世界を変える5G

ドコモがエンタメ領域で「ミリ波」を訴求する狙い 「実際に使い切れていないことが最大のデメリット」(1/2 ページ)

» 2023年10月13日 22時11分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 NTTドコモは10月14日と15日に一般向けの体験イベント「LOST ANIMAL PLANET XR絶滅動物園」を東京スカイツリー(スカイアリーナ)で開催する。エドコモがエンタメ領域で5Gのミリ波をどのように活用するのかを示すのが狙い。入場料は無料で、来場者はスマートフォンやスマートデバイスを用いたコンテンツを体験可能だ。コンテンツの内容は次の通り。

docomo ドコモ 5G ドコモが「LOST ANIMAL PLANET XR絶滅動物園」を開催する

 「ティラノサウルスvsトリケラトプスAR観戦」はいち早くコンテンツをダウンロードし、ARを活用した高画質な映像を体験できる内容。従来のLTEは約50MBくらいのコンテンツでなければダウンロードに時間がかかるところ、5G(ミリ波、Sub-6)では200MB以上の大容量コンテンツを素早くダウンロードできる点をアピールしたいという。

docomo ドコモ 5G 「ティラノサウルスvsトリケラトプスAR観戦」のコンテンツをスマートフォンで体験する様子

 「マンモス救出大作戦」はミリ波とクラウドレンダリングでリアルタイムに生成した高精細CG(映像)を、複数台の端末に同時配信する。複数人が同時に氷漬けのマンモスを救出できるという内容だ。その際、複数人の位置情報などの情報をサーバにミリ波でアップロードし、クラウドレンダリングでそれらの情報と映像を統合。そのデータを端末がクラウドからダウンロードする際にもミリ波が活用されるという。ドコモが10月13日午前の時間帯に計測した結果は下りが2Gbpsを超え、上りが400Mbps超えだった。

docomo ドコモ 5G 手元のスマートフォンで他のユーザーの動きやターゲットとなるマンモスを確認できる
docomo ドコモ 5G ドコモによる速度計測結果

 このコンテンツに関連する説明の中で、ミリ波を吹く基地局アンテナが報道陣に公開された。イベント会場となるスカイアリーナ付近の建物の屋上に設置された基地局アンテナはNR-DC(New Radio-Dual Connectivity)でSub-6とミリ波を同時に使用し、より高速に通信できるようにしたという。

docomo ドコモ 5G Sub-6とミリ波で高速化しているという

 「タッチ トリケラトプス」は2023年現在は触れない絶滅生物に触れたような感覚を模擬体験できる。触覚を複数人で共有できる「FEEL TECH」と呼ばれるデバイスを活用し、ディスプレイに表示される映像に合わせてFEEL TECHに振動が伝わり、実際に絶滅した恐竜に触っているような感覚となる。デバイスはドコモ、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project、名古屋工業大学大学院工学研究科Haptics Labが開発した。

docomo ドコモ 5G 「タッチ トリケラトプス」。振動が手に伝わる
docomo ドコモ 5G FEEL TECHは球体を半分に割ったようなデバイス

何が何でもミリ波ではなく、必要な場所に適切な機能と周波数で展開

 繰り返しにはなるが、今回のイベントは主に5Gのミリ波を活用している。ミリ波とは一体どのような電波なのだろうか。ドコモCSO(Chief Standardization Officer)の中村武宏氏が報道陣に対して説明した。

docomo ドコモ 5G ドコモCSO(Chief Standardization Officer)の中村武宏氏

 ドコモには5Gに関する大きく3つの周波数帯が割り当てられている。1つ目は転用周波数の700MHz帯と3.4GHz帯、3.5GHz帯。2つ目はSub-6の3.7GHz帯と4.5GHz帯。3つ目が今回のイベントで主に活用されるミリ波の28GHz帯だ。ドコモはこれらを活用し5Gの高度化を促進しているという。

docomo ドコモ 5G ドコモに割り当てられた周波数の一覧

 3Gから5Gへと通信の世代が進むに連れ、高速かつ大容量化の需要が高まり、周波数が高くなるとともに広帯域化を図っている。直進性の高さや広帯域性が特徴となるミリ波だが、伝搬損失と遮蔽損失が大きい。そのため、ドコモとしてはセル半径を小さくせざるを得ないという。

docomo ドコモ 5G ミリ波の特徴とデメリット

 ドコモのエリア図を見ても面的に広い地域において展開していくことはせず、必要に応じて“スポット”で展開している。業界では面ではなく点での展開、と評されることが多いのはこうした理由からだ。

docomo ドコモ 5G ドコモが公開しているエリアマップ。紫色の丸い部分がミリ波のスポットとなっている

 ではドコモとしてこのミリ波を含む5Gをどう捉えているのだろうか。

 中村氏によると、現状の5Gでは何が何でもミリ波活用という捉え方ではなく、必要とされる場所に適切な機能と周波数で展開する考えだという。「エリアを広げるなら伝搬損失が小さいローバンド(数百MHz)、ミリ波とローバンドの中間的な存在がミッドバンドでエリアカバーとパフォーマンスの両方を重視できる。ミリ波は「広範囲のエリアカバーには向かない反面、パフォーマンス向上に役立つ」(中村氏)ことから、狭域、閉域で高性能が要求されるエリアにおいてミリ波を展開していきたい、とのことだ。

 ではミリ波が必要なユースケースは何か。中村氏はトラフィック増加に対する周波数リソースの確保、XRや4K/8Kなどの高品質映像などのサービスに向く他、センシング用途への期待に応えられる点や、6Gでのサブテラヘルツ開拓に向けた足掛かりになる点を挙げている。

 「人口密集地では将来的にSub-6でも容量逼迫(ひっぱく)の恐れがあり、ミリ波が求められるシーンが増えると予想している。また、XRや4K/8Kなどの高品質映像などのサービスも普及し、さらなる高速化が求められる。ジョイントコミュニケーション&センシングという周波数をセンシングする技術開発が進んでおり、センシングの精度向上が見込まれる。こちらはすぐに実用化される予定はないが、将来性のある技術とされる。ミリ波よりも広い周波数帯域を利用可能なサブテラヘルツについては、ミリ波の社会的な実装が必要だと考えている」(中村氏)

docomo ドコモ 5G ミリ波がどのようなユースケースにおいて役立つのかを示す資料

 世界ではミリ波がホットスポット、スタジアム、イベント会場、インドアオフィス、都市部に利用されているという。

docomo ドコモ 5G ミリ波の活用例
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