静岡拠点のLIBMOがドコモの「エコノミーMVNO」参入を決めたワケ 先行2社との差別化は?MVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2023年01月06日 12時43分 公開
[石野純也ITmedia]

 2021年に始まったドコモの「エコノミーMVNO」だが、3社目として名乗りを上げたのは、意外な会社だった。LIBMO(リブモ)を運営するTOKAIコミュニケーションズだ。同社は、静岡県に拠点を構えるMVNO。県内では併売店を持ち、ソフトバンク回線とともにリアル店舗でLIBMOを販売している。そんな同社がエコノミーMVNOとして売りにしたのが、「音声通話定額」だ。

 LIBMO自身は、2021年に大幅値下げした20GBプランや、2022年に新設した3GBプランを特徴としているが、エコノミーMVNOでは2022年に導入した「ゴーゴープラン」を全面的に展開する。同プランは、500MBのデータ容量と3種類の音声通話定額をセットにしたもの。500MBプランは同じエコノミーMVNOのOCN モバイル ONEにも用意されているが、音声通話定額をセットにしたときの料金は、LIBMOの方が安い。

LIBMO 2022年12月21日から、ドコモのエコノミーMVNOとしてドコモショップで受付可能になった「LIBMO」

 ただ、LIBMOはどちらかといえば、地域に根差したMVNOというイメージが強い。全国区での知名度は、シェア上位の大手MVNOの後塵を拝している。そんな同社が、なぜ、全国のドコモショップを活用できるエコノミーMVNOに参画を決めたのか。TOKAIコミュニケーションズのコンシューマ事業本部 移動体通信事業部 副事業部長の牧野弘宜氏、コンシューマ事業本部 事業戦略室 室長の森藤豪氏、コンシューマ事業本部 移動体通信事業部 営業推進部 営業推進課 課長の丸山智也氏にお話を聞いた。

通話料の値下げにより、音声料金プランの競争力を高められた

LIBMO 牧野弘宜氏

―― エコノミーMVNO向けのプランでは、どちらかというと音声通話を売りにしています。音声定額のオプションを充実させた背景を教えてください。

牧野氏 背景としてあったのが、21年4月にスタートした00XY自動振り分けです。卸から接続に移行したことで、基本料や通話料の値下げが実現し、音声通話の料金プランの競争力を高められるようになりました。また、使い勝手の面では、スマホの標準アプリからの発信にも対応しています。音声接続で料金、使い勝手ともに自由度が上がったというわけです。それを前提に、21年3月に「なっとくプラン」をリリースしています。当時は競合他社と違いが出る20GBプランを主軸にしようと取り組んできました。20GBは音声プランとデータプランの値差をつけず、どちらも1991円(税込み、以下同)にしています。これをやったのが1年半ぐらい前です。

 次に、音声プランをもっと強化できるかもしれないということで、中継事業者と交渉し、かけ放題を充実させました。その交渉が成立して半年ぐらいたった22年2月に、なっとくプランの新容量帯を出しています。ここで、一番のボリューム帯である3GBを980円で出し、攻めていきました。同時に、3つのかけ放題を設定しています。これが「5分かけ放題」「10分かけ放題」「かけ放題マックス」です。

 それまでは10分をメインに、その上として上位3番号をかけ放題にするオプションがありましたが、音声かけ放題のニーズに応えたいということで、5分、10分、マックスに変更しています。電話としての利用が主な人のニーズにこたえるため、500MBとかけ放題をセットにしたゴーゴープランも作りました。OCN モバイル ONEは音声セットのない500MB、550円のプランを出しましたが、やはり1000円ぐらいはいただけないと事業が持ちません。

森藤氏 22年はLIBMOがちょうど5周年だったこともあり、500MBという小容量帯も作ろうということでのゴーゴープランでした。そこにせめてかけ放題をつけようという形でできたプランです。

LIBMO エコノミーMVNOで扱うプランは「ゴーゴープラン」と「なっとくプラン」の2種類

―― ゴーゴープランは、今にして思うとエコノミーMVNO向けのようにも見えます。当初からエコノミーMVNOに参画することを考えていたのでしょうか。

牧野氏 そういう取り組みがあることは聞いていたので、視野になかったと言えばウソになります。ただし、そこまで力を入れずに用意していました。

森藤氏 ゴーゴープランは、なっとくプランの3GB、8GBと同じタイミングで出したので、主流は3GBと考えていました。ラインアップとして用意はしましたが、まずは3GBを推していきたいというのが当時の思いです。ただ、(エコノミーMVNOでゴーゴープランを展開していく計画が)視野になかったかというと、ありました。

牧野氏 3GBプランにはついては、プランを作ったこと自体が成功でした。かけ放題も想定以上の付帯率でお申し込みをいただいています。その中で、ゴーゴープランは特段大きなプロモーションをせず、どうやっていけばいいかを考えていました。エコノミーMVNOの参画にあたっては、先行2社との違いになる分かりやすい特徴が必要です。それが音声ということだと、Webでの手続きに不安のある方がドコモショップで手続きできていいのではないでしょうか。3Gのマイグレーション(移行)を迎えることもあり、大きなチャンスがあると考え検討をし、交渉を進めてきました。

ドコモとのシステム連携にハードル 即時開通できるよう調整中

―― エコノミーMVNOにはLIBMOの主力になっている20GBプランや30GBプランがありません。これも差別化のためでしょうか。

牧野氏 10GBを超えるプランはすみ分けの基準になります。20GBだと(ドコモ側に)ahamoもあるので、すみ分けをしておきたい。とはいえ、新しい料金体系を作ると大変になってしまうので、今のプランのまま申し込めるのは8GBプランまでとして、オペレーションにインパクトがないようにしました。

丸山氏 店頭で申し込めるのは8GBまでですが、その後、お客さま自身で20GBや30GBプランに変更することはできるようにしています。申し込めないといっても、LIBMOのサイトには載っているので、20GBプランや30GBプランは見えてしまいます。来店されたお客さまが問い合わせをしてくる可能性もあると思っています。

LIBMO なっとくプランのうち、20GBと30GBのプランはドコモショップでは申し込めない

―― 料金プラン的には差別化が図れていると思いますが、ドコモとの交渉はスムーズだったのでしょうか。

牧野氏 それが、そうでもありませんでした。うちのオペレーションが、ALADIN(アラジン、ドコモの顧客情報管理システム)のAPIに対応していないからです。後日配送になる理由もそれです。ドコモ側もどういうふうにやったらいいのかを悩まれていたので、そんなに簡単にはいきませんでした。最終的には、スタート時点ではお客さまのご自宅に配送するという形にして、店頭開通は後からとすることでハードルが下がりました。

 (ドコモショップでの即時開通は)システムの結び付けが必要で、仕組みが大手MVNO向けにできているのでなかなか難しい。地方の僕らには必要ないかと思っていました。ただ、全国オペレーションをやるとなると、やはり考えなければなりません。ようやく議論の俎上(そじょう)に乗ったので、社内に対してどう諮っていくかを考えています。

―― 実現はいつ頃になりそうですか。

牧野氏 今の時点で時期は言えませんが、ドコモとも話をして進めようとしています。お客さまのためには、早くあれればと考えています。

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