「iPhone 15/15 Pro」で変わるAppleのラインアップ戦略 無印モデルの“復権”なるか石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年09月16日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 Appleは「iPhone 11」シリーズ以降、無印のスタンダードモデルとは別に、名称に「Pro」がついたプロモデルを用意している。「iPhone 12」シリーズでは、スタンダードモデルを拡大し、小型版の「iPhone 12 mini」を発売した。

 2022年のiPhone 14ではこの「mini」を廃止し、真逆のベクトルともいえる大型版の「iPhone 14 Plus」を導入している。スタンダードモデルとプロモデルの2系統にそれぞれ大小のサイズを用意している点は、9月22日に発売される「iPhone 15」シリーズも同じだ。

 一方で、年によって、スタンダードモデルとプロモデルの位置付けはやや変化している。特に大きかったのが、2022年の「iPhone 14」。それ以前はシリーズ通して最新のプロセッサを採用していたが、iPhone 14やiPhone 14 Plusは、1年前の「iPhone 13 Pro」や「iPhone 13 Pro Max」に搭載されていた「A15 Bionic」を引き継いでいた。結果として、「iPhone 13」からの進化が小幅にとどまってしまったのも事実だ。

 では、Appleはこの課題をiPhone 15でどう克服したのか。間もなく発売を迎えるiPhone 15から、Appleのラインアップ戦略を読み解いていきたい。

iPhone 15
iPhone 15 Appleは、9月13日未明にiPhone 15シリーズを発表した。チタンを採用したiPhone 15 Pro/15 Pro Max(上)だけでなく、iPhone 15/15 Plus(下)もダイナミックアイランドや4800万画素カメラを搭載するなど、進化の幅が大きい

変わるスタンダードモデルとプロモデルの距離感、プロセッサは前年のプロを踏襲

 iPhone 11でスタンダードモデルとプロモデルの2系統に分かれたiPhoneだが、iPhone 13までは、プロセッサを共通化し、処理能力には大きな差をつけていなかった。それ以前にさかのぼると、「iPhone X」を導入した際にも、ホームボタンを残した「iPhone 8」や「iPhone 8 Plus」に同じ「A11 Bionic」を採用している。この方向性が変わったのは、2022年のこと。iPhone 14では、スタンダードモデルとプロモデルでプロセッサを分け、機能に差をつけるようになった。

iPhone 15 22年に登場したiPhone 14/14 Plusは、21年のiPhone 13 Pro/13 Pro Maxと同型のプロセッサを搭載していた。その他のスペックも、前年のモデルを踏襲している部分が多い

 iPhone 14、14 Plusに搭載されていたのが、iPhone 13 ProやiPhone 13 Pro Maxと同じA15 Bionic。プロモデル用のA15 Bionicは、スタンダードモデル用のそれよりGPUの数が1つ多く、処理能力も上回っていたが、それをiPhone 14、14 Plusに引き継いだ格好だ。GPUが1つ増えたことで「iPhone 13」や「iPhone 13 mini」よりグラフィックス性能はわずかに向上したものの、これまでよりも世代間の差が小さくなったのも事実だ。

 Appleから多くは語られていないが、プロセッサ側の製造プロセスの微細化が大きくは進んでおらず、世代を変えたところで劇的な処理能力の向上は見込めなかったのは大きな背景の1つだろう。実際、「iPhone 14 Pro」や「iPhone 14 Pro Max」に採用されていた「A16 Bionic」は型番こそ刷新されてはいたものの、どちらかといえば、単純な処理能力の向上ではなく、付加機能に重きが置かれていた。

 アップデートの中心は、「ダイナミックアイランド」のスムーズな動作を実現するためのアンチエリアリング処理や、常時表示ディスプレイを制御するためのディスプレイコントローラー、新たに搭載された4800万画素カメラを処理するためのISP(Image Signal Processor)。単なる性能向上ではなく、プロモデルを実現するための技術要素を詰め込み、より細かくカスタマイズしたプロセッサだったといえる。

iPhone 15 ダイナミックアイランドを筆頭に、A16 Bionicの付加性能で実現している機能は多い

 ただ、結果としてiPhone 14が新味に欠けていたのも事実だ。ディスプレイサイズを6.7型に拡大したiPhone 14 Plusを投入し、ラインアップの構成で目新しさを出していた一方で、iPhone 14そのもののマイナーチェンジ感は否めなかった。実際、こうした点がユーザーにも伝わったのか、発売当初からプロモデルに人気が集中。工場を構える中国の“ゼロコロナ政策”によるロックダウンなども重なり、iPhone 14 Pro/14 Pro Maxは2022年いっぱいは品薄状態が続いていた。そのような状況にもかかわらず、iPhone 14や14 Plusは、予約なしでも入手できていた。

iPhone 15 iPhone 14シリーズはプロモデルに人気が集中。供給不足も相まって、一時は品薄で入手が困難になった

 iPhone 15シリーズでもその戦略は踏襲されている。一方で、iPhone 15シリーズのスタンダードモデルに“降りてきた”のは、iPhone 14 Proや14 Pro MaxのA16 Bionic。GPUが1コア増えただけの2022年とは異なり、A16 Bionicの搭載でできることは多くなっている。

 ダイナミックアイランドや4800万画素カメラの採用は、その代表例だ。表示部分やメインカメラに関しては、プロモデルに近づいたといえる。iPhone 14、14 Plusから進化した点も多く、カラーリングの方法を変更したことも相まって、モデルチェンジ感を強く打ち出せたように見える。あくまで1世代前のプロセッサだが、処理能力以外での差分が大きかったため、それがスタンダードモデルの魅力に直結している。過去のプロセッサを流用する戦略が、1世代を経て軌道に乗り始めたというわけだ。

iPhone 15 iPhone 15、15 Plusは、いずれも2022年のプロモデルと同じA16 Bionicを採用する
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