通信障害や災害に備えて――「モバイル回線」の多重化を考える5分で知るモバイルデータ通信活用術(1/3 ページ)

» 2022年10月04日 18時45分 公開
[島田純ITmedia]
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 7月2日1時35分頃から61時間、KDDIと沖縄セルラー電話の携帯電話サービス(au/UQ mobile/povo)と両社の回線を利用するMVNOサービスにおいて発生した通信障害は、音声通話で最大2278万契約、データ通信で最大765万契約に及びました。両社にとって、設立以来最大の通信障害となったそうです。

 障害に関する詳細は、ITmedia Mobileでも複数の記事で伝えられています。この記事では「障害が起きても影響を最小限にするための準備」と「障害が起きたらどうすべきか」に的を絞って検討していこうと思います。

障害 KDDIと沖縄セルラー電話の障害が発生した当日は、筆者のUQ mobile回線にもトラブルが発生しました

モバイル通信は「多重化」しやすい

 個人が契約して利用する生活インフラとしては、大きく「電気」「ガス」「水道」「通信」が思い浮かびます。これらのうち、電気、ガス、水道は、物理的な制約もあり多重化(バックアップの契約を行うこと)が困難です。通信も光ファイバーや銅線を引き込む固定回線の多重化は難しいですが、モバイル通信は多重化しやすいインフラといえます。

 もう少し具体的に考えてみると、電気や都市ガスについては「小売自由化」によって契約(購入)先こそ自由に選べるようになりましたが、自宅まで届けるためのインフラは全ての小売事業者が“共有”する形となっているので、、届けるインフラに問題が発生すると、契約している事業者を問わず“等しく”問題が発生してしまいます

 電気については、災害時や昨今の供給逼迫(ひっぱく)に伴う備えとしてモバイルバッテリーポータブル電源大型蓄電池という選択肢もあります。モバイルバッテリーは安いものなら1000円台からあり、スマートフォンを始めとするUSB給電に対応する機器のバックアップに使えます。少し値が張りますが、USB PD(Power Delivery)対応のPCや交流電気機器(平たくいうとコンセントを使う機器)への給電に対応するものもあります。容量を重視するなら、さらにバッテリー容量の大きいポータブル電源という選択肢もあります。

 ただ、冷蔵庫、エアコンなど消費電力の大きな電気機器はモバイルバッテリーやポータブル電源ではカバーしきれない場合もあります。そういった機器には据え置き型の蓄電池、最近なら外部給電対応の電気自動車の導入を検討するのも手ですが、初期投資額がどうしても大きくなります。エンジン式の小型発電機なら初期投資は比較的小さめですが、居住している場所によっては使うこと自体、あるいは燃料の調達が困難でしょう。

モバイルバッテリー 非常時の停電に備えて、筆者はこの夏、Anker製のポータブル電源「Anker 757 Portable Power Station」を購入しました。バッテリーの容量は1229Whとかなり大きいのですが、消費電力の大きい電気機器を複数使うと比較的早く消費しきってしまいます

 水道のバックアップを考えると、最近は賞味(消費)期限の長い「非常用飲料水(保存水)」も広く売られており、数日分の飲み水を確保することは難しくありません。水洗トイレ用の水は、風呂の水を洗う直前までためておくといった対策である程度確保できます。

 しかし、水洗トイレや風呂を“普段通り”に使うことは困難です。また、飲料水も水道の途絶が長くなると確保が難しくなる上、確保にかかる費用もかさんでしまいます。

保存水 最近は非常用飲料水(保存水)も入手しやすくなりましたが、水道の途絶が長くなると水の確保にかなりの費用がかかってしまいます

 その点、モバイル通信回線は初期費用は極小で、プランによっては月額負担も極小でバックアップを確保できます。復旧に3日以上かかるような甚大な自然災害が発生しない限りは、異なる大手キャリア(MNO)のモバイル回線を用意しておくことで、通信が完全に途絶するリスクを極小化できます。

 「端末はどうするんだ?」という問題もありますが、最近はMNOでもデュアルSIMに対応するスマートフォンが増えています。iPhoneなら iPhone XS/XR以降のモデルがnanoSIMとeSIMのデュアルSIMに対応しています(※1)。普段使うキャリアのSIMに加えてバックアップ用のSIMを入れておけば、万が一の時に切り替えて使えます。

(※1)iPhone 13シリーズよりも前のiPhoneをMNOを経由して購入した場合、異なるキャリアのnanoSIM/eSIMを利用する前にSIMロックの解除が必要になる場合があります。詳細は、購入元のMNOにお問い合わせください

Pixel 6 Googleのスマートフォン「Pixel 6 Pro」もnanoSIMとeSIMのデュアルSIMに対応しています
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