近年のスマートフォンを見ていると、どこか以前に比べて物足りなさを感じることがある。ある意味「つまらない」とも表現できるが、そのようになっていった理由はなぜなのかを考えた。
スマートフォンにワクワクさせられた時期を振り返ると、やはり10年くらい前くらいになるだろう。手のひらに収まる小さな端末で、PC並みにあらゆることができるようになった頃だ。それに伴い、端末の形がガラッと変わった。それ以前はNokiaやBlackBerryをはじめとしたキーボードとボタンによる操作のものが多く、どちらかといえばビジネスパーソン向けの製品だった。
iPhoneの登場によって、「タップ」「スワイプ」「ピンチイン/アウト」といった新たな操作方法が定義された。これは後のAndroid端末も追従し、今のスマートフォンにおける「基本」ができた。
世界初のAndroid端末は2008年にHTCより発売された「HTC Dream」、日本初のAndroid端末は2009年にドコモより発売された「HTC HT-03A」だった。HT-03Aは「ケータイするGoogle」というキャッチコピーと共に販売されていた。
ここからの進化は早かった。2010年にSamsung Galaxy Sが発売。自社製プロセッサと当時としては大容量の512MBメモリを搭載した機種で、世界中で大ヒットを記録した。
グローバルスタンダードといわれたこの機種によって、同社は今に至るAndroid端末の覇者といえる地位を確立した。この端末は日本でも販売され、ドコモでは発売日の0時から販売した店舗もあったようだ。
この年にはレディー・ガガをコマーシャル起用したauが「未来に行くならAndroidを待て」というキャッチコピーで、大々的にAndroidスマートフォンの展開を始めた。
今もなお「メガネケース」という愛称で親しまれる「IS01」や、ガラケーの三種の神器と言われたおサイフケータイ、赤外線通信、ワンセグを備えたガラスマ初号機「IS03」が発売されるなど、国内メーカーも一気にAndroidスマートフォンへと歩みを進めた。
タッチパネルだけでなく。キーボードやテンキーを搭載した機種も展開され、ガラケーから移行中の過渡期ともいえる機種もいくつか存在していた。
また、国内メーカーでもARROWS(富士通)、AQUOS Phone(シャープ)、REGZA Phone(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)、DIGNO(京セラ)、MEDIAS(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)、ELUGA(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)、Xperia(ソニー・エリクソン)といったブランドが確立しはじめたのもこの頃だ(※社名は当時のもの)。
2011〜12年はスマートフォンの基本性能が大幅に向上した。プロセッサはマルチコアになり、第四世代通信(4G LTE)への対応で、固定回線並みの速度や容量が確保できた。画面も大型化して5型クラス、解像度もフルHDと高精細なものを搭載するなど。ハードウェアスペックを見ているだけでも1年どころか半年おきに「あの機能が」「この性能が!」と発表されるたびにワクワクしたものだ。
2013〜16年ごろには一種の成熟期に入った。アプリ動作の最適化やOSの64bit化などが進んだ。大きなものとしては中国メーカーが台頭し始めるころになり、コストパフォーマンスの高さでXiaomiの端末が知られるようになった。
指紋認証をはじめとした生体認証が当たり前になったのもこの頃で、2013年の「iPhone 5s」を皮切りに、2016年にはGalaxy、Xperia、AQUOSの国内シェアが強い機種では指紋センサーが搭載されるようになった。
2017年頃から、有機EL画面によるベゼルレス、カメラの複眼化によってスマートフォンは大きな進化を迎えた。iPhone Xが与えた「フル画面」の衝撃はすごいもので、2019年頃には、どこのメーカーも軒並みベゼルをそぎ落としたフルディスプレイを採用した。
2020年以降は5G通信対応と、折りたたみ端末の登場が大きなターニングポイントだ。今もさまざまな機種が登場するが、折りたたみ端末を除くと、大きなイノベーションは今のところ起こっていない。
特定分野においては技術的にも目を見張る点があるが、専門的なものが多く、ユーザー目線でワクワクさせるものが少ない。これがここ数年感じる「物足りなさ」につながっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.