Tensor G3の搭載でAIの処理能力を上げたことで、Pixel 8/8 Proにはさまざまな新機能が加わっている。AIといっても結局はソフトウェアの処理になるため、アップデートで過去のPixelが対応する可能性もあるが、現時点で利用できるのはPixel 8/8 Proだけ。過去のプロセッサで動作させるには最適化が必要になる上、対応できたとしても動作速度や精度などに違いが出ることもある。現状、その性能を引き出せるのはTensor G3を搭載したPixel 8/8 Proと考えておけばいいだろう。
その1つが、消しゴムマジックを拡張した編集マジックだ。消しゴムマジックは、被写体に写り込んでしまったモノや人を、あたかも最初からいなかったかのように消すことができる機能。ただし、背景が複雑だと、いかにも何かを消したような痕跡が残ってしまっていた。編集マジックでも同様に写り込みを消すことは可能だが、消した後、生成AIを活用しているのが大きな違いになる。実際に、いくつかの写真を編集マジックで加工してみたのが、以下の作例だ。
上掲の写真をご覧いただければ分かるように、男性(ITmedia Mobileの田中聡編集長)が消えた跡が非常に分かりづらい。田中氏を消した後、生成AIで足りない部分を書き込んでいるためだ。背景がシンプルな構図はもちろんだが、人物の背後に像が写り込んでいるようなケースでも、うまい具合にごまかして最初から人がいなかったかのように仕上げている。同じことをPixel 7の消しゴムマジックでやると、処理の雑さが目につく。
複雑なテクニックを駆使したわけではなく、操作も簡単だった。田中氏を指で適当に囲むと、輪郭が認識される。後は「消去」のボタンをタップするだけ。すると、生成中という文字が表示され、十数秒で背景が生成され、田中氏が最初からいなかったかのような写真が出来上がる。消しゴムマジックより重い処理をしているためか、時間はかかるものの、仕上がりの自然さは編集マジックに軍配が上がる。SNSでシェアしても、最初から人がいたと気付かない人は多いだろう。その意味で、編集マジックは消しゴムマジック以上に実用的だ。
また、“消しゴム”ではなく“編集”と広い言葉が使われていることからも分かるように、編集マジックは単に写り込みを消すためだけの機能ではない。被写体を自動で認識して、空の色を変えたり、背景をボカシてポートレートに仕上げたりと、さまざまな編集を提案してくれる。Google フォトで写真を開き、左下の編集マジックボタンをタップした後、中央のボタンを押すと選択肢が表示される。ユーザーは、ここから必要な編集を選ぶだけ。後は生成AIで必要な処理が加えられる。
これまでのPixelにも撮影などにAIはフル活用されていたが、ユーザーが主体的に行う編集と生成AIが組み合わさることで、その恩恵がさらに分かりやすくなった。Tensor G3の処理能力や、それを生かしたAIの機能を、端末の売りとしてうまく落とし込んでいるような印象だ。消しゴムマジック以上にインパクトも大きく、Pixelの新たな代名詞になりそうな予感がする。
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