スマホやドローンに無線で電力伝送 充電やバッテリー交換が不要に 京セラが新技術

» 2023年10月11日 21時15分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 京セラは10月11日、スマートフォンやドローンなどの移動体に対し、電力をワイヤレスで伝送できるようにする基礎技術を開発したと発表した。従来、手間となる充電やバッテリー交換が不要になるという。京セラは今回発表した独自技術の研究開発を急ぐ。

京セラ スマホ ドローン 充電 電力伝送 技術 京セラの発表概要

 基礎技術は、電波(マイクロ波)の放射を集中させる技術(ビームフォーミング技術)と、電波の伝搬環境に応じてリアルタイムに電波放射を追従制御する技術(アダプティブアレー技術)を融合し、5.7GHz帯における「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」を実現するものだ。送信時の出力数は32Wで、伝送可能な距離は最大で10mを想定するという。

 京セラが、通信基地局事業で長きに渡り培ってきた電波の制御技術を活用し、「高速追従する電波制御」と「高精度な電波制御」を同時に両立させて、電波をコントロールすることが可能という。

 高速追従する電波制御とは、電波を放射したい方向へコントロールするビームフォーミング技術により、電波エネルギーを集中制御することを指す。また、電波の伝搬環境に応じた指向性制御技術(アダプティブアレー技術)を適用し、電波制御を高速追従することにより、移動体にも安定的に電力供給できるという。この技術は、アンテナから放射される電波を電気的に制御するため、機械的な消耗や故障のリスクを排除できるという。

京セラ スマホ ドローン 充電 電力伝送 技術 高速追従する電波制御
京セラ スマホ ドローン 充電 電力伝送 技術 マルチアンテナによるビームフォーミング技術とアダプティブアレー技術を適用したという

 高精度な電波制御とは、壁などの反射を効率的に利用し、ビームフォーミング技術と同時に電波を放射したくない方向へ電波放射を抑えるヌルステアリング技術を活用することで、電波の指向性を高精度に制御することを指す。また、電波放射を抑える範囲をコントロールする独自のヌル広角化技術で、人体や他の無線システムに影響を及ぼさないよう電波放射を制御することが可能という。

京セラ スマホ ドローン 充電 電力伝送 技術 高精度な電波制御
京セラ スマホ ドローン 充電 電力伝送 技術 人体や他の無線システムに影響が出ないように制御できるという

 その他、ビームフォーミング技術をはじめとする独自の電波制御技術と、交流のマイクロ波から直流電流へ変換整流する独自のレクテナ回路技術の組み合わせで、電波が持つエネルギーを高効率に電力へ変換することも可能だという。

京セラ スマホ ドローン 充電 電力伝送 技術 電波が持つエネルギーを高効率に電力へ変換することも可能だという

 京セラは、基礎技術の想定用途に「工場内センサーやIoT機器などの情報通信機器」「PCや携帯電話などのモバイル機器」「ドローンなどの小型モビリティ」を挙げており、電源のワイヤレス化への期待、センサーの省スペース化、ドローンなどの移動体に適したワイヤレス電力伝送などのニーズに応えるとしている。合わせて、基礎技術を10月17日〜20日にかけて幕張メッセで開催される「CEATEC 2023」に出展し、デモンストレーションを行う予定。

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