近年のスマートフォンに「ワクワクしなくなった」理由(1/2 ページ)

» 2023年03月12日 08時00分 公開
[はやぽんITmedia]

 近年のスマートフォンを見ていると、どこか以前に比べて物足りなさを感じることがある。ある意味「つまらない」とも表現できるが、そのようになっていった理由はなぜなのかを考えた。

 スマートフォンにワクワクさせられた時期を振り返ると、やはり10年くらい前くらいになるだろう。手のひらに収まる小さな端末で、PC並みにあらゆることができるようになった頃だ。それに伴い、端末の形がガラッと変わった。それ以前はNokiaやBlackBerryをはじめとしたキーボードとボタンによる操作のものが多く、どちらかといえばビジネスパーソン向けの製品だった。

iPhone 端末の形を変えるイノベーション。タッチパネルが主体の操作系を具現化したiPhoneの存在は衝撃だった。日本では2008年にソフトバンク独占で販売された

 iPhoneの登場によって、「タップ」「スワイプ」「ピンチイン/アウト」といった新たな操作方法が定義された。これは後のAndroid端末も追従し、今のスマートフォンにおける「基本」ができた。

 世界初のAndroid端末は2008年にHTCより発売された「HTC Dream」、日本初のAndroid端末は2009年にドコモより発売された「HTC HT-03A」だった。HT-03Aは「ケータイするGoogle」というキャッチコピーと共に販売されていた。

HTC HT-03A HTC HT-03Aは日本でもコアユーザーを中心に支持された

 ここからの進化は早かった。2010年にSamsung Galaxy Sが発売。自社製プロセッサと当時としては大容量の512MBメモリを搭載した機種で、世界中で大ヒットを記録した。

 グローバルスタンダードといわれたこの機種によって、同社は今に至るAndroid端末の覇者といえる地位を確立した。この端末は日本でも販売され、ドコモでは発売日の0時から販売した店舗もあったようだ。

 この年にはレディー・ガガをコマーシャル起用したauが「未来に行くならAndroidを待て」というキャッチコピーで、大々的にAndroidスマートフォンの展開を始めた。

 今もなお「メガネケース」という愛称で親しまれる「IS01」や、ガラケーの三種の神器と言われたおサイフケータイ、赤外線通信、ワンセグを備えたガラスマ初号機「IS03」が発売されるなど、国内メーカーも一気にAndroidスマートフォンへと歩みを進めた。

 タッチパネルだけでなく。キーボードやテンキーを搭載した機種も展開され、ガラケーから移行中の過渡期ともいえる機種もいくつか存在していた。

IS03 IS03はガラスマというカテゴリーで話題となった。

 また、国内メーカーでもARROWS(富士通)、AQUOS Phone(シャープ)、REGZA Phone(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)、DIGNO(京セラ)、MEDIAS(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)、ELUGA(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)、Xperia(ソニー・エリクソン)といったブランドが確立しはじめたのもこの頃だ(※社名は当時のもの)。

 2011〜12年はスマートフォンの基本性能が大幅に向上した。プロセッサはマルチコアになり、第四世代通信(4G LTE)への対応で、固定回線並みの速度や容量が確保できた。画面も大型化して5型クラス、解像度もフルHDと高精細なものを搭載するなど。ハードウェアスペックを見ているだけでも1年どころか半年おきに「あの機能が」「この性能が!」と発表されるたびにワクワクしたものだ。

Galaxy Note II 物理4コアのプロセッサ、LTEの超高速通信、指紋認証など、どこを見ても目を光らせるものばかりだった。画像はGalaxy Note II
Xperia Z1 画面の画質もフルHDになり、カメラ性能も良くなり、基本的なスペックも毎年大きく向上するものだった。年を重ねる度に「こんなこともできるようになったのか」と日々感心させられた。画像はXperia Z1シリーズ

 2013〜16年ごろには一種の成熟期に入った。アプリ動作の最適化やOSの64bit化などが進んだ。大きなものとしては中国メーカーが台頭し始めるころになり、コストパフォーマンスの高さでXiaomiの端末が知られるようになった。

 指紋認証をはじめとした生体認証が当たり前になったのもこの頃で、2013年の「iPhone 5s」を皮切りに、2016年にはGalaxy、Xperia、AQUOSの国内シェアが強い機種では指紋センサーが搭載されるようになった。

ARROWS NX F-04G ARROWS NX F-04Gは世界初の虹彩認証を採用していた
Xperia Z5 Premium 同じく世界初では、ソニーのXperia Z5 Premiumが4K解像度のディスプレイを採用するなど、技術的なアピールも強かった

 2017年頃から、有機EL画面によるベゼルレス、カメラの複眼化によってスマートフォンは大きな進化を迎えた。iPhone Xが与えた「フル画面」の衝撃はすごいもので、2019年頃には、どこのメーカーも軒並みベゼルをそぎ落としたフルディスプレイを採用した。

iPhone X iPhone Xのホームボタンを排除したデザインは業界を大きな影響を与えた
HUAWEI P20 Pro カメラについては2018年発売のHUAWEI P20 Proがゲームチェンジャーとなった。トリプルカメラのハードウェアはもちろん、夜景モードに関しては今や多くのスマートフォンに搭載される必須機能となった
Galaxy S10 画面内指紋認証の技術が実用化され、これを搭載した機種も出始めた。日本ではGalaxy S10シリーズが初採用機となった。画像は海外にて撮影したもの

 2020年以降は5G通信対応と、折りたたみ端末の登場が大きなターニングポイントだ。今もさまざまな機種が登場するが、折りたたみ端末を除くと、大きなイノベーションは今のところ起こっていない。

 特定分野においては技術的にも目を見張る点があるが、専門的なものが多く、ユーザー目線でワクワクさせるものが少ない。これがここ数年感じる「物足りなさ」につながっている。

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