Qualcommが「Snapdragon 8 Gen 2」のお披露目で“メッセージ”を変えた理由Snapdragon Summit 2022(1/2 ページ)

» 2022年12月12日 06時00分 公開

 Qualcommが「Snapdragon Tech Summit」の名称で世界中の報道関係者などをハワイに呼んで、Snapdragonシリーズのハイエンドモデルと同社最新技術のアピールを始めたのが2017年12月のこと。その間、コロナ禍による2020年のオンライン開催と、2021年の北米内限定での関係者招待での開催を除けば、一貫して「ハワイで12月にSnapdragonの最新フラグシップを発表する」というスタイルは変わらず続けられてきた。

 ところが2022年11月に開催されたイベントを3年ぶりに訪問したところ、少し毛色が変わっているのを感じた。イベントを通じて同社が発するメッセージが変化していたのだ。

Snapdragon Summit 「Snapdragon Summit」に変更されたイベント名

重視したのはマーケティングメッセージ

 変化の1つはイベント自体の名称だ。2022年に開催されたイベントの正式名称は「Snapdragon Summit 2022」。2021年までは存在していた「Tech」の文字が外れ、「Qualcomm」の名称さえ出さなくなった。あくまで「Snapdragonの会議(Summit)」というわけだ。これについて米Qualcomm Technologiesシニアバイスプレジデントでモバイル/コンピュート/XR(MCX)担当ゼネラルマネジャーのAlex Katouzian氏は次のようにコメントしている。

Katouzian氏 もはやQualcommをアピールするものではなく、Snapdragonそのものが会社をけん引している状態だ。イベント名から「Tech」が外れたのも同様の理由で、テクノロジーそれ自体は既にSnapdragonの中に存在しており、それよりも人々がSnapdragonというブランドを聞いたとき、そのデバイスから得られるのがベストなユーザー体験であるということが重要だ。デバイスは車であろうとPCであろうとXRであろうと時計であろうと、そしてもちろん電話であろうと、Snapdragonから得られる体験がベストであるという考え方からだ。

 確かにイベントの構成を見ていても、従来であれば基調講演の場で5GやSoCの詳細についてゴリゴリの技術解説を行っていたものが、今回のイベントではあえて「どういった体験が得られるか」ということを軸に実際のユーザー体験が語られている。例えばソニーとの提携でISPの機能をさらに強化し、「セマンティックセグメンテーション」を駆使したリアルタイムでの画像最適化エンジンなど、「論より証拠」という形でアピールが行われていた。逆に技術的な詳細は個別のセッションや各担当者のインタビューを通じて解説する形となっており、オンラインを通じて一般視聴者にも配信される基調講演ではあえて「Tech」的な要素を省いていたフシがある。

 Snapdragonブランドも機能ごとに細分化されており、5GやWi-Fi 7を含む通信機能は「Snapdragon Connect」、AI関連機能は「Snapdragon Smart」、音声出力は「Snapdragon Sound」、セキュリティ関連は「Snapdragon Security」、カメラ機能は「Snapdragon Sight」、そしてゲームブランドは従来のものを統合した「Snapdragon Elite Gaming」と、それぞれ「Snapdragon」ブランドを冠する形でリニューアルしている。主役はあくまで「Snapdragon」なのだ。

Snapdragon Summit Snapdragonの名称を冠してリブランディングされたモバイル機能の数々

Katouzian氏 Snapdragonは既にQualcommをけん引する存在になっている。身近なものでいえば「Samsung Exynos」が好例だろう。「Samsung」の方がブランドとして「Exynos」より認知されており、「Exynos」という名称だけでは恐らく理解してもらえない。必ず「Samsung Exynos」がセットなのだ。同様に、Intelもまた「Intel Inside」であり、「i5」や「i7」単体のブランドではない。Snapdragonそのものが「プレミアムパフォーマンス」と同義であり、Qualcommにとっての象徴となっている。

 今後OEMがSnapdragon搭載製品を出すとき、いずれかの場所にロゴを掲出することで、ユーザーがブランド名を通じてその品質やユーザー体験を想起するということも考えられるだろう。Qualcommは2022年8月に英プロサッカーリーグのManchester Unitedと提携を発表したが、世界に10億を超えるManchesterのファンの間でSnapdragonの認知度は35%となっている。つまり、少なくとも3億5000万の人々はSnapdragonというブランドを認知し、それがより優れた消費者家電とユーザー体験を象徴しており、品質も素晴らしいことを理解していることにつながる。

 コロナ禍の中でQualcommに起きた大きな変化の1つは、その主力製品のブランディング強化にあったといえる。Manchester Unitedとの提携以外にも、“ネーミングライツ”を使ってブランドの認知向上を進めている。Qualcommは同本社のある米カリフォルニア州サンディエゴに、ネーミングライツを使った「Qualcomm Stadium(The Qとも呼ばれる)」(旧名:San Diego Stadium)を抱えていたが、2022年8月にサンディエゴに新規オープンしたスポーツアリーナのネーミングライツを購入して「Snapdragon Stadium」と名付けた。つまり、社名よりも主力製品のブランディングを優先したというわけだ。

Snapdragon Summit 米Qualcomm Technologiesシニアバイスプレジデントでモバイル/コンピュート/XR(MCX)担当ゼネラルマネジャーのAlex Katouzian氏
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