「ドコモが取れていないユーザーを取る」 NTTメディアサプライが海外eSIMサービス「Lesimo」を始めたワケ(3/3 ページ)

» 2023年11月10日 11時49分 公開
[石野純也ITmedia]
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なぜ「Lesimo」というサービス名に?

―― Lesimoという名前もそういった層を狙ったネーミングだったのでしょうか。

茅原氏 ロゴとカラーは20代の男性・女性両方を意識して、グラデーションカラーとグリーンを採用しました。海外用Wi-Fiルーターの会社は青や黒が多いので、差別化にもなります。また、海外でそのまま使える国内キャリアのahamoや楽天モバイルとも重なっていません。

 Lesimoの「Le」は、フランスの定冠詞で英語の「The」と同じような意味があります。「mo」はモバイルで、その間に「eSIM」という文字が入るようにしました。「The eSIM」という意味合いでやっています。フランス企業とも手を組んでいるので、このような名前になりました。

―― フランス企業というと、UbigiのTransatelでしょうか。

茅原氏 はい。詳細はまだ言えませんが、Transatelです。

―― ちなみに、ネーミングがちょっとドコモのサービスに似ているのは気のせいでしょうか。動画サービスの「Lemino(レミノ)」とは、たまに間違えてしまいます(笑)。どことなく、「irumo(イルモ)」とも語感が近いと思いますが、これは意識したのでしょうか。

新宅氏 Leminoはしびれるタイミングでしたね……。ちょうどLesimoをLesimoに決める検討をしていたときに、茅原がニュースを見て「Leminoが出た」と話をしていました(笑)。

茅原氏 お互いシークレットな情報でグループ間共有もされていませんでしたが、商標登録を調べたらLeminoの方が2カ月ほど早かったようです。

航空会社と提携した背景、国内向けのサービスは?

―― そこは偶然だったんですね。9月から立て続けに航空会社と提携しています。ユーザーの導線を考えると自然なように思えますが、これはどのような経緯で決まったのでしょうか。

新宅氏 当初から航空会社も含めてプロモーションしたいと考えていたのですが、Peachは知り合いの広告代理店の方からの持ち込み提案のような形で実現した施策です。渡航の直前まで通信手段を準備するのを忘れている方は必ずいます。Peachで航空券を手配するとメールが届く、その中にLesimoがあるという形でアピールすることで、そこからアクティベートする方々がどのぐらいいるのかを計ることができます。本当にそういう人がeSIMを買うのかどうかを見てみたかった意味合いもあり、やってよかったと思っています。ANAマイレージは、主に茅原が開拓しています。

茅原氏 eSIMを購入する層がどこと近いかで販路を検討してきましたが、オンライン特化の旅行代理店や航空会社は、最重要の開拓先として広げていきたいと考えています。PeachとANAは、そのうちの2社です。今は第1弾が動いているところですが、こうした取り組みは今後、どんどん広げていこうと思っています。

Lesimo ANAマイレージクラブと提携し、Lesimoの利用料金に応じて100円ごとに1マイルがたまる

―― 今は海外向けですが、国内向けは考えているのでしょうか。バックアップ回線のようなニーズもあるかと思います。

茅原氏 現時点では、そこを意識的に閉じています。整理ができ、問題がなければオープンにしてもいい。短期契約ができるのは、既存キャリアとの大きな違いで、海外からの旅行者にとっても購入がしやすくなります。(ドコモとの)そこでのすみ分けはできると思います。

新宅氏 インバウンドもコロナが明けて、顕著に伸びています。eSIMに慣れた海外の方が、日本でも使えるとなればいいですよね。ただし、今はいったん外に出ていくこと(海外旅行向け)に注力しています。

取材を終えて:NTTグループの“隙間”をうまく埋めたサービス

 海外用eSIMに突如参入したかのように見えたLesimoだが、その下地にはNTTメディアサプライが手掛けていた法人向け事業があった。コンシューマー向けという違いは大きいものの、仕入れた回線を販売するという構造は、同社がこれまで展開してきたMVNOの事業に近い。また、国際ローミングを提供しているドコモが、海外向けeSIMサービスに参入する可能性は限りなく低い。その意味で、LesimoはNTTグループにとっての“隙間”をうまく埋めたようにも見えた。

 一方で、eSIMは国境を越えやすく、海外事業者の一部も日本語でサービスを展開している。結果として、シンプルな価格競争に陥りがちだ。インタビューからは、NTTグループの安心感やサポートのクオリティーで差別化を図っていくことがうかがえたが、B2Cは同社にとって経験が浅い分野。プロモーションやサポート、サービスのユーザーインタフェースなどでコンシューマーにどう寄り添っていくのかが、今後の課題になりそうだ。

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