楽天グループは11月9日、2023年度(※1)第3四半期の決算を発表した。楽天モバイルを含む「モバイルセグメント」における売り上げ収益は887億円(前年度同期比で5%増)、Non-GAAP(※2)営業損失は812億円(前年度同期比で364億円改善)となった。
前日(11月8日)に行われたソフトバンクの2023年度(※3)第2四半期決算説明会では、同社の宮川潤一社長が「楽天モバイルに自社の基地局ロケーションやバックホール(※4)を貸す議論をしてもいい」という旨の発言をした。
本件について、楽天モバイルの三木谷浩史会長(楽天グループ社長)はどう受け止めたのだろうか。
(※1)楽天グループの決算期は1月1日〜12月31日
(※2)会計原則(ルール)に基づかない指標を加味した財務状況
(※3)ソフトバンクの決算期は4月1日〜翌年3月31日
(※4)基地局とコアネットワーク(交換機など)を結ぶ通信回線
11月9日に行われた楽天グループの決算説明会では、宮川社長の“提案”をどう受け止めるか質問がなされた。やり取りは以下の通りだ(体裁を整えている)。
質問者 昨日(8日)のソフトバンクの決算会見で、宮川(潤一)社長が(楽天モバイルの)プラチナバンドの整備について、バックホール回線の貸し出しなど、具体的なことまで触れた上で支援したいとの考えを示されました。NTT法の廃止に反対する3社ということで、“絆”が強まっているような気もするのですが、ソフトバンクとの連携について、三木谷さんはどうお考えなのでしょうか。
三木谷会長 ソフトバンク(や楽天モバイル)を含む3社だけでなく、自治体や地域のCATV事業者を含む180者が、平たくいえばNTTグループ以外の全員が(NTT法の廃止に)反対している状況にあると思っています。
国民の血税(の一部)を使って構築されたネットワークを、サービスを含めてこれから垂直統合していこうと。そもそも、ドコモの合併(編集部注:厳密にはNTTによるドコモの完全子会社化)もどさくさに紛れてやられてしまったと思っています。これは国民の通信という意味において危険だと思っていますので、(NTT法に関する議論については)3社はおおむね同じ方向を向いていると思っています。この独占体制から、どのように競争を生み出していくのかという観点でも、大きな意味において同じ方向を向いているのかなと思っています。
(宮川社長の発言については)報道ベースでしか聞いていないので、本件について具体的にどういう可能性があるのかは、今後ソフトバンクさんだけではなく、KDDIさん、ひいてはNTTドコモさんも含めて、可能性をいろいろと検討していくことになると思います。
いらないところで競争をするのは業界としても(意味が)ないと思っているので、「協調すべきところ」と「競争すべきところ」を整理して、いろんな形でお話ししていければと持っています。
三木谷会長としては、ソフトバンクだけでなくドコモやKDDIを含めて協調すべき部分は協調して事業に取り組む考えのようだ。
今回の決算説明会では、楽天モバイルにおける設備投資の削減にも言及があった。2023年度は2000億円を予算として計上していたが、若干だがそれを下回る予定だという。また、現在のネットワーク構成でも1000万以上の回線を十分に収容できることから、2024〜2025年度は設備投資を抑制する方針を取る。
「新たに取得したプラチナバンド(700MHz帯)への対応はどうするの?」という点については、まず都市部では1.7GHz帯やau(KDDI/沖縄セルラー電話)ネットワークでのローミングでは賄えないエリアのカバレッジを優先して整備する方針で、10年間で544億円の投資は後半(5〜10年目:2028〜2033年度)に集中させる。
内容次第だが、他事業者との「協調」がうまく進めば、設備投資をある程度抑えられる可能性はある。楽天モバイルは、それを狙っているのだろうか。
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