「Pixel 8/8 Pro」を試して分かった、カメラ×AIの驚くべき進化 値上げでもハイエンドの有力候補に(3/3 ページ)

» 2023年10月12日 02時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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「音声消しゴムマジック」や「ベストテイク」も便利、AI強化で利便性が大きく上がった新Pixel

 新機能のベストテイクも、広い意味で編集に含まれるPixel 8/8 Proならではの機能だ。これは、集合写真に写った人物の顔を差し替えるための機能。前後の写真から、最適な差し替え候補を探し出し、タップするだけで自然に合成してくれるのが特徴だ。集合写真で、たまたま1人が目を閉じてしまっていたり、気を抜いた瞬間の顔になってしまっていたりすることは多いだろう。全員がバシッと決め顔でそろうのはむしろ珍しい。この失敗した写真を、AIの力で何とかしてしまおうというのがベストテイクだ。

 集合写真を撮り、編集をタップした後にベストテイクを呼び出すと、自動的に前後の写真が検索され、差し替え可能な顔の候補が人物別に表示される。人物は、一人一人選択が可能。1人は今の開いている写真、もう1人は2つ前の写真、さらにもう1人は3つ後の写真といった具合に、複数の写真からベストな1枚を作り出せる。操作は簡単で、もともと近い構図の写真を引っ張ってきていることもあり、仕上がりも自然。編集マジックと同様、これもAIで加工したと言われなければ、気付かれないレベルの写真が出来上がる。

Pixel 8 1人変顔で写ってしまった筆者。デジタルタトゥーとして残らないか心配だ
Pixel 8 そこでベストテイクの出番。よくよく見ると変顔ばかりが抽出されているようにも見えるが、1つマシな表情があったのでこれをチョイスした
Pixel 8 表情が入れ替わった。合成で作っているとは思えないクオリティーだ

 ただし、ベストな顔が提示されるかと思いきや、選択肢が全て“変顔”というケースもあった。AIが筆者渾身(こんしん)の変顔を素の顔だと認識してしまった可能性はあるが、それはそれで屈辱的だ(笑)。また、顔を修正したところ、髪の毛の部分がズバッとカットされ、頭のボリュームが微妙に小さくなってしまうケースも。別のパターンでは人数が多すぎると、全員の顔を認識しないことがあった。頻発したわけではないが、撮影した条件によっては、完璧な修正ができないこともある。

Pixel 8 もう少しまともな表情の写真も撮ったのですが……。ダイナミックに表情を変えすぎてしまったせいか、AIが筆者のデフォルトを変顔だと認識してしまったようだ

 もう1つの編集機能が、音声消しゴムマジックだ。動画内の音声を自動で認識して、ボリュームを下げることができる。AIが動画内のサウンドを特定して、声やノイズ、風といった形で音量を変更したい音を提示してくれるため、編集が簡単にできる。例えば、以下のスクリーンショットは渋谷のスクランブル交差点で撮った動画のもの。周囲に流れている音楽や、撮影者の声、周囲の声が検知され、選択肢として提示されている。ここで音量を変更したい声を選び、スライダーで音量を調整する。-100にすると、スクランブル交差点で流れていた音楽が、完全に聞こえなくなった。音楽をゼロにした動画は、以下に掲載しておく。

Pixel 8Pixel 8 動画内の音声を認識。調整できる音の候補が提示される
周囲の音楽だけを消したところ、筆者と被写体の会話が聞こえやすくなった

 また、音楽と声を-100にすると、撮影者の声まで消え、被写体が1人語りしているような動画になる。一方で、周囲の声をゼロにすると、交差点で聞こえてきた人の小さな声だけでなく、被写体の声までかなり小さくなってしまった。シチュエーションや消去する対象によっては、万能でないことが分かる。

音楽に加えて音を-100にすると、撮影者の声まで聞こえなくなる。被写体が1人語りしているような動画に仕上がった。ただし、微妙なノイズや音声を処理したような不自然さは残る

 他にも何度か試したが、動画を撮りながら撮影者が被写体に話しかけるシーンで雑踏の音を消すのは、あまり得意ではないようだ。逆に、Vlogのように1人でしゃべっているようなシーンでは、周りの音だけを消すことが可能。使いどころは選ぶが、音楽が入ってしまい、YouTubeなどに上げづらいといったときに活躍しそうな機能といえる。

 AIの力を生かした編集に焦点が当たったPixel 8/8 Proだが、Pixelシリーズで好評のカメラ機能は健在。先に挙げたように、Pixel 8 Proは超広角カメラの画質が大きく向上しているが、得意の5倍ズームもレンズが明るくなり、よりクッキリした写真が撮れるようになっている。インパクトが大きいのは、超解像ズームで30倍まで寄ったときの写真。補正が強めにかかる分、人物描写はやや苦手だったが、Pixel 8 Proのそれはややソフトフォーカス気味ながら表情までしっかり映し出しており、解像感もまずまず。等倍で使うのであれば、十分なクオリティーに仕上がる。

Pixel 8
Pixel 8
Pixel 8
Pixel 8
Pixel 8 それぞれ上から0.5倍、1倍、2倍、5倍、30倍で撮った写真。画角をここまで大胆に切り替えることができる。30倍は超解像ズームだが、顔がはっきり写っていて引きで見る分には十分なクオリティーといえる

 画面内指紋認証の範囲が狭く、読み取りづらい点はPixel 8/8 Proでも相変わらずだが、顔認証の適用範囲が広がっており、アプリのログインや購入などにも適用できるようになっているのはうれしい改善点だ。シングルカメラによる顔認証ながら、AIによって精度を高めることができたのもTensor G3のおかげ。地味ながら、その性能を使い勝手の向上にも利用していることが分かる。円安が反映された結果、Pixel 7/7 Proに比べて高価格化してしまったPixel 8/8 Proだが、AIの活用も一段進み、ハードウェアとしての仕上がりもよくなった。Androidのハイエンドモデルを選ぶ際の、有力な候補になりそうだ。

Pixel 8 顔認証が強化され、画面ロック解除以外にも利用できるようになった。これもTensor G3のおかげだ
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