「ドコモの絵文字が見づらい問題」を考える なぜ、今のスマホにそぐわないのか(1/2 ページ)

» 2023年10月29日 10時00分 公開
[はやぽんITmedia]

 携帯電話を用いたコミュニケーションの手法の1つに「絵文字」がある。日本で生まれたこの絵文字は、GoogleとAppleによって標準化され、今ではさまざまなスマートフォンやPCでもでも閲覧できる。

 その一方、ドコモで販売されるAndroidスマートフォンには、いまだフィーチャーフォン時代の絵文字が表示される。しかしこれが今のスマートフォンにそぐわない側面が出ている。この絵文字問題について考察したい。

絵文字 ドコモのAndroidスマートフォンには、iモード時代と同じ絵文字が採用されている

今の絵文字は日本のものをベースにGoogleとAppleが標準化を提案

 絵文字を携帯電話に採用したのは、NTTドコモが最初だ。この後にDDI(現au)、J-フォン(現ソフトバンク)が採用する形で続く。絵文字にはシフトJISというコードが用いられていたが、互換性維持の空き領域に絵文字を割り当てたことから、キャリア間で互換性がなく、文字化けの要因となっていた。

 後に自動変換サービスも展開されたが、使い勝手がいいといえなかった。ドコモ、au、ソフトバンク間の3社で相互に変換する仕組みとしたため、今後の拡張性も乏しく、キャリアの新規参入によって変換先が増えることを想定したようなものではなかった。

 また、絵文字の自動変換は個人から個人へのキャリアメールには有効だったが、ブログや掲示板といった「不特定多数がさまざまな環境で閲覧する」場面には相性が悪いと当時から指摘されていた。

 これを変えたのがiPhoneだ。以前からキャリアの携帯電話からスマートフォンやPCにメールを送ると、一部の絵文字がうまく表示できないことが指摘されていた。これはもちろんiPhoneでも同じことが指摘された。

絵文字 iPhone 3Gは発売当初絵文字に非対応だったが、日本向けのみソフトウェアアップデートにて対応した。

 そこで、日本生まれの絵文字を2009年2月にGoogleとAppleが共同でUnicode化しようとISO(国際標準化機構)に提案した。両者はコミュニケーションの幅を広げられることを目的とし、当時最も多種多様な表現ができた日本の絵文字をそのままUnicodeとし、グローバル標準のものとして使用することを提案した。

 幾つかの修正や提案が加えられて、程なくして絵文字の標準化は進んだ。今でも絵文字として追加されるオブジェクトは増えており、よりバラエティーに富んだコミュニケーションを可能にしている。近年では肌の色を自分の近い色に変更できるようになるなど、欧米の声を反映させたアップデートも続いている。

 このUnicode化によって、キャリア各社の絵文字表示の互換性が向上した。ドコモとauでは「絵文字をドコモ側に寄せる」という表示の共通化も行い、2014年にはUnicodeに対応したドコモ/au共通絵文字となって利便性も向上した。

絵文字 ドコモとauは絵文字の共通化を行って利便性向上を目指した

 その一方で、Unicodeに登録される絵文字も増加し、最新のドコモ/au共通絵文字でもうまく表示できないものも増えてきた。そのため、2017年ごろから日本で発売されるスマートフォンもグローバル標準の絵文字を主体としたものへ移行していった。こちらの方がスマートフォンで表示する上でも表示化けのリスクが少なく、コストも抑えられる形となった。

 背景にはSNSの普及や、共通絵文字を利用できないiPhoneが大きく売り上げを伸ばしたことも考えられる。

ドコモの絵文字が使いにくい?

 これらの流れに対してドコモは異なった。ドコモではiPhoneの取り扱いが遅かったこともあり、同社が取り扱うAndroidスマートフォンはかなり「ガラスマ色」が強いものだった。ワンセグ、おサイフ、赤外線といった数々の独自機能が残された中で、従来の絵文字を表示する機能も残される形となった。

 ドコモのAndroidスマートフォンでは、ドコモ/au共通絵文字に極力変換して表示する機能が標準で備わっており、この機能が消費者を困惑させている要因となっている。

 この機能は現行のAndroid スマートフォンにも搭載されており、長年続くアイデンティティーのようになっている。

 しかし利用者の評価はあまりよくない。この「絵文字問題」は一部のコアユーザーが指摘するようなものではなく、Yahoo!知恵袋などでもドコモの絵文字に対しての疑問や意見のスレッドが立ち上がるなど、一般利用者の関心も消して低いものではない。

絵文字 Yahoo!知恵袋でも、ドコモ絵文字の見づらさを指摘する声が挙がっている

 筆者も、ダークモードで利用した際に絵文字が見づらいことに違和感を覚えた。また、グローバル標準の絵文字の中に無理やり合致するものを変換して表示しているので、絵文字の並びにもちぐはぐな印象が見られる。どこか統一感がないのだ。

絵文字 ドコモの端末でダークモードの状態で絵文字を利用すると、特に青い文字の視認性がよくないことが分かる

 また、スマートフォン時代に無理やり旧来の絵文字を表示していると、「自分のスマートフォンで表示されている絵文字が他の利用者にどのように表示されているのかが分からない」点も不安要素といえる。

 ドコモのAndroidスマートフォンで表示されている絵文字が、送った先で、想定したものとは別の絵文字として表示される可能性も十分にあり得るのだ。

絵文字
絵文字 ドコモの端末(上)とそれ以外の端末(下)における絵文字表示の違い。ドコモでは「ドコモ/au共通絵文字」に割り当てのある絵文字は変換されるため、複数のデザインが入り交じる結果となる
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