楽天モバイルの「プラチナバンド」拡大計画が遅いワケ 背景にある“複雑な事情”石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年11月11日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 楽天モバイルが、契約者獲得を加速させている。11月9日に開催された決算説明会では、直近の純増数が月20万に迫っていることが明かされた。6月に導入した「Rakuten最強プラン」や各地域でのマーケティング強化、法人契約の拡大などがこの数字を支えているという。赤字幅が縮小したとはいえ、黒字化はしておらず、迫る社債の償還に向けて資金調達も必要ながら、契約者数の拡大は同社にとって安心材料といえそうだ。

楽天モバイル 楽天モバイルの純増数が、大きく加速し始めた。それに伴い、売上高や営業利益なども改善している

 KDDIとの新ローミング契約や、プラチナバンドである700MHz帯の獲得により、エリアの拡大にもめどが立ち始めている。一方で、同社はコスト削減の必要もあり、700MHz帯のエリア展開はやや消極的にも見える。他社からはそのスピードが「遅い」との声も聞こえてきた。では、同社はどのようにエリアを広げていくのか。開設計画や決算での説明から、今後の展開を予測していきたい。

月20万の純増にリーチがかかった楽天モバイル、解約率低下や法人契約が奏功

 楽天モバイルが、契約者の獲得に弾みをつけている。第2四半期(4月から6月)では、3カ月で約20万契約程度の純増だったが、第3四半期(7月から9月)にはこれが35万契約にまで拡大。直近ではさらにその勢いが増しており、「9月、10月から非常に会員数が増えている」(楽天グループ 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏)状況だ。三木谷氏によると、10月の純増数は19万2000で、20万に迫る規模になってきた。

楽天モバイル 直近では勢いがさらに加速していると語る三木谷氏

 契約者数はまだ512万を超えたところだが、純増数では、他社を上回るようになっている。例えば、ドコモは第2四半期(7月から9月)で、7万3000の契約者が純増しているが、1カ月平均では約2万4000にとどまる。KDDIのマルチブランドID数は、同期間で3万6000ほどしか増えていない。3社の中では最も純増重視の戦略を取るソフトバンクですら、主要回線の四半期純増数は25万9000で月間の純増数は8万6000強にとどまる。

楽天モバイル 写真はソフトバンクの純増数。大手3社の中では多いが、6カ月で40万ほど。楽天モバイルの増加ペースがいかに速いかが分かるはずだ

 新規参入キャリアで他社より伸びしろがあるとはいえ、20万に迫る純増数は勢いがあるといえる。2022年は1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」を廃止したことで、純減を余儀なくされてしまった楽天モバイルだが、ようやく、契約者の獲得ペースを取り戻してきたことがうかがえる。三木谷氏も、「足元で多少のアップダウンはあるが、減速というよりもむしろ加速していく流れにある」と自信をのぞかせた。

 三木谷氏によると、純増が加速した背景には以下の3つの理由があるという。1つ目が、解約率の低下だ。数字は四半期ごとに低下してきており、10月には1.72%にまで減少した。「3社の中に(楽天モバイルが)入ってもそん色ないのは、1つの大きな要因」だとする。UN-LIMIT VIの解約が一巡し、UN-LIMIT VIIやRakuten最強プランで、楽天モバイルを本格的に利用するユーザーが増えてきたのがその背景にある。

楽天モバイル UN-LIMIT VIの廃止で一時は5%台にまで上昇した楽天モバイルの解約率だが、その後は徐々に落ち着き始めている

 2つ目の理由が、コンテンツのバンドルを拡大したことや、地域ごとの販売促進体制を確立したことだという。三木谷氏は「ケータイというのは全国プロダクトでもあるが、地域プロダクトでもある。自分の生活範囲内で(電波が)入るかどうかが一番重要。地域ベースの販売促進体制も、確立されつつある」と語る。3つ目が、1月に開始した法人向けプラン。「楽天グループで働いている人や、出展社など、関わる人は数百万人いる。そういうリレーションシップを使って、意味のある法人契約を増やしている」(同)。

楽天モバイル 法人向け契約が好調だという。写真は発表時のもので、現在は無制限プランも追加されている

 これに伴い、データ使用量が増え、1ユーザーあたりからの平均収入であるARPUも上昇している。データARPUは1737円と、順調に拡大。前年同期の1205円から500円以上増加している。楽天モバイルはワンプランを貫いており、ユーザーのデータ使用量が増えれば、自動的に料金は上がっていく。そのため、ARPUの拡大は、楽天モバイルをメイン回線として使い、データ使用量が増えている証拠といえる。第3四半期で、平均データ使用量は23.5GBに達した。

楽天モバイル 前年同期比で、ARPUが大きく伸び始めている
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年10月10日 更新
  1. 「Pixel 8a(ほぼ新品)」を実質5.9万円で購入するも、直後に“予想外の悲劇”が起きたハナシ (2024年10月09日)
  2. 世界初3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」に触れる 衝撃の完成度に“未来のスマホ”を見た (2024年10月10日)
  3. 携帯番号に「060」が採用されるワケ 「電話番号とは何か」を歴史とともに振り返る (2024年10月09日)
  4. 総務省がFCNTに行政指導 「arrows We2」で工事設計に含まれないアンテナで電波を発射していた事案について (2024年10月09日)
  5. 「iPhone 16」「Pixel 9」シリーズどちらを選ぶ? お得に買えるのは? スペックを比較してみた (2024年10月08日)
  6. 国産スマートグラス「MiRZA(ミルザ)」、24万8000円で10月16日に発売 メガネ感覚で外界をふさがず情報取得 (2024年10月09日)
  7. ドコモのSIMカード約93万枚で通信不良の可能性 交換対応へ (2024年10月08日)
  8. 「TORQUE G06」新色のオリーブグリーンが抽選で3人に当たる 京セラがご愛用感謝キャンペーン開催 (2024年10月09日)
  9. ヨシノパワーの固体電池ポータブル電源「Yoshino B300 SST」を試す リビングに置いても違和感のないデザインに注目 (2024年10月08日)
  10. CIO、Amazon「プライム感謝祭」の対象商品を発表 第2弾は充電器や電源タップ (2024年10月07日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー