生成AIの処理も可能になった「Snapdragon 8 Gen 3」 スマホの競争軸は新たなステージに石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2023年10月28日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

写真拡張やイラスト生成、チャットbotに暗所動画と多彩な応用例を示す

 撮影した写真の“外側”を生成AIが描く「Photo Expansion」は、その代表例といえる。元になる写真をベースに、生成AIが写真を拡張する。処理は、オンデバイスで10秒強。写真をズームアウトするだけで簡単に周囲を生成できるUI(ユーザーインタフェース)も、非常に直感的。ユーザー側が生成AIであることを意識せず、スマホの画像編集アプリを扱う感覚で操作できる。

 プロンプトの入力といった、生成AIを継続利用する上でのハードルを取り払い、画像編集を拡張するという見せ方が面白い。Googleの「Pixel 8/8 Pro」に採用された「編集マジック」にアプローチは近いが、生成AIをスマホの一般的な機能に溶け込ませていた。Snapdragon 8 Gen 2までのプロセッサでも同様のことはできたが、クラウドの処理能力を使ったり、より時間がかかったりしていた。この処理が10秒程度で完結するのは、Snapdragon 8 Gen 3の処理能力があってこそといえる。

Snapdragon 8 Gen 3
Snapdragon 8 Gen 3
Snapdragon 8 Gen 3 本来写っていない写真の周囲を生成AIで書き足すPhoto Expansion

 実際、Qualcommは画像生成AIのStable DiffusionをAndroidスマホに最適化し、2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2023でメディアなどにその様子を披露していた。ただし、当時のプロセッサはSnapdragon 8 Gen 2。画像1枚を生成するのに、十数秒ほどかかり、ゆっくりとモザイクのようなノイズから画像が現れた。これに対し、Snapdragon 8 Gen 3では、画像の生成にかかる時間が1秒未満に短縮されている。NPUの処理能力は2倍だが、アプリケーションレイヤーでの差は10倍にも上る。

Snapdragon 8 Gen 3 Stable Diffusionによる描画も、前世代のチップから高速化している。Snapdragon 8 Gen 3では、1枚の生成にかかる時間がわずか1秒未満になった

 チャットbotも、生成AIを生かした分かりやすい実用例だ。AndroidにはGoogleアシスタントが搭載されているが、あの機能は情報をクラウドから取得している。一方で、オンデバイスAIは、その名の通り、端末上で処理が完結する。先に述べた通り、Snapdragon 8 Gen 3はMetaの大規模言語モデル(LLM)のLlama 2を動作させることが可能。ネットにユーザーが話した声や内容がアップロードされないため、プライバシーが守られるのと同時に、処理も速くなる。

Snapdragon 8 Gen 3 MetaのLlama 2に対応し、端末上で動作が完結するアシスタントを導入できるようになった。写真右上のピクトがフライトモードになっていることから分かるように、この会話は全て端末上で処理されている

 コンピュテーショナルフォトグラフィーとして撮影にもAIの処理が取り込まれているが、Snapdragon 8 Gen 3ほど性能が上がれば、動画にもこれを適用しやすくなる。デモを行った「Vlogger's View」は、インカメラで撮った自分の動画をリアルタイムで切り抜きつつ、アウトカメラの背景に合成する機能。画面を分割したり、枠の中の一部にインカメラの動画を合成したりするような機能はあるが、被写体を切り抜いて背景となじませる点が新しい。

Snapdragon 8 Gen 3 イン、アウト2つのカメラで同時に撮った動画をリアルタイムに合成するVlogger's View

 動画では、「Night Vision」もSnapdragon 8 Gen 3の処理能力を生かした機能といえる。これは、いわゆる夜景モードの動画版。ほぼ真っ暗な場所で撮った動画をリアルタイムに処理し、まるで暗視カメラのように明るい映像を記録できる。近い機能はOPPOが独自の画像処理チップを搭載して実現していたが、Snapdragon 8 Gen 3では、これをワンチップで行えるようになっている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月10日 更新
  1. iOS 27は「iPhone 11」以降で利用可能 iOS 26から据え置きで過去最大のiPhoneに対応 (2026年06月09日)
  2. あなたの街の「スマホ決済」キャンペーンまとめ【6月版】〜PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ (2026年06月08日)
  3. 「iOS 27」はアプリの起動速度が30%高速、最適な通信切り替えも iPhone 11やiPhone SE(第2世代)も対応 (2026年06月09日)
  4. JR東日本が2027年春から「二次元コード乗車券」を導入 近距離券売機での磁気券は順次廃止へ (2026年06月09日)
  5. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  6. 次世代の「Siri AI」発表 ユーザーを理解した応答が可能、表現力も向上 26年後半に英語から対応 (2026年06月09日)
  7. IIJmioのスマホ大特価セール 中古「iPhone SE(第3世代)」が4980円、「OPPO Reno11 A」が9980円など (2026年06月09日)
  8. 「それ、家じゃダメなの?」──スタバ長時間滞在に冷ややかな目 “スマホ操作”に“PCで仕事”も (2026年06月07日)
  9. WWDCで「折りたたみiPhone」に言及なしも、Apple版「大画面×AI」に期待できるワケ (2026年06月09日)
  10. 【ワークマン】1900円の「アーバンマルチストレージトート」 ポーチ代わりになるポケット付き (2026年06月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー