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法人事業におけるKDDIの強みとは? デジタル化だけでなく“データ活用”にも注力

» 2023年09月05日 18時12分 公開
[田中聡ITmedia]

 KDDIが9月5日、法人事業についての戦略を説明した。

 業務効率化や業績改善のためにデータを活用して変革を図る「DX(デジタルトランスフォーメーション)」がビジネスで推進されているが、KDDIも「デジタル化」「データ活用」に関するソリューションを法人事業の新たな軸としている。同社はDXを「お客さまが非デジタルなものをデジタル化し、データを活用していくこと」と定義する。

 一方で、DXを取り入れている企業は16.4%にとどまり(帝国データバンク調べ)、DXについて実証実験以上の取り組みをしている企業は50%程度にすぎない(IDC Japan調べ)という現状がある。

KDDI DXに対応している企業はまだ少ない

 KDDI 取締役 執行役員専務 ソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長の桑原康明氏は「DXは2022年くらいまでは、デジタル化をしていく段階だといわれている。今後は、ビジネスにデータを活用する時代に変わっていく。しかし日本はまだ遅れている面がある。世界的な流れにキャッチアップしていかないといけない」と話す。

KDDI DX時代ではデジタル化にとどまらず、今後はデータ活用のフェーズに移行する

 DX時代におけるKDDIの強みとして、桑原氏は「圧倒的なお客さま接点」を挙げる。モバイルでは3000万回線を保有し、法人40万社の顧客基盤も持つ。グローバルも含めたIoTでは4000万回線が稼働している。「お客さま接点は、スマートフォンにしてもIoTにしても、データの入出力の起点になる。こうした接点を有していることが、非常に大きな強みだ」(桑原氏)

KDDI 圧倒的な顧客接点を持つことがKDDIの強みだとしている

 KDDIは、IoTではソラコム、分析・コンサルティングではフライウィール、マーケティングではSupershipなど、データを生かすビジネスで多様なグループ会社も持つ。こうしたグループの資産も生かし、戦略策定からプロジェクト管理、システム開発、通信環境の構築、サービス提供までを一気通貫で提供できることも強みだとした。

KDDI グループ内に、データを扱う企業を多く抱えることも強みとなっている

 KDDIは法人事業を、「コア事業」と「NEXTコア事業」の2つに分ける。コア事業は従来のモバイル、5G、固定通信などが含まれ、次世代のNEXTコア事業には、働き方改革や業務の生産性向上を支援する「コーポレートDX」、ビジネス変革を支援する「ビジネスDX」が含まれる。売り上げの比率はコア事業が62%、NEXTコア事業が38%だが、年々、NEXTコア事業の売り上げが上がっているという。

 DXを目指すNEXTコア事業は、(1)非デジタルのデジタル化→(2)IoTデータの活用→(3)企業間のデータ融合という3ステップで発展させていく。

KDDI NEXTコア事業にも拡大し、3つのフェーズで展開する

 (2)のIoTはさまざまな領域で浸透しているが、大半がクルマだという。コネクテッドカーに2000万回線が採用されており、2023年には、BMWがグローバルでKDDIのIoT回線を採用することが決まった。桑原氏はBMWについて「非常に大きな契約になった。BMWと契約したことで、欧米メーカーからたくさんお問い合わせが来ている」と手応えを話す。

KDDI 4000万回線が稼働するKDDIのIoTサービス。BMWの採用も大きなトピックとなった

 (3)のデータ融合では、1社が持つ統計データだけでは不足するため、複数社のデータを掛け合わせていく。例えば、検索情報や購買情報を持つA社に対して、KDDIが持つユーザーの位置情報や属性情報などを提供することで、最適な場所で広告を表示したり、店舗のクーポンを配信したりできる。

KDDI 企業間のデータを統合することで、新たなビジネスを創出していく

 このデータ融合を具現化した1つの事例が、TAKANAWA GATEWAY CITYで街全体をデジタルツインにする取り組みだ。街や人に関するデータを活用し、デジタル上でシミュレーションすることで、働く人にとって価値を提供する。

KDDI 街全体をデジタルツイン化し、価値ある情報や働き方を提供する「TAKANAWA GATEWAY CITY」

 しかし「デジタルツインは難しい」と桑原氏は言う。「リアルなものをデータ化するのにものすごい労力がかかる」からだ。一方で、「シミュレーションをずっとやっていかないと価値を生み出せない。いかに早くやっていくかが重要」(桑原氏)。そこでKDDIは、データエンジニアリング専門のスタートアップであるフライウィールと2023年4月に資本業務提携を結んだ

 KDDIが収集したビッグデータを、フライウィールが提供するデータプラットフォーム「conata(コナタ)」と組み合わせることで、企業間のデータ連携を加速させる。

KDDI フライウィールのconataを活用し、データ連携を進める

 conataはAIを使った需要予測にも秀でている。例えば、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の蔦屋書店では、会員7000万人、800店舗、450万タイトルというビッグデータをデジタル空間に再現し、店舗ごとに選書や発注を予測することで、実売率を約20%改善できたという。

 KDDIとフライウィールの2社間では、KDDI物流センターで倉庫業務を可視化させる取り組みを行った。現状の設備でどれぐらいの業務を回せるのかを可視化し、新たな設備を作った方がいいのか、既存の設備で目標の荷物を運用できるのかをシミュレーションしているとのこと。

 ここまで触れてきた3つのフェーズを加速させるために、KDDIは企業に対して生成AIも提供していく。9月5日には、Microsoftの「Azure OpenAI Service」提供も発表した。

KDDI Microsoft、Amazon、Googleの生成AIも取り入れていく

 また、データを活用すればするほど、使用する電力量も上昇するが、KDDIはCO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの排出を実質ゼロに抑える「カーボンニュートラル」の取り組みも進めていく。その施策として、9月5日に「KDDI Green Digital Solution」の提供を発表。KDDIの法人ユーザーは、CO2排出量の可視化や情報開示のレポート作成、CO2排出量を減らすための戦略策定が可能になる。

 2024年春には、業界ごとに異なるプラットフォームを協調させながら、ユーザーに合わせたソリューションを提供する「次世代プラットフォーム」の発表も予定している。

KDDI 2024年春には次世代プラットフォームの発表を予定している

 業務提携や出資も積極的に行っていく。コア事業ではインターネットイニシアティブ(IIJ)と2023年5月に資本業務提携を結び、512億円を投資する。データセンター事業では、カナダでデータセンター事業を拡大するための事業譲渡契約を結び、1446億円を投じる。BPO(Business Process Outsourcing)事業では2023年9月1日にアルティウスリンクを発足させ、2400億円規模の売り上げを見込む。

KDDI 法人事業で約2000億円の投資を行う
KDDI KDDI 取締役 執行役員専務 ソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長の桑原康明氏(左)、フライウィール 代表取締役社長の横山直人氏(右)

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