ソニーが「Xperia 5 V」を大きく方向転換した理由 “小さいやつ”以上のストーリーをプラス(3/3 ページ)

» 2023年10月19日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ソニーは知っていてもXperiaは知らないという人は多い

―― 説明会や製品を紹介するサイトでも、サウンドを改めて訴求しています。以前からずっと継続してきた機能も紹介していますが、これをなぜでしょうか。

越智氏 狙いが若年層だと、今までそういったものを見たことがないと考えるべきだと思ったからです。メディアの方を通じて日常的にスマホを見ているのは、ちょっとテッキーな方で、その周りにいる人にどう伝えるか。テッキーな方はそのままテッキーに伝えてしまいがちですが(笑)、そこをうまく伝えるようにやっています。

 学生にアンケートを取ると、Xperiaのことを知らないという人は多い。ソニーは知っていてもリンクしていないのだと思います。iPhoneやGalaxyを知っていても、AppleやSamsungも怪しい。というような人を目の当たりにすると、分かっていたようなことももう一度やる必要があると思うようになります。これでいいやとなったら、どんどん廃れてしまいますからね。中身がないとそれをやってもダメですが、仕込みはできていましたから。

―― 実際、狙った層に響いているような実感はありますか。

越智氏 まだ発表されたばかりなので、もう少し待たなければなりません(※取材はXperia 5 V発売前に実施)。ただ、ジワジワとは広がっていて、今まで全然反応していなかった人がTwitterなどで反応していたりはします。それ以外の場所でどうかは、まだ知ることができません。売り始めてからであれば声を拾うことができるので、そこで確認していければと考えています。

―― その意味で言うと、Photography Proのユーザーインタフェース(UI)がちょっと難しいような気がします。カメラに慣れていないといけないので、あれもXperia 10シリーズに寄せていくべきなのではないでしょうか。

越智氏 1年ちょっと前のもの(企画)が今結実していますが、その後、入れきれなかったものもあります。今後は、今回の意見も参考にしながら改善しなければなりません。確かに、若年と言っても理系の男子ならいいのかもしれませんが、女性からはいろいろなステータスが画面に表示されてしまうと分からないといった声や、モードを変えてしまうと元に戻せないという声があります。

 Xperiaのカメラも標準では「Basic」に設定されているので、これ以外のモードに入らなければ他社と同じようなUIにはなっています。ただ、ちょっと触ると弊社のカメラ専用機のような「Auto」になっていろいろな設定項目が横に出てしまいます。この世代ではガイドを出していますが、戻せないというようなことが起きないようにしなければなりません。一方で、Photo Proは今まで縦UIがなかったので、さすがにそういったところは対応させていただきました。

 大学生と話をしていると、ここ(シャッターボタン)を押すとカメラがパッと立ち上がって撮れるのがすごく使いやすいと言われます。こういった顧客の対話は続けてきましたし、足りないものがあるのもその通りです。何をやればいいのかをためていきたい。日本メーカーで顧客も近くにいるので、すぐに聞きに行くことはできますからね。

―― ちなみに、「Cinematography Pro」はもっとハードルが高いと思います(笑)。カメラに詳しくても、「VENICE」を触ったことがある人は少ないのでは。

越智氏 気付かないと開かないようなアプリは、Xperia以外にもいっぱいあると思うので、載せてはいますし、あれを前から好きなクリエイターの方もいらっしゃいます。ただ、それもあって、あまりうたっていません。並列で言いすぎてしまうと、ターゲット層ではない人まで立ち上げてしまうので……。

Xperia 5に“小さいやつ”以上のストーリーがなかった

―― 今回、あまり小型ハイエンドというようなことをうたっていないのもそういったターゲットの変化があったからでしょうか。

越智氏 今は多様化していますからね。同じラインのiPhoneに無印とPlusがあるように、小さい方いい、大きい方がいいというのは人や年代によってさまざまです。年でマイナス10%ぐらい市場がシュリンクしているので、弊社はまず日本に照準を合わせ、このサイズがいいということになりました。今までは上(Xperia 1)があって下(Xperia 5)が小さいというような形でずっとやってきましたが、Xperia 5に“小さいやつ”以上のストーリーが何もありませんでした。そのために、まず顧客を変えています。

―― 逆に小型フラグシップのような理由で選んでいた人が離れてしまうリスクはなかったですか。

越智氏 そこはドキドキしていますが、ネットの書き込みを見る限り、今のところは大丈夫そうです。ずっとXperiaのことを見てくださっているお客さまには、「コアな機能は全てあって、あのイメージセンサーもちゃんと入っている」ということを分かっていただけています。

取材を終えて:訴求の仕方を変えたことで“顔立ち”が見えやすく

 メインとなるターゲット層を大きく変えたXperia 5 V。広告などのビジュアルに加え、端末のデザインやアプリなどの機能面でも、これまでのモデルから“路線変更”しているようだ。小型ハイエンドといっても、同モデルのディスプレイサイズは6.1型。世の中にはよりコンパクトな端末もある中、越智氏が語っていたように“顔立ち”が見えづらくなっていたのは事実だ。

 一方で、端末を冷静に見れば、価格や機能は、10万円台前半のスタンダードなハイエンドモデルとして通用する。Xperia 1シリーズとの差別化を図る意味でも、訴求の仕方を転換したのは正解だったように思える。ただ、より広い層に訴えるには、認知度を上げ、実機を手に取ってもらう重要性がこれまで以上に高まる。CMにNiziUを起用したことに加え、発表後に体験会などを積極的に実施してきたソニーだが、こうした取り組みは今後も継続していく必要がありそうだ。

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