ソフトバンクやNTTドコモがネットワークの品質向上についての説明会を行う一方で、楽天モバイルも一部メディアに対して説明の場を設けていた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年10月14日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
参入当初は「6000億円なんて、設備投資に対する金額が少なすぎる」と揶揄されていたが、その後、追加での資金調達も行ったことで、直近、公開されている基地局数は5万8343局、人口カバー率は98.7%となっている。当初は6年かけて全国にエリア展開する予定だったが、大幅に前倒ししたことで、98%を超える人口カバー率を達成したものの、設備投資に伴って、赤字も前倒しになり、巨額化してしまった格好だ。
ちなみに5G基地局も1万129局で、全47都道府県で展開中だ。
楽天モバイルのネットワークと言えば「完全仮想化」が注目されるが、一方で、Open RANにも積極的に対応している。ノキアを始め、韓国のKMW、アメリカのAirspan、台湾のDercomm、日本では5G設備としてNECが導入されている。
Opensignalの調査データでは、ソフトバンクがトップを獲得したことが話題だが、実は楽天モバイルもかなりの成績を収めている。
4Gでメインとなる周波数帯が1.7GHzに限られるため、ダウンロード速度は3社平均に負けるが、4Gアップロード速度、5Gにおけるダウンロードとアップロードにおいては、3社平均を上回る成果を残す。
実際のところ、電波の受信不可の割合は3社平均を上回るものの、楽天自社回線エリアが増えることで、安定性が増してきているというデータもある。また、レイテンシーやパケットロスなども改善がハッキリと見られている。
とりあえず、KDDIとのローミング協定を見直し、「最強プラン」を提供して顧客獲得が上向いているようだが、やはり楽天モバイルとしては、98.7%に甘んじることなく、地道に99.9%を目指して自社エリアを広げていく必要がありそうだ。
楽天モバイルには、3MHz幅でのプラチナバンドが割り当てられそうな勢いだが、今後、超絶に狭いプラチナバンドとメインの1.7GHzをうまいことブレンドして運用できるかが重要になってくるだろう。
また、顧客獲得が上手くいった場合、トラフィック量も大幅に増えてくるため、基地局のさらなる増設も検討しなくてはいけない日が来るかもしれない。
なんせ「最強プラン」として、データ使い放題をアピールしているのだから、速度制限を導入するとなれば、ゼロ円プラン廃止に近い反発を食らうことも予想されるだろう。
楽天モバイルとしては、急増するトラフィックを5Gに割り振られている周波数帯に振り分けたいだろうが、関東では衛星との干渉問題もあって難しい(一方で大阪や神戸の5Gエリアが爆速なのは、衛星の干渉を受けていないからとのこと)。
本来であれば、総務省は無理やり割り当てようとしている3MHz幅だけでなく、もっと楽天モバイルにつながりやすいミッドバンドを割り当てるべきだ。
本当に楽天モバイルに割り当てられるミッドバンドはもう残っていないのか。5Gに依存することなく、この先もトラフィックを収容できる周波数の割り当てを総務省は検討しつづけるべきだろう。
【訂正:2022年10月24日12時25分 初出時、楽天モバイルが取得する700MHz帯を「3GHz幅」としていましたが、正しくは「3MHz幅」です。おわびして訂正いたします。】
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