近年のスマートフォンに「ワクワクしなくなった」理由(2/2 ページ)

» 2023年03月12日 08時00分 公開
[はやぽんITmedia]
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スマートフォンがつまらない理由は「端末とコンテンツの成熟」

 さて、スマートフォンがつまらないと感じるようになった理由は、どこのメーカーも機能面では足並みがそろってきたからだ。今のスマートフォンの形が確立されてからおおよそ15年が経過した。ハードウェアとして、道具として1つ完成されつつあるように思う。

 今のハイエンド機に関しては、高性能なプロセッサやカメラ、フルHD解像度以上の6.5型クラスの有機ELディスプレイ、指紋認証や顔認証などの生体認証、5G通信対応など――これらの要素はおおむねどのメーカーも共通している。

 OSもiOSかAndroid OSの実質二択となり、プラットフォームによる差別化は難しい。Googleの標準機能にのっとる場合はUI(ユーザーインタフェース)もほぼ同じになり、OS側の機能面も大きく変わらない。

 GalaxyのOne UIや中国系メーカーの自社UIも、根本的な構造は近く、このメーカーの機種でなければ利用できないものは、ほぼ「自社サービス」くらいになっている。極端な話だが、今のスマートフォンでは「できること」というものはどのメーカーの機種を買ってもほぼ同じなのだ。

スマートフォン ハードウェアスペックに差はあれど、スマホでできることは、どの機種でも大差なくなってきた

 カメラやディスプレイの性能は、機能をとことん追求する「こだわり」の世界に突入している。プロセッサは、モデム特許などの関係でSnapdragonを搭載するものが大半だ。かつてのPCで起こったコモディティ化がスマートフォンにも起こっているのだ。

 そして5G時代となる今、この大容量高速通信を生かしたコンテンツがまだ出ていないことも、スマホがつまらないと思わせる一因になっている。10年前の飛躍的な進化の背景にはコンテンツのリッチ化もあり、端末側も要件に合わせて進化を遂げてきた。

 コンテンツの高画質化やリッチ化は今も進んではいるが、10年前と比べると「コンテンツの質の向上」が中心となる。まだゲームチェンジャーやキラーコンテンツと呼べるだけのものが市場に出ていない。

 スマートフォンの機能で標準的になりそうなものを挙げると、8K動画撮影、iPhone 14シリーズにある衛星通信機能といったところだろうか。どちらもプロセッサに依存している部分が強いため、独自の機能とはいいがたい。プロセッサがサポートすればおのずと対応できるだろう。

 革新的といわれたスマートフォンにおける4K解像度のディスプレイも、人間が識別できるドットの精細さを大きく超えているオーバースペックなものだ。 バッテリー持ちに不利になることもあって、今でもソニー以外での採用例はない。

現行のスマートフォンはスペックでは分かりにくい“内面の進化”に注力

 ある意味、今の「つまらない」といえる現状は2016年頃と同じ「成熟期」なのだと考える。次世代のスマートフォンがフォルダブル端末に移行する。その過渡期ともいえる状況では、既存のスマートフォンでは外観上のイノベーションは少ないのかもしれない。

 もちろん今のスマートフォンも着実に進化を遂げている。ただ、それは見た目上の変化やハードウェアスペックで分かるものではなく、実際に商品を触って使ってみないと分からない内面的な部分になってくるのだ。

 ある意味、この内面的な部分を突き詰めるというところは、もうスマートフォンの形といったものが1つの完成系になっていることを示す。より使いやすくするために、ソフトウェアや独自のプロセッサといった内部を煮詰める段階になってきているのだ。

MariSillicon OPPOが開発している画像処理用のプロセッサ「MariSilicon X」のように、メーカーはスペックには現れづらい部分で差別化を進めている

 例えば、OPPO Find X5などのようにQualcommのプロセッサを採用しつつも、自社設計のプロセッサを別途搭載することで、「このスマートフォンでしかできない体験」という新たな付加価値を持つ機種も存在する。

 このあたりはかつてのHuaweiのスマートフォンにも近いアプローチで、自社設計のチップセット搭載で他社との差別化を図る段階にきている。ただ、こうした高度な画像処理は、やはり実際に利用してみないと実感しにくい。

Xiaomi 13 Pro 1型センサーのカメラを搭載した「Xiaomi 13 Pro」

 Xiaomi 13 Proのような機種はスペック上で1型センサー、マクロ撮影強化! とアピールしても、このイノベーションは実際に使ってみないと理解するのは難しい。カメラ周りは特にカタログスペックだけでは判断することが難しくなってきている。

 さまざまなスマートフォンを使ってきた筆者からすると、昨今の機種は昔のような見た目やスペック表で分かるような「大胆な変化」は少ないのかもしれない。

 トレンドもあって形状や機能、基本的な性能もある意味横並びとなるものが増えた。スペック表だけで判断してしまうと「つまらない」「あまり変わらない」と思う人もいるかもしれない。

 つまらないと感じるところまで進化した今のスマートフォンは「プロダクトとして完成された」と判断することができる。

折りたたみスマートフォンが新たなトレンドになる可能性

 そして、近年ハードウェアの方面でとても興味を引かれるのは、折りたたみのスマートフォンたちだ。

折りたたみスマホ 折りたたみスマホが、スマートフォンの次のトレンドになれるかは注目したい

 折りたたみスマホは、ハードウェアとしては登場から5年が経過したことで成熟されつつあり、防水性能の獲得や画面下カメラの採用まで来た。

 MWC Barcelona 2023でも、各社から多くの興味深いコンセプトモデルがお披露目されている。3つ折りタイプや観音開きのもの、さまざまなコンセプトが発表されている。加えてローラブル(巻き取り式)をはじめとした商品もあり、ハードウェアの進化は止まらない。

 その一方で、ソフトウェアをはじめ、ユーザーに対してどのような使い方を提供していくのかといったところでは、まだまだ手探りといった印象がある。これからのスマートフォンでは、独自のプロセッサや高度なソフトウェア処理を売りとした「差別化」の側面と、折りたたみ機構による見た目の新しさがトレンドになるだろう。

Find N2 Flip OPPOの折りたたみスマートフォン最新モデル「Find N2 Flip」

 OPPOが販売している「Find N2 Flip」は、折りたたみ端末の中でもサブディスプレイを大型化して差別化を図った。独自プロセッサ「MariSilicon X」による高度な画像処理も併せ持っている。売りのカメラも同社らしくハッセルブラッドのチューニングとなっている

 ある意味これからのスタンダードともいえる要素を兼ね備えたスマートフォンだ。これからのスマートフォンがどのような進化を遂げていくのか。筆者も楽しみだ。

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