一般的に固定インターネット回線は「より高速」かつ「より安定した」通信を求める時に使うものです。しかし、光ファイバーや銅線を使って接続していることもあり、何らかの理由で自然災害で通信局までの回線が“物理的に”切られてしまう場合があります。
また、モバイル通信(携帯電話)と同様に、ネットワーク上に存在する機器の故障によって通信障害が発生する可能性も否定出来ません。最近であれば8月25日、NTT西日本(西日本電信電話)の光回線「フレッツ光」において、IPoE(IP over Ethernet)接続を利用している12府県の一部ユーザーがインターネットに48分間接続できなくなるという障害が発生しました。NTT西日本は47都道府県のうち30府県(※2)でサービスを提供していますが、当該障害を仮復旧させる措置の影響で、全30府県のユーザーの通信速度が最大約5時間に渡って低下するという影響も出ました。
(※2)地理的条件や回線構成の都合で、NTT東日本(東日本電信電話)とのエリア境界に近い地域ではNTT東日本がサービスを提供することがあります(逆の事例もあります)
「固定回線にも冗長性を」と言いたい所ですが、物理的な条件でバックアップ回線を引くこと自体が困難であることもあります。とりわけ、集合住宅でバックアップの固定インターネット回線を引くとなると、大家(保有者/管理者)や管理組合の承認を得なければいけない場合もあります。維持費も結構な金額になってしまいます。
冒頭でも触れましたが、そこで検討したいのがpovo2.0をバックアップ用の回線にすることです。モバイル回線を利用するため、固定回線のような「低遅延」は期待できませんが、有事の際にトッピングを購入すれば「そこそこの速度でそこそこのインターネットを使える回線」として活用できます。
また、povo2.0は利用に最適な5G/4G LTE/WiMAX 2+ルーターの入手性が比較的良いこともメリットです。「なら、モバイルルーターとホーム(据え置き型)ルーターのどちらがいいのか?」という点は、人によって結論が分かれそうです。
「有線LAN(イーサネット)ポートを使いたい」「通信品質を少しでも良くしたい」と考える場合は、ホームルーターをお勧めします。モバイルルーターよりもボディーが大きいこともあり、利得(電波のつかみ)の良いアンテナを搭載しやすいホームルーターは通信品質面で有利です。ただ、持ち運ぶ際にかさばることや、停電時の電源を別途確保する必要があることが欠点です。
一方「停電時もバッチリ使える方がいい」という場合は、モバイルルーターをお勧めします。モバイルルーターは自らにバッテリーを搭載しています。あらかじめ充電しておけば、停電した場合でも基地局が無事なら通信を行えます。避難所や外出先に持ち出しやすいこともメリットです。一方で、ホームルーターと比べると通信品質の面で少し不利なことと、有線LANを利用したい場合にオプション品(クレードル)を用意しないといけない場合があることがデメリットといえます。
「一時的にそこそこのインターネット回線を」という観点では、ソフトバンクが提供している「データ通信専用3GBプラン」も候補に上がります。このプランには12時間で440円、24時間で550円の「データ使い放題オプション」が用意されているのですが、povo2.0とは異なり月額料金が1408円(キャンペーンで契約から5年間は990円)かかります。
このプランはSIMカードの単品契約(※3)の他、ソフトバンクブランドの5Gモバイルルーターなどとのセット販売も行われています。「既にau/UQ mobile回線を持っている」「ソフトバンクの方が電波の入りが良い」という人にお勧めです。
(※3)契約時に利用する機器のIMEIを登録する必要があります
過去の連載では、Androidスマートフォンを使った有線LAN(イーサネット)テザリングを試してみました。緊急時に有線LANを使わなければならない場合、この方法は有益ではあるのですが、端末と有線LANアダプターとの“相性”問題とは無縁ではない他、電源を並行して供給できないアダプターではバッテリー残量を基にしないといけません。
有線LANデバイス込みで固定インターネット回線のバックアップをする場合は、有線LANポートのあるワイヤレスホームルーター、あるいはモバイルルーターと有線LANポートの付きクレードルのセットを用意しておくと良いでしょう。
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