PayPay経済圏との連携を強めたソフトバンクのペイトクだが、メリハリ無制限と仕様が同一ではない点には注意が必要だ。先に挙げたように、ペイトク無制限とメリハリ無制限+には、新たに“200GB制限”が加わる。200GBを超過した際には、通信速度の上限が4.5Mbpsに低下してしまう。従来のメリハリ無制限にはもちろん、他社の無制限をうたう料金プランにも、このような総量規制は存在しない。機械的な大容量通信を行った場合の制限や、大容量通信を行った際の混雑時にかかる制限を明記しているキャリアは多いが、そのしきい値は明示されていないのが実情だ。
これに対し、ソフトバンクのペイトク無制限とメリハリ無制限+は、公平性の観点で200GBという容量が設定されている。寺尾氏によると、「バランスを取ることでお客さまへの影響を最小限にしながらバランスを取っていく」のがその目的だ。現状では、約0.3%のユーザーが該当するという。この0.3%のユーザーは、全体のトラフィックの約6%を占めている。「今のネットワークが逼迫(ひっぱく)しているわけではない」というものの、将来的にキャパシティーが不足することを懸念し、先手を打った格好だ。
この200GB制限は、あくまでペイトク無制限、メリハリ無制限+が対象で、現状のメリハリ無制限にはかからない。そのため、既存のユーザーは料金プランを変更しなければ、200GBを超えてもそのままの通信速度で利用できる。寺尾氏は、「お客さまが自ら移っていただく設計にしている。合意なく料金プランを値上げするどこかの事業者とは違う」と語り、ユーザー自身で選択する仕組みであることを強調した。
また、規制後の通信速度も4.5Mbpsと比較的高く、128kbpsや300kbpsといったペナルティー的な規制ではない。Webサイトの表示などであれば、速度制限がかかっていることに気付かないレベルのはずだ。寺尾氏も、「お客さまの使用感にはほとんど影響しないが、大きなデータのダウンロードなどには少し影響が出る」と語っている。同様の規制はY!mobileの「シンプル2」でも実施される予定で、こちらはデータ容量超過後の通信速度が対象。Sプランは6GB、Mプランは30GB、Lプランは45GBを超えると、速度制限が一段強まり、128kbpsに制限される。
Y!mobileの場合、Mプラン、Lプランはデータ容量超過後も1Mbpsで通信ができる。ペイトク無制限やメリハリ無制限+の制限よりは厳しいものの、1Mbpsあれば、動画などの視聴もできてしまうため、トラフィックを占有することが可能。2%程度のユーザーが、こうした使い方をしているようだ。ソフトバンクとY!mobileのどちらも、新料金プランの導入に合わせ、“使い放題”に歯止めをかけようとしていることがうかがえる。
通信品質を一定に保つには、こうした規制が必要なのは理解できる。4.5Mbpsという速度であれば、制限がかかったことに気付かない人もいるだろう。ペイトク無制限やメリハリ無制限+には、テザリングの50GB制限もあるため、200GBは原則として、スマホ単体での通信。超過しているユーザーが0.3%と少ないのも、そのためだ。ただ、明確なしきい値を設けて速度制限を課している以上、やはり無制限という言葉が与えるイメージとは乖離(かいり)もある。現状の定義だと、あらかじめ決められた容量を超えた際に何らかの制限がかかる料金プランを、無制限とは呼ばないからだ。
寺尾氏は、「規制後の速度は4.5Mbpsなので、ほとんど影響がない。厳しく広告的な検討もした」と話すが、無制限や使い放題という言葉はインパクトが強く、誤解を招く恐れもある。200GBを超えるユーザーがわずか0.3%なのであれば、堂々とペイトク200やメリハリ200といったプラン名にしても、事実上の無制限と思われたのではないか。結果として99.7%の通信品質を維持できるのであれば、その点をもっと誠実にアピールすることもできたはずだ。200GB制限をかける意図は理解できるものの、その料金プランを無制限とうたう点には疑問も残った。
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