スマートフォンのカメラが高性能化しているが、それらの機種では以前よりも被写体に寄れなくなった。QRコードが読み取りにくくなったという声も聞くようになった。最近のスマホはなぜこのようなことが起こるのだろうか。
端的に言えば、近年のスマートフォンは最短撮影距離が以前に比べて長くなっているから。その理由にイメージセンサーの大型化が挙げられる。
スマートフォンの画質向上を目的として、近年はイメージセンサーの大型化が各社で進んでいる。ひと昔前の高級コンデジで採用されていた1型のセンサーを搭載したスマートフォンも存在する。
一方、イメージセンサーが大型化すると、最短撮影距離は必然的に長くなってしまう。レンズ構成である程度改善される部分もあるが、スマートフォンでは本体の厚みが大きな制約となる。
レンズ交換式一眼カメラなどに比べると、スマートフォンは寄れるものではあるが、従来のような撮影方法ではピントが合わないことも増えた。
試しに撮影したものがある。上の画像はiPhone 14 ProとiPhone SE(第1世代)を比較したものだ。iPhone 14 Proでピントが合う距離はおおむね15センチ前後であるのに対し、iPhone SEでは約6センチでピントが合う。
使ってみると、明らかに寄れなくなっていることが分かる。体感的にもかなり違う感覚だ。かつて、スマートフォンは接写に強いといわれていたことがあるが、近年のスマートフォンは必ずしも強いとはいえない。
近年のスマートフォンでは高画素なイメージセンサーが採用されており、デジタルズームでもきれいに撮影できる。センサーや画素ピッチ幅の大型化、画像処理能力の向上によって従来の機種に比べるとかなりきれいに撮影できる機種が増えている。
寄れないことで弊害が出るのが、オークションやフリマアプリに商品を出品する際に、傷や細かい装飾を撮影する場面だ。これらについてもフリマアプリのカメラを利用するのではなく、スマートフォン本体に備わっているカメラアプリからズームをして撮影するときれいに撮影できる。
スマートフォンの写真撮影で比較的寄り気味になりがちな料理、物撮りのシチュエーションでは、少し工夫することできれいに撮影することが可能だ。
最短撮影距離が伸びて寄れなくなったことから、超広角マクロ撮影機能を持つスマートフォンも増えている。Androidスマートフォンではいくつか対応している機種が出ていたが、「iPhone 13 Pro」で採用されて話題になった。
こちらはメインカメラで寄れなくなると、自動的に超広角カメラに切り替わる。意図しなくてもぐっと被写体によって撮影することができるのだ。超広角カメラは大型センサーの採用例が少なく、最短撮影距離も比較的短いものが多い。そのため、接写時は超広角カメラに切り替えて撮影するものが、近年のスマートフォンで「寄れない問題」の解消方法の1つとなっている。
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