世界を変える5G

Starlinkを沖縄でも提供、「衛星間通信」で全国対応 au基地局は5Gに対応

» 2023年07月18日 19時46分 公開
[石井徹ITmedia]

 米SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」が7月より沖縄県で利用可能となる。これにより、日本全国でStarlinkの通信サービスが利用可能となる。KDDIが7月18日に実施したStarlink for Businessの記者説明会にて明らかにした。

 Starlinkは、低軌道に打ち上げた多数の衛星が連携し、地上の通信を仲介する衛星コンステレーションサービスだ。モバイル通信並みの高速・低遅延な通信を、モバイル通信並みの料金水準で提供している。日本では2022年10月からサービスを提供している。KDDIが地上局の運営において技術協力を行っている。

KDDI Starlink for Business 説明会 Starlinkのアンテナ(法人・自治体向けの大型版)。衛星通信とWi-Fiルーターとしての機能を備える

 Starlinkのサービス提供エリアはこれまで「沖縄県や小笠原諸島を除く日本全国」となっていた。これは技術上の制約によるものだ。

 Starlink衛星は、いわば宇宙空間に設置されたネットワークの中継器のような存在だ。衛星はユーザーのアンテナからのパケットを送受信し、インターネット網への出口となる地上局へ伝える。

 これまでのStarlinkのサービス仕様では、1つの衛星の視界内にアンテナと地上局の両方が存在する条件下でのみ通信が成立する。日本の西端にある沖縄県や、南端にある小笠原諸島は、日本の地上局から地理的に遠いため、Starlinkサービスの提供範囲外となっていた。

 この制約を解消するのが衛星間通信だ。宇宙空間上に点在するStarlink衛星同士がレーザー光で通信を行う。衛星同士の通信により巨大なメッシュネットワークを形成する。これにより、例えば沖縄のユーザーのアンテナから北海道の地上局に通信するような、長距離の衛星通信も可能となる。

KDDI Starlink for Business 説明会 7月中にStarlinkの衛星間通信が有効となり、新たに沖縄県でサービスエリアとなる

 SpaceXは衛星間通信機能に対応したStarlink衛星の打ち上げを進めており、KDDIはSpaceXと共同で衛星間通信の技術検証を行っている。KDDIの松田浩宏執行役員によると、au網のバックホール回線として衛星間通信を用いた場合でも、サービス品質を満たせることを確認しているという。

 KDDIが日本の法人・自治体向けの「Starlink Bussiness」では、7月より沖縄県を対応エリアとして追加し、日本全国で利用できるようになる。沖縄県でauサービスを展開する沖縄セルラーは、Starlink衛星をモバイル通信サービスのバックホール回線の1つとして活用する。

Starlinkを運用するau基地局が5Gに対応

 KDDIはまた、Starlinkをバックホール回線として利用するau 5Gの基地局の運用を開始することを発表した。KDDIは既に4G LTEサービスのバックホール回線として利用しており、5G網への対応も追加された格好だ。KDDIによると、Starlink網のau 5Gでの対応は、将来的な5Gへの本格移行も見据えた措置で、5G SAと5G NSAの両サービスで利用可能としる。

 携帯基地局とコアネットワークをつなぐバックホール回線は通常、固定回線網が利用されている。Starlink回線は通常の回線ではまかなえないような通信ニーズに対応するために活用されている。

 Starlinkをバックホール回線として利用する場合、Starlinkの回線品質がボトルネックとなるため、4G LTEでも5Gでも通信品質に大きな差は生じない。ただし、音楽フェス会場などの非常に混雑する場所で通信を行った場合、電波の利用効率が高い5Gユーザーが増えることで、全体の混雑が緩和できる可能性がある。

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