ahamoに寄せた名前が少々分かりづらかったり、OCN モバイル ONEに比べると料金値上げになっていたりと、改悪になっている点が批判を集めている一方で、ドコモから他社のサブブランドに対抗できるだけの料金プランが登場したインパクトは大きい。縮小しているとはいえ、依然として全国に2200ものショップ網があり、ここで販売できるからだ。特に、ahamo登場後にドコモショップを訪れ、門前払いされてしまったユーザーに対しての訴求力は高いといえる。
ただ、料金プランが別建てになっているため、せっかく200万契約まで積み上げたOCN モバイル ONEの規模感を生かしづらい。OCN モバイル ONEからirumoに移行すると、単なる値上げになってしまうユーザーもいるため、巻き取りには何らかの対応が必要になる。ドコモの料金企画室長 大橋一登氏は「お客さまにはirumoなり、その他のプランに移っていただくためのご案内を積極的にしていく」としていたが、どのような特別対応があるのかは未知数だ。
この点では、傘下のMVNOだったUQ mobileをそのまま統合し、シームレスにサービスを提供し続けているKDDIの方が一枚上手だったように見える。UQ mobileも、KDDIに移管された当初は、システムをそのまま使用していたため、仕組みとしてはMVNOに近かった。4Gの料金プランでは、国際ローミングができなかったり、5Gが利用できなかったりしたのはそのためだ。一方で、5G導入に合わせてシステムを統合。MVNO時代から契約していたユーザーに対しても、そのままUQ mobileとしてサービスを提供している。
UQ mobileがKDDI統合から2年強しかたっていないにもかかわらず、800万契約を超えているのはこうしたシームレスな統合ができたからだ。これに対し、irumoの場合、OCN モバイル ONEの200万ユーザーの上げ底なしで、ゼロから契約者を積み上げていく必要がある。料金プラン変更がどの程度になるのか次第ではあるが、OCN モバイル ONEもサービスは継続するため、当面、二重投資は続くことになる。“資産”ともいえるOCN モバイル ONEの規模を生かしづらい構造になっているのは少々残念だ。
また、ドコモ自身が低料金ブランドを展開することで、エコノミーMVNOははしごを外された格好になる。むしろ、はしごを盛大に蹴り飛ばされたと言っても過言ではない。子どもやシニアに特化しているトーンモバイルはユーザー層が異なるため、まだドコモショップでの展開はしやすそうだが、音声通話定額と500MBのデータ通信をセットにした「ゴーゴープラン」を展開するTOKAIコミュニケーションズのLIBMOは、irumoの0.5GBプランとターゲット層がかぶる。MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会のMVNO委員会も、先に挙げた総務省の電気通信市場検証会議で懸念を表明している。
こうした市場動向を踏まえると、irumoでほぼ音声通話専用といえそうな0.5GBプランを投入した点には疑問符もつく。ただ、懸念が表明されるのは、それだけ新料金プランの競争力が高いと見積もられていることの裏返しともいえる。特に、UQ mobileやY!mobileとの戦いは激化するのは必至。ドコモという強敵が名乗りを上げたことで、サブブランドやMVNOを含んだ小容量プランの競争がさらに激化しそうだ。
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