楽天モバイルが、契約者獲得を加速させている。11月9日に開催された決算説明会では、直近の純増数が月20万に迫っていることが明かされた。6月に導入した「Rakuten最強プラン」や各地域でのマーケティング強化、法人契約の拡大などがこの数字を支えているという。赤字幅が縮小したとはいえ、黒字化はしておらず、迫る社債の償還に向けて資金調達も必要ながら、契約者数の拡大は同社にとって安心材料といえそうだ。
KDDIとの新ローミング契約や、プラチナバンドである700MHz帯の獲得により、エリアの拡大にもめどが立ち始めている。一方で、同社はコスト削減の必要もあり、700MHz帯のエリア展開はやや消極的にも見える。他社からはそのスピードが「遅い」との声も聞こえてきた。では、同社はどのようにエリアを広げていくのか。開設計画や決算での説明から、今後の展開を予測していきたい。
楽天モバイルが、契約者の獲得に弾みをつけている。第2四半期(4月から6月)では、3カ月で約20万契約程度の純増だったが、第3四半期(7月から9月)にはこれが35万契約にまで拡大。直近ではさらにその勢いが増しており、「9月、10月から非常に会員数が増えている」(楽天グループ 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏)状況だ。三木谷氏によると、10月の純増数は19万2000で、20万に迫る規模になってきた。
契約者数はまだ512万を超えたところだが、純増数では、他社を上回るようになっている。例えば、ドコモは第2四半期(7月から9月)で、7万3000の契約者が純増しているが、1カ月平均では約2万4000にとどまる。KDDIのマルチブランドID数は、同期間で3万6000ほどしか増えていない。3社の中では最も純増重視の戦略を取るソフトバンクですら、主要回線の四半期純増数は25万9000で月間の純増数は8万6000強にとどまる。
新規参入キャリアで他社より伸びしろがあるとはいえ、20万に迫る純増数は勢いがあるといえる。2022年は1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」を廃止したことで、純減を余儀なくされてしまった楽天モバイルだが、ようやく、契約者の獲得ペースを取り戻してきたことがうかがえる。三木谷氏も、「足元で多少のアップダウンはあるが、減速というよりもむしろ加速していく流れにある」と自信をのぞかせた。
三木谷氏によると、純増が加速した背景には以下の3つの理由があるという。1つ目が、解約率の低下だ。数字は四半期ごとに低下してきており、10月には1.72%にまで減少した。「3社の中に(楽天モバイルが)入ってもそん色ないのは、1つの大きな要因」だとする。UN-LIMIT VIの解約が一巡し、UN-LIMIT VIIやRakuten最強プランで、楽天モバイルを本格的に利用するユーザーが増えてきたのがその背景にある。
2つ目の理由が、コンテンツのバンドルを拡大したことや、地域ごとの販売促進体制を確立したことだという。三木谷氏は「ケータイというのは全国プロダクトでもあるが、地域プロダクトでもある。自分の生活範囲内で(電波が)入るかどうかが一番重要。地域ベースの販売促進体制も、確立されつつある」と語る。3つ目が、1月に開始した法人向けプラン。「楽天グループで働いている人や、出展社など、関わる人は数百万人いる。そういうリレーションシップを使って、意味のある法人契約を増やしている」(同)。
これに伴い、データ使用量が増え、1ユーザーあたりからの平均収入であるARPUも上昇している。データARPUは1737円と、順調に拡大。前年同期の1205円から500円以上増加している。楽天モバイルはワンプランを貫いており、ユーザーのデータ使用量が増えれば、自動的に料金は上がっていく。そのため、ARPUの拡大は、楽天モバイルをメイン回線として使い、データ使用量が増えている証拠といえる。第3四半期で、平均データ使用量は23.5GBに達した。
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