世界のスマートフォンのシェアは1位サムスン電子、2位Apple、3位Xiaomiですが、スマートフォンの機種ごとの販売台数ではAppleのiPhoneが上位を独占しています。Appleは年間数機種しか新製品を投入しないため、1台あたりの販売台数は、年間数十機種以上製品を出す他メーカーより上回るのです。
日本ではApple以外のメーカーも年間数モデル程度しか新製品を出さないケースが一般的ですが、グローバル市場を見ると、サムスン電子は約40機種、Xiaomiは約60機種の新製品を出しています(2021年)。キャリアビジネスの是非はさておき、キャリアが端末を売るビジネスではキャリアが複数メーカーの製品を全て扱わねばならず、おのずとメーカーごとの新製品採用機種は少なくなります。一方、日本以外のほとんどの市場ではメーカーが独自に製品を出しますから、毎月のように新製品が投入されているわけです。
それでは2021年の一番人気のスマートフォンはどの機種だったのでしょうか? 調査会社Omdiaのレポートによると、2021年に出荷台数の多かったスマートフォン上位10機種のうち、iPhoneは実に7機種を占めます。中でも「iPhone 12」が417万台を出荷し、全iPhoneの中で一番人気でした。しかしこのiPhone 12の出荷台数はトータルでも2位。1位となったのは518万台のサムスン電子「Galaxy A12」だったのです。
Galaxy Aシリーズはミドルレンジ以下のモデルが多く、2桁の数字が10番台のモデルはエントリークラスの製品です。Galaxy A12は価格の安さが世界各国で受けたわけです。平均価格は150ドルで、2位iPhone 12の851ドルとの価格差は約6倍。iPhone 12は先進国ではベストセラーだったでしょうが、Galaxy A12は新興国でよく売れただけではなく、先進国でも入門機として人気だったようです。中国メーカーの存在感が高まっているとはいえ、サムスン電子製品と比べるとブランド力や信頼度はまだ劣るのでしょう。
Galaxy A12は6.5型1600×720ピクセルのディスプレイにカメラ4つを搭載し、プロセッサはMediaTekのHelio P35を採用。メモリとストレージの構成は最小が2GB+32GB、バッテリーは5000mAhです。SNSを使う程度なら十分の性能で、バッテリーも十分あります。
背面は細かいドットの表面処理で滑り止め加工を兼ねた仕上げ。低価格モデルの中には、ちょっとした高級感を出すためにつやのある背面処理のモデルもありますが、指紋の跡が付いてしまい、いちいちふき取るのが面倒なんて製品もあります。Galaxy A12は素手でも気軽に持ち歩けるのです。
本体右側には指紋認証センサー兼電源ボタンとボリュームボタン。オーソドックスな配置です。
そして本体下部にはヘッドフォン端子もあります。低価格モデルには必須の機能でしょう。
カメラは4800万画素の広角に、800万画素の超広角、200万画素のマクロ、200万画素の深度測定の4つを搭載します。望遠がありませんが、Galaxy A12のターゲットユーザーは「スマートフォンを日用品として日々使う人」。望遠よりも室内で集合写真を撮るなど、ワイド側のカメラを多用するでしょうから、これで十分なわけです。
カメラのUI(ユーザーインタフェース)は他のGalaxyシリーズと同じです。写真モードではサイズ変更をタップすると4800万画素への切り替えができます。通常は1200万画素相当で撮影されますが、より高品質な写真を撮りたいときや、一部を切り抜いて使いたいときは4800万画素に切り替えればよいのです。倍率は超広角と1倍の切替だけで、デジタル望遠はありません。画質の悪い望遠で撮影するより、1倍の4800万画素で撮影して切り取ったほうがいい、という考えでしょうか。
その他のモードからマクロやプロモードが使えます。選択肢は少なくカメラの使い勝手もシンプルそのもので分かりやすくできています。「本体仕上げも良くしっかり使えるサムスン電子の低価格モデル」であるGalaxy A12、2021年一番人気だった理由が実機を触ってみて理解できたと思います。
Omdiaのレポートの順位はこちら。Apple以外はXiaomiとサムスン電子の低価格モデルが並びます。逆に「iPhone SE」が10位に入っていないのが興味深いところでしょう。
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