Pixelが国内でシェア急増も「8/8 Pro」は大幅値上げ 競合からは“包囲網”も石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年10月07日 14時42分 公開
[石野純也ITmedia]

 Googleは、Pixelシリーズの最新モデル「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」を10月12日に発売する。Pixelは、プラットフォームとしてAndroidを展開するGoogle自身が手掛けたスマートフォン。ハードウェア、ソフトウェアはもちろん、スマホの頭脳ともいえるプロセッサやその上で動くAIまで自ら開発しているのが特徴だ。Pixel 8/8 Proは、プロセッサに「Tensor G3」を搭載。そのインパクトでPixelの知名度を押し上げた「消しゴムマジック」を進化させた、複数のAI編集機能を採用している。

Pixel 8 Googleは、Pixel 8(左)とPixel 8 Pro(右)を発表した。12日にGoogleと大手キャリア3社が販売を開始する

 日本市場参入当初はパイが小さかったPixelだが、廉価モデルのaシリーズを含めたコストパフォーマンスの高さや、Tensor採用以降のAI関連機能が評価された結果、シェアを急速に高めている。2023年の「Pixel 7a」でドコモの取り扱いが“復活”したことも、その勢いに拍車を掛けた格好だ。ただ、いくら消しゴムマジックが高性能でも、円安までは消せなかった。2機種とも、2022年との比較で大幅に価格が上がっている。競合メーカーも、Pixel対抗に本腰を入れ始めており、競争は激化しそうだ。

ハード、ソフト、AIに磨きをかけたPixel 8シリーズ

 Pixel 8/8 Proは、Pixelシリーズのフラグシップモデルとして、ハード、ソフト、AIの全てに磨きをかけてきた。Pixel 8はディスプレイサイズを0.1型小さくしており、縦横の寸法もコンパクトに仕上げた。スタンダードモデルとProのサイズ差が小さかった前モデルと比べ、機種ごとの違いを明確にした格好だ。横幅は70.8mmで、「Pixel 7」の73.2mmから2.4mmも細くなっている。これに対し、Pixel 8 Proは大画面を好むユーザー向けに、サイズはほぼそのまま。代わりに、ディスプレイをフラット化している。

Pixel 8 左のPixel 7と比べると、一目で分かるコンパクトさに

 GoogleでPixelシリーズの開発を担当する製品管理担当 シニアディレクターのピーター・プルナスキー氏は、新モデルのサイズを決定するにあたり、「さまざまなマーケットリサーチを行った」と語る。中でも、「日本は本当に厳しい市場で、とても要求が高い。そういったところからフィードバックをいただいた」(同)といい、日本でのユーザーの声を重視したことを示唆する。「デザインの効率を上げ、フォームファクターがよりコンパクトになった」(同)一方で、バッテリー容量はPixel 7より上がっている。

【訂正:2023年10月8日10時10分 初出時、「バッテリー容量はPixel 8より上がっている」としていましたが、正しくは「バッテリー容量はPixel 7より上がっている」です。おわびして訂正いたします。】

Pixel 8 ユーザーからのフィードバックを踏まえ、コンパクト化に踏み切ったと語るプルナスキー氏

 Googleは、2023年7月にフォルダブルスマホの「Pixel Fold」も投入しており、その中でバランスを取ってPixel 8をより小型化したと見ることもできる。これに対し、Proがつく上位モデルを購入するユーザーは、「バッテリーも含めてより大きなサイズを好む」(同)傾向がある。フラットディスプレイを採用しつつも、サイズを維持したのはそのためだ。背面のカメラバーなど、特徴的な部分は受け継ぎつつ、よりハードウェアとしての完成度を高めたといえる。

Pixel 8 Pixel 8 Proは、フラットディスプレイを採用。リフレッシュレートは1〜120Hzで可変する

 2機種共通で、プロセッサに自社開発のTensor G3を採用。CPU、GPU、ISP(Image Signal Processor)などを刷新した他、AIの処理に特化したTPU(Tensor Processing Unit)の性能を大きく向上させている。Googleによると、同じ時間内に処理できる機械学習モデルは、初代Tensor G1を搭載したPixel 6シリーズの2倍に達しているという。こうした性能の高さを生かし、Pixel 8シリーズでは、得意のAI機能に磨きをかけた。中でも注目したいのが、写真や動画の「編集」だ。

Pixel 8 2機種とも、プロセッサに最新のTensor G3を採用する

 1つ目が、集合写真で撮った人物の顔を入れ替えてしまう「ベストテイク」。複数枚撮った中から、文字通りのベストテイクを個別に選ぶことができ、それを端末側で瞬時に合成する機能だ。人物の検出や画像処理などにAIが使われている。2つ目が、「音声消しゴムマジック」。こちらは、消しゴムマジックの名が使われていることからも分かるように、音声を消し去る機能。動画に入ってしまった風や水の音、雑踏のガヤガヤとしたノイズを簡単な操作で低減できる。

Pixel 8 集合写真の顔を一人一人修正していくことが可能なベストテイク
Pixel 8 消しゴムマジックを動画の音声に拡大した音声消しゴムマジックも、AIの処理を生かした機能だ

 3つ目が「編集マジック」で、これは文字通り、写真の編集を魔法のように簡単に行う機能。消しゴムマジックを拡張したような形で、集合写真の中の特定の人を移動させ、その背景を生成AIで書き足したり、空の色を変えたりと、加工にも近い編集を簡単にこなせる。いずれもTensor G3の処理能力を生かしており、Pixel 8/8 Proが対応する。最適化をすれば、他のTensorを搭載したPixelでも利用可能になりそうだが、処理速度やアップデートを待たずに使える対応の早さはPixel 8シリーズの売りといえる。

Pixel 8 生成AIなども組み合わせて、編集を簡単にする編集マジックも、Pixel 8/8 Proからの新機能になる
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