Appleは、他のスマートフォンメーカーと異なり、ミッドレンジモデルやエントリーモデルを都度、開発するのではなく、新モデル発売と同時に一部残した過去のモデルを値下げし、継続販売している。1つのモデルのライフサイクルを長くすることで、コストを下げながら、ハイエンドモデルでバリエーションをつけているというわけだ。カメラやディスプレイなどのスペックを抑え、低価格で販売する「iPhone SE」は例外的な存在。その意味で、iPhone 15シリーズの発売に伴い、何が残り、何が消えるのかをチェックするのも重要だ。
スタンダードモデルが2022年のプロモデル並みに進化した結果、継続販売するラインアップも整理されている。まず、iPhone 14シリーズはプロモデルを終売にして、その役割をiPhone 15やiPhone 15 Plusが担うようになった。iPhone 15の799ドルは、iPhone 14 Pro発売時の999ドルより200ドル安い。仮にiPhone 14 Proを値下げし、継続販売していると、こことバッティングしてしまう恐れがある。その意味で、iPhone 15は望遠カメラなどの一部機能をiPhone 14 Pro、14 Pro Maxから削りつつ、値下げした端末と見ることもできる。
iPhone 14シリーズは、スタンダードモデルの2機種を値下げし、継続販売している。ただ、機能差の少ないiPhone 13がiPhone 14より100ドル安い599ドルで残っているため、これがiPhone 14販売の足かせになりそうだ。iPhone 13のスタンダードモデルからは、iPhone 13 miniが消えてしまい、小型モデルが全ラインアップからなくなっている。継続販売するiPhone 14との差別化にもなるため、残されたのがiPhone 13だけだったのは少々意外だった。ただし、これはコンパクトモデルとして人気の高いiPhone SEが、iPhone 13 miniの形状で復活する布石の可能性もある。
機能向上や部材費の高騰による価格上昇もうわさされている中、ふたを開けてみると、販売価格は2022年を維持することができた。スタンダードモデルは799ドルから、プロモデルは999ドルからで、大幅な値上げにならなかったのは朗報といえる。
一方で、細かな点では、iPhone 15 Pro Maxから、これまであった128GBがなくなっている。同容量で比較すると、ドル建てて価格は据え置き、円建てで1万円アップという価格だが、ストレージ容量を抑えた最小構成での購入を検討していた人にとっては実質的な値上げと言っていい。iPhone 15 Pro Maxは望遠カメラを刷新するなど、プロモデルの中でも進化の幅が大きかった。そのコストを補うため、価格を維持しながら128GB版を残すのは難しかったのかもしれない。
ただし、上記は為替の影響を排除するため、ドル建てでの話をしている。日本での販売価格は、残念ながらこの1年で進んだ円安によって値上げになってしまった。現状の為替レートをダイレクトに反映したわけではなく、Appleの“企業努力”は垣間見えるものの、スタンダードモデルは5000円、プロモデルは1万円、iPhone 14シリーズの発売時より高くなっている。
ハイエンドモデルの販売がふるわないなか、この値上げがどう影響するかは未知数といえる。プロモデルに人気が集中した2022年とは異なり、価格の割に進化の幅が大きかったスタンダードモデルが復権する可能性もありそうだ。
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