通信障害や災害に備えて――「モバイル回線」の多重化を考える5分で知るモバイルデータ通信活用術(2/3 ページ)

» 2022年10月04日 18時45分 公開
[島田純ITmedia]
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バックアップのモバイル回線を用意する際のポイント

 通信障害時に備えてモバイル回線を用意する場合は、気を付けるべきポイントが幾つかあります。簡単にチェックしていきましょう。

ポイント1:“異なる”MNOの回線を利用するサービスを選ぶ

 先述の通り、バックアップ回線にも原則として月額料金は発生します。そのこともあり「MNOのオンライン専用プラン」あるいは「MVNOが提供する通信サービス(格安SIM)」の利用を検討する人も少なくないはずです。

 ここで気を付けたいポイントがバックアップ回線のキャリアです。メインの携帯電話回線とは“異なる”MNOの回線を使うサービスを選ぶようにしてください。

 MVNOは、MNOから通信設備を借りてサービスを提供しています。例えばNTTドコモ回線を使うMVNOサービスでは、原則として「基地局」「基地局と交換局までの通信網」「コアネットワーク(交換機と加入者管理装置)」をドコモから借りて、交換機から先にある「POI(相互接続点)」から先の通信をMVNOが担当することになります。もしもドコモが保有する設備に障害が発生した場合、同社と直接契約しているユーザーだけでなく、同社回線を使うMVNOサービスのユーザーも影響を受けてしまうのです。

 バックアップ回線を契約する前に、自分のメイン回線が利用しているMNOを確認して、それと異なるMNOを利用している回線を契約するようにしましょう。

mineo オプテージのMVNOサービス「mineo」は、利用する回線をドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの3社から選べます。自然災害の際はMNOが担当する設備に障害が発生するケースが多いので「同じMVNOで異なるMNOの回線を使うプランをバックアップ契約する」という対策も“アリ”です
同じキャリア UQ mobileとpovoは同じネットワークを使っているため、バックアップ用途としては不向きですが……
異なるキャリア UQ mobileとLINEMOなら異なるネットワークを利用するのでバックアップ用途に向いています

ポイント2:2段階/2要素認証で「SMS」を使っていると困る可能性も

 セキュリティを向上する観点から、最近ではWebサービスのログイン時にパスワードに加えて認証コードなどの入力を求める「2段階認証」や、2つの認証方法を組み合わせないとログインできない「2要素認証」が普及しています。

 これらの認証方法として「SMS(ショートメッセージ)認証」を使っている場合、通信障害が発生しているとうまく認証ができない可能性が高いです。もしも2段階目、あるいは複数要素の認証にSMSを利用している場合、可能であれば事前に代替の認証方法を登録しておきましょう。

 ただし、2段階/2要素認証の方法が“固定”されてしまっているWebサービスもあります。この場合は、通信障害が起こると認証がしばらくできない可能性もあります。SMS以外の認証方法を利用することも、合わせて検討してみてください。

Amazon Amazonの2段階認証は、SMS認証の他にパスコード生成アプリも利用できます。バックアップの携帯電話番号でもSMS認証できるように設定するか、パスコード生成アプリを登録しておくことをお勧めします

ポイント3:バックアップ回線用の端末があると便利(デュアルSIM端末も可)

 バックアップ回線を利用する場合、以下のいずれかの方法で使うことになると思います。

  • 通信障害が発生したSIMカードと入れ替えて使う
  • バックアップ回線のSIMカードを入れた別の端末をいつでも使えるようにする
  • デュアルSIM対応端末に入れて使う

 SIMカードを都度入れ替えるのは意外と面倒です。スマホによってはメッセージ(SMS)アプリの送受信履歴や電話アプリの発着信履歴がゴチャゴチャになってしまう可能性もあるので、あまりお勧めはできません。

 2つ目は、「機種変更した後のスマホを手元に残している」など、複数台のスマホを確保できるなら現実的な選択肢の1つとなり得ます。ただし、2台目の端末も充電して電源を入れるなど定期的なメンテナンスが必要です。スマホのバッテリーは電源を切っていても放電されるので、しばらく電源を入れていなかった(充電していなかった)予備スマホの電源が入らないということは意外とよくあることなので気を付けてください。

 利便性と手間とのバランスを考えると、3つ目のデュアルSIM対応端末を使う方法が一番お勧めできます。iPhoneなら2018年に発売された「iPhone XS」「iPhone XR」以降の機種はnanoSIMとeSIMとのデュアルSIMに対応しています(※1)。

 AndroidスマホではSIMロックフリー機種を中心にデュアルSIM対応モデルが出回っていましたが、最近はキャリア向けのスマホでもデュアルSIM対応モデルが増えています。Googleの「Pixelシリーズ」から「AQUOS sense6」「OPPO Reno7 A」まで、ハイエンドからミドルレンジのモデルであれば、選択肢も十分にそろっています。

 緊急時対策の一環でデュアルSIM対応端末を買うのは十分に“アリ”です。

SC-54C ドコモのAndroidスマホの場合、最近はハイエンドモデルを中心にデュアルSIM化が進んでいます(画像はnanoSIMとeSIMのデュアル構成に対応する「Galaxy Z Flip4 SC-54C」)

ポイント4:許容できる「維持費」を検討しよう

 そして、バックアップ回線を持つ際に大きな問題となるのが維持費です。既にバックアップ回線用の端末、あるいはデュアルSIM対応の端末を持っている前提でかかる費用を考えてみましょう。

 まず、1回だけ発生する契約時の費用ですが、キャリアや申し込み方法によって税込みで2200〜4400円程度の「契約事務手数料(初期契約料)」が掛かります。一部のMVNOでは、それに加えて税込み220〜440円程度の「SIMカード発行手数料」も掛かる場合があります。ただし、キャリアによっては一定条件を満たすとこれらの手数料を減免してくれる場合もあるので、初期費用を抑えたい場合は事務手数料回りの条件をよくチェックしてみてください。

ahamo ドコモの「ahamo」を始めとして、MNOのオンライン専用プラン(ブランド)では新規契約時の事務手数料を無料としています

 バックアップ回線は、万が一に備えて契約するものですから月額料金もできる限り抑えたいと考えるでしょう。MVNOサービスを中心に、普段は必要最小限の出費で済むプランもあります。「備えのための出費」と考えれば、数百円程度なら何とか払えそうです。

 その中でも特に出費を抑えられるのが、KDDIと沖縄セルラー電話が提供する「povo2.0」です。povo2.0は基本料金が0円(無料)で、高速なデータ通信が必要な場合は「トッピング」を有料で購入するか無料で入手します。中でも、税込み330円で24時間データ容量無制限となるトッピングは、非常時のバックアップ回線としてとても心強いものです。

 ただし、povo2.0は完全に無料という訳ではなく、少なくとも180日(約半年)に1回は何らかの有料課金(※2)をする必要があります。とはいえ、普通に毎月料金を支払うよりは低コストでバックアップ回線を維持できることには変わりありません。ドコモやソフトバンク/Y!mobile、あるいは両社の回線を使うMVNOサービスのバックアップ回線として、まずpovo2.0を検討してみるのは“アリ”だと思います。

(※2)税込み660円超の支払い、または有料の各種トッピング購入

povo2.0 povo2.0は月額基本料金が無料なので、非常時のバックアップ回線として最適です。ただし、180日以内に税込み660円超の支払いをするか有料トッピングを1回購入する必要があります

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