワケMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2022年05月24日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 携帯電話の料金プランは、現状、複数の選択肢が用意されているのが一般的だ。MVNOも例外ではなく、データ容量ごとに料金が変わってくる。端末の選択肢も豊富にあり、料金プランとの組み合わせは多彩にある。そんな常識を覆すのが、TOKAIコミュニケーションズの提供する「一択モバイル」というサービスだ。その名の通り、選べる端末はモトローラの「moto e7」だけ。料金プランも3GBプランだけだ。端末は1円(税込み、以下同)、月額料金も980円とシンプルさを極めている。

一択モバイル
一択モバイル 月額980円で3GB、端末代は1円というシンプルなプラン設計が特徴の「一択モバイル」

 TOKAIコミュニケーションズは、静岡に拠点を構えるMVNOで、LIBMOというサービスを運営している。一択モバイルも、LIBMOの中のいちサービス。LIBMO自体には3GB、8GB、20GB、30GBの選択肢があり、端末のバラエティーも豊かだ。一択モバイルは、そんなLIBMOが分かりやすさを訴求するために始めた企画。サブブランドのような形ではなく、期間限定で提供するサービスだという。

 では、なぜTOKAIコミュニケーションズは一択モバイルを始めたのか。2月に新料金プランを導入した事情と合わせて、同社の戦略を聞いた。インタビューには、TOKAIコミュニケーションズ コンシューマ事業本部 移動体通信事業部 副事業部長の牧野弘宜氏と、コンシューマ事業本部 事業戦略室 室長の森藤豪氏が答えた。

費用をかけずにバズらせられないかを考えた

―― 突如発表された一択モバイルですが、このサービスを始めた理由や背景を教えてください。

森藤氏 もともとLIBMOは20GB、30GB帯をメインで売ってきましたが、2月に新料金プランという形で500MBや3GB、8GBの容量帯を出しました。音声のかけ放題は5分、10分、完全かけ放題とプランを豊富にして、セット割も目玉にしています。LIBMOが新しいプランをリリースし、そこに対して広告などを出してきました。静岡ではテレビCMを流し、Web広告は全国でやっています。ただ、広告は費用に限界もあります。費用をかけずに、バズらせることができないかと考えたのがきっかけです。

 バズらせると言っても、簡単にはいかないことは分かっていました。ユーザーそれぞれで選ぶものも異なります。10円、20円の価格差は関係ないという人もいれば、そもそも商品上の差がよく分からないという人もいます。全方位的に広告を訴求するより、ターゲットを絞る必要がありました。そこに刺さって選ばれることを考えなければいけない。大手と同じ戦い方をするのではなく、ターゲットを絞ってニッチに刺さる施策が必要というのが大前提でした。

 その中で、最終的に一択モバイルができました。ターゲットは、何を買っていいのかが分からない、SIMを契約するのが面倒という人で、そういうユーザーは少なくない。一般のユーザーから見たときに、安くて安心で、日本一分かりやすい格安SIMがあれば選択されるのではないか――そんな仮説を立てました。その結果が、大手と同じではなく、ターゲットを絞って選択肢を1つにした一択モバイルです。

一択モバイル TOKAIコミュニケーションズ コンシューマ事業本部 事業戦略室 室長の森藤豪氏

―― なるほど。新ブランドではなく、LIBMOの新プランを訴求するマーケティング的な企画だったということですね。ブランドとしてワンプランをうたっているところではahamoがありますが、あちらは20GBです。一択モバイルを3GBに設定した理由を教えてください。

森藤氏 一択モバイルを作る際に、どこが刺さりやすいかを考えました。ITmedia Mobileの記事にもなっていますが、全ユーザーの中で3GB以下の方は6割弱います。逆に、LIBMO全体の中で訴求を強くしていた20GBのユーザーは10%もいません。3GBであれば、大きな枠で6割ぐらいをカバーできます。そこで、3GBで980円、1円端末を加えても981円でスマホデビューができるようにすることを考えました。学生や年配の方、ガラケー(フィーチャーフォン)ユーザーの方が少ない初期投資でスマホデビューできるからです。

一択モバイルは端末がなくなり次第終了する予定

―― 単なる3GBプランではなく、1円で端末が入手できるのも一択モバイルの面白いところだと思いました。

森藤氏 1円端末はLIBMOでもやっていますが、今回は1円端末をシステム的に(一択モバイル用に)確保して、一択モバイルという企画に乗せた形になります。子どもにスマホを持たせたいとなっても、iPhoneだと何万円にもなってしまいますからね。今回のターゲットは、そういうこと(端末を選ぶの)が面倒な層です。

一択モバイル 端末はモトローラの「moto e7」のみを用意

―― なぜ、端末がモトローラのmoto e7になったのでしょうか。

森藤氏 われわれの中で1円にすることを踏まえ、moto e7を選んでいます。どちらかと言うとバッテリーが大きく、画面のサイズも大きい。指紋センサーがついていて、こういった時代にもマッチしていますし、端末自体、古いものではありません。普段使いでは、問題なく使えると思います。ヘビーユーザーをターゲットにしているわけではないが、ガラケーからスマホに変える人や、小中学生が使うならこれで問題がないということでmoto e7にしています。

―― 1年の最低利用期間がありますが、これがあるから1円端末をセットできたのでしょうか。

森藤氏 違います。もともと音声通話付きのプランには、最低利用期間が1年ありました。

牧野氏 ただ、違約金が高いままになっています。7月には、法改正で消費者保護ルールが変わり、違約金は利用料の1カ月分までとなるため、弊社でも見直しをかける検討をしています。

―― 一択モバイルはあくまでLIBMOの新プランを訴求するための企画ということでしたが、期限はあるのでしょうか。

森藤氏 はい。一択モバイルは端末がなくなり次第終了する予定です。

―― 端末は、このために大量調達したのでしょうか。

森藤氏 何回かに分けて発注しました。最初からドーンと調達したわけではありません。

牧野氏 恥ずかしながら、私たちの規模だと調達力が強くないので、交渉すらあまりできていません。一択モバイルは販促費として確保した予算でやっています。

―― 好評なら、端末を変えるなどして、継続するようなことはありますか。

森藤氏 好評なら一択シリーズを作ってもいいと思いますが、まだこれからというところなので決まったことはありません。ただ、シンプルであることは大切です。料金プランと端末が決まっていて、そこに納得いただければ選ばなくていいというのが一択モバイルを作った理由です。ですから、別の端末であってもいいのかもしれません。

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