Rakuten最強プランは、KDDIローミングのパートナー回線エリアでデータ容量が無制限になった。これによって、楽天モバイルの使い勝手が向上。東京23区など、都市部でのローミングも開始する予定で、不安視されていたエリアの拡大も期待できる。ただし、このスタートはやや遅れているようで、現時点でもサービスが始まっていない。三木谷氏によると、「ほとんどのところは年内に開始してもらえる」といい、新ローミング契約が本領発揮するのはこれからになる。
エリア対策が難しい場所をローミングに頼ることで、コストの削減も実現する。基地局の拡大にかけていた投資を抑制できるからだ。実際、2023年の設備投資額は、期初に予定していた2000億円を下回る見通し。2024年はこの額をさらに圧縮する。一方で、楽天モバイルは新たに700MHz帯の3MHz幅を取得しており、この周波数帯も「来年(2024年)の春以降に使われる」。総務省に提出した開設計画では26年3月ごろと記載されていたが、サービスインのスケジュールは巻き上げるめどが立っているようだ。
ローミングに加え、悲願でもあった自前の700MHz帯でネットワークを構築できれば、楽天モバイルの“弱点”だったエリアの狭さが解消される可能性がある。ただ、そのペースは他社の目にも、やや遅いように見えているようだ。KDDIの代表取締役社長CEO、高橋誠氏は、「開設計画を見たがすごい遅いペース。もう少し速いと思っていた」と驚きの声をあげた。ローミングで800MHz帯を貸すKDDIにとっても、楽天モバイルのスピードは想定外だったようだ。裏返すと、それまでの間はKDDIのネットワークに頼ることを意味する。
ドコモの代表取締役社長、井伊基之氏は、時期について「早いか遅いかは楽天が決めること」としつつも、「背景におそらくアンテナを(新規で)建てなければいけないこと。アンテナは大きく、場所も投資も必要。1年で全てできる数ではない」と理由を推測する。高橋氏も、「楽天の鉄塔を見ていると結構ギリギリで作っている。あそこに700MHzのアンテナを新たに入れるのは苦しいのだと思う」と語る。
楽天モバイルは、既に展開している1.7GHz帯の基地局やそれを設置した場所を活用し、700MHz帯を追加していく方針を示す。三木谷氏は、「他社は場合によっては新しいアンテナを設置しなければならないが、われわれは無線機の中に700MHz帯用の装置を設置するだけで、プラチナバンドも同じアンテナから出せる」と反論する。これは、コストを抑えつつ、700MHz帯を全国展開する根拠だ。実際、楽天モバイルが700MHz帯にかける設備投資は、544億円にとどまる。
一方で、予定している基地局数も10年間で約1万と少ない。帯域幅などの違いはあるが、ドコモは800MHz値で7万強、KDDIは8万を超える基地局を運用している。ソフトバンクの900MHz帯も、基地局数は6万を超える。ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏が、「10年で1万局、500億円ちょっとという投資で(エリア拡大が)できるとは思えない」と語ったのは、そのためだ。また、楽天モバイルの主張通り、簡易的に700MHz帯を追加できるのであれば、短期間でエリアの構築が済んでしまうようにも思える。
三木谷氏は完全仮想化やOpen RANで投資額を抑えられるというものの、基地局数の差は説明できていない。しかも544億円の投資は、10年のうち、後半に設備投資が集中するという。サービス開始当初は、都心部建物内のカバレッジ対策がメインになる。裏を返せば、2024年のサービス開始当初のエリアは限定的になるといえる。では、なぜ楽天モバイルのプラチナバンド拡大は他社が心配するほどスローペースなのか。
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