“実質0円”の施策も 「Pixel 7/7 Pro」で日本攻略を狙うGoogle、足りないピースは?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2022年10月08日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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割安な価格で攻めるGoogle、実質0円キャンペーンも展開

 2018年の「Pixel 3」「Pixel 3 XL」を皮切りに日本上陸を果たしたPixelシリーズだが、廉価モデルのaシリーズを投入したことも奏功し、徐々に日本市場での存在感を高めている。ソフトバンクがAndroidの代表的なモデルとして強力にプッシュしたことも、拡大に貢献した。7月に発売された廉価モデルの「Pixel 6a」は、5万3900円(税込み、以下同)と安価ながら、上位モデルと同じTensorを搭載し、人気を博している。販売調査でも首位を記録するなど、滑り出しは順調だ。

Pixel 7 抜群のコストパフォーマンスを誇り、売れ行き好調なPixel 6a

 グローバルで見ると、Pixelは米国や日本での売れ行きが特によく、徐々にシェアを拡大している。過去には、「Pixel 5a(5G)」を日米限定で発売したこともあった。GoogleのVP(Vice President)でDevices & Services Business APACを務めるマイク・アバリー氏も、「日本市場は、PixelやPixel WatchをはじめとしたGoogleのハードウェアポートフォリオにとって、さらなる成長や普及のための大きな機会がある」と話す。

 Pixel 7、7 Proの価格設定からも、同社が日本でPixelを普及させる意気込みが伝わってくる。その1つが、為替レートだ。Pixel 7の米国での価格は、“税別”で599ドル。Pixel 7 Proは899ドルになる。これに対し、日本ではPixel 7が8万2500円、Pixel 7 Proが12万4300円から。消費税を抜くと7万5000円と11万3000円で、1ドルあたり125円強に設定されていることが分かる。10月7日の為替は、1ドル約145円。円安ドル高が大きく進み始めた、4月ごろの水準だ。

Pixel 7 価格はPixel 7が8万2500円から、Pixel 7 Proが12万4300円から。2021年よりは上がっているが、米国価格と比べると割安。円を現状の為替レートより高く見積もった設定だ

 実際、アバリー氏は、「Pixel 7、7 ProやPixel Watchの価格は機能や製品の能力に基づいて価格レンジを決めている」としながらも、「競争力を確保するためには、マクロ経済的な要因も考慮しなければいけない。為替にも配慮した」と語っている。日本でのシェアを伸ばす上で、あえて米国よりも安めに設定されているというわけだ。これは、Googleが日本市場を重視している表れと見ていいだろう。

 もう1つが、端末の下取りだ。端末が高額化する中、国内外で下取りを組み合わせた販売が一般化しつつあるが、GoogleはPixel 7、7 Proに特化したキャンペーンを展開。3年前に発売されたPixel 4やPixel 4 XL以降のフラグシップモデルを最大6万1500円で引き取り、2万1000円分のストアクレジット付与と合わせて「実質0円」を実現した。Pixel 4、4 XLは、中古店に売却しても2万円を下回るケースが多い。Googleがあえて増額しているというわけだ。

Pixel 7 下取りと予約特典を組み合わせることで、実質0円を実現。Pixel 4世代からの買い取り価格を最大6万1500円に設定しており、販売に力を入れていることがうかがえる

 厳密に言えばストアクレジットは購入時には使えないため、値引きではない。下取りも必要にはなるため万人向けの施策とはいえないが、発売直後にオープンマーケットで販売されるフラグシップモデルが実質0円になるインパクトは大きい。この下取り価格やストアクレジットのプレゼントも、お膝元である米国より“盛られて”いる。

Pixel 7 米国だと、Pixel 4(128GB)の下取り価格は300ドル。ストアクレジットも100ドルに抑えられており、日本の方が好条件だ

 一方で、日本市場では“ドコモの攻略”が販売を伸ばす上での課題といえる。端末の販売は、やはり契約者の多いドコモが強い。日本でのキャリア端末市場を考えると、Googleは最大の販路を押さえていないことになる。ドコモのプロダクト部長、松野亘氏は、Pixel不在の理由を、「周波数の問題もないことはないが、全体の商品戦略の中で見ている」と語る。

 事実、Pixel 7、7 Proも、5Gのn79(4.5GHz帯)やLTEのBand 21(1.5GHz帯)には非対応。対するドコモのハイエンドモデルも、メーカーの顔ぶれが固定化してきているだけに、Pixelが割って入る余地が少なくなっている。Pixel 3やPixel 3 XLの販売が振るわず、大幅な値引きを余儀なくされたトラウマで、ドコモ側が慎重になっている可能性もあるが、今はPixelの評価も高まっている。Googleとドコモが、再びタッグを組む日が来ることを期待したい。

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