本社と2年がかりで実現 モトローラが「moto g52j 5G」でおサイフケータイ対応を果たせた背景(2/3 ページ)

» 2022年06月30日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

価格は「もうちょっと頑張ってくれ」と本社にお願いした

―― これだけカスタマイズをして、4万円を切っているのは、かなり頑張っているような印象を受けました。

松原氏 北米や南米、欧州ではモトローラもブランドとして認められるようになってきましたが、日本ではまだまだチャレンジャーです。そこはもうちょっと頑張ってくれと本社にお願いしました。今の為替レートだと、認められなかったかもしれませんが(笑)。

モトローラ 円安が進む中でもmoto g52j 5Gは3万9800円という価格を実現した

―― 確かに。一気に3割ぐらい円安になりましたからね……。

松原氏 グローバルメーカーは弊社に限らず、苦労することになるかもしれません。悪い要素が全部来てしまっていますからね……。

―― 今後は大変そうですね。

松原氏 買うなら絶対に今だと思います(笑)。

―― 前社長時代には、FeliCaを搭載すると端末が1万円高くなるというお話をうかがっていました。これは、「当時のロット」だというただし書きが付くお話でしょうか。

松原氏 まず、ロットの数があります。当時は、リスクアセスメント(リスク評価)も進んでいませんでした。そのため、リスクマージンをかなり取って試算していました。今はmoto g52j 5Gでかなり経験を積めたので、スケジュール的にも、コスト的にも、テクノロジー的にも、大体どういうリスクがあるのかは分かってきました。

―― ただ、コロナ禍で渡航に制限がある中で初めてFeliCaに対応するとなると、なかなか大変だったのではないでしょうか。フェリカネットワークスとのやりとりもありますし、オンラインだとどうしても時間がかかります。

松原氏 (FeliCaの)ミドルウェアはあるので見当はついていました。ただ、アンテナに関しては、テストの際にパフォーマンスが十分でないと、デザインの変更が必要になってしまいます。ソフトウェアなら何とかなりますが、ハードウェアの変更はリスクが高い。そうなると数カ月を要する変更になるので、“のるかそるか”のところはありましたね。ただ、フェリカネットワークスもそうですが、コンポーネントサプライヤーにもかなりサポートをしていただけた結果、想定していたよりもだいぶスムーズに開発ができ、途中で大コケするようなことにはなりませんでした。

発売後の反響は桁違いに好調

―― 結果、無事に発売できましたが、反響はいかがでしたか。

松原氏 かなりいいです。今までのモデルと比較しても、桁違いの反響で、かなり好評だと思っています。売れ行きも、この価格帯でいつも出しているモデルと比較すると、数倍の勢いです。本社からも、ずっと「どう? どう?」と聞かれていますが、「バッチリです!」と答えています(笑)。本社にはかなり苦労してサポートしてもらえたので、ここから頑張って販売していきます。

―― この経験は、次にも生かせるのでしょうか。1台で終わりということはないですよね。

松原氏 将来のプランは変更になる可能性もあり、言いにくいのですが、今回学んだことは、グローバルの製品にもフィードバックできます。フィードバックには皆さんの目から見て分かるもの、分からないものはありますが、そういったことをしていけば、あえて「j」と名乗らなくても日本の消費者に喜んでもらえる商品は出せるのではないかと考えています。

―― ちなみに、FeliCaだけでなく、IP68の防水・防塵にも対応しています。FeliCaと防水・防塵では、どちらが大変だったのでしょうか。

松原氏 大変さの種類が違いますね。アンテナ設計に関してはFeliCaの方が大変ですが、筐体全体という意味の設計だと防水・防塵です。モトローラの端末はIP52に対応しているものは多いのですが、そこからIP68にしようとすると、ほぼやり直しに近くなります。普通に使う分にはIP52でもIP68でも、そこまで変わらないとは思いますが、日本の皆さんの認識では、やはりIP68がいわゆる防水・防塵です。それを必要とされるなら、チャレンジしていきます。

―― 防水はIP52程度でいいので、FeliCaだけ載せてほしいというニーズもありそうですね。

松原氏 そういう選択肢も考えていければと思っています。なるべくコスト面はグローバルメリットを生かしつつ、道具としてFeliCaが欲しいという人に、そういうものを出せればとは考えています。

―― 一方で、5Gに関してはドコモのn79に非対応でした。他メーカーも含めてn79非対応の端末は多いですが、ここは難しいのでしょうか。

松原氏 他メーカーもそうですが、ここはかなり難しい。チャレンジはしていきたいのですが、簡単ではありません。1つの周波数を(追加で)サポートするためにアンテナを入れると、全体に影響が出ます。場合によっては設計変更も入るので、難易度はかなり上がってしまいます。

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