11月27日の参議院予算委員会で、河野太郎デジタル大臣が、答弁中にスマートフォンを利用して注意される場面があった。参議院の委員会ではスマートフォンの使用が禁止されている。
ネットではこの出来事について「ルールで決まっている以上、使用してしまったときに注意されるのはしょうがない」「スマホも紙もタブレットと変わらないから答弁できればいいのでは」「的を射た回答を得られるなら容認すべき」「ペーパーレスの時代なのに、時代錯誤な注意」など、賛否両論が挙がっている。
あらためて予算委員会の中継を聞いてみたが、質疑のやりとりを聞いていると、ふに落ちない点があった。
河野氏が注意された場面は、ライドシェアについての答弁が行われていたとき。ライドシェアは、一般の運転手が自家用車を使って有料で一般人を乗せて送迎するサービス。日本では現在禁止されているが、導入向けての議論が進んでおり、利用者の安全性をどのように確保するのかが焦点となっている。
ライドシェアは海外の一部の国では利用できるが、非正規の値段を請求する、見ず知らずの土地に連れて行き強盗・強姦を行う、といった事件が発生している。そこで外務省は、「依頼した車と実際に到着した車に間違いがないかを確認する」「ドライバー情報を確認する」「基本的に後部座席を利用する」「家族や友人に予定を共有して不測の事態に備える」といった注意喚起を行っている。在ロサンゼルス総領事館は、渡米する日本人に向けた注意喚起をまとめた「安全の手引き」に、ライドシェアの項目を2019年に追加している。
こうした前提を確認した上で、立憲民主党の辻元清美参院議員が「河野外務大臣、(言い直して)河野大臣にお聞きします。2019年3月19日にライドシェアの注意喚起が『安全の手引き』に入りました。このときの外務大臣はどなたでしょう?」と質問した。
すると河野氏は「ちょっと確認します」と言い胸ポケットからスマホを取り出して調べ出したところ、「今ちょっと、スマホの利用は……」と注意を受ける。すると「あ、ダメなんですね」と言って再びスマホをしまい、「2019年3月だと、ひょっとすると私かもしれません」と回答。これに辻元氏も「注意喚起を入れたのは、河野外務大臣時代なんですね。私はとても賢明なご判断だったと思いますよ」とコメントする。
答弁でスマホを取り出して調べるほどの事柄なので、よほど難しい質問だったのかと思いきや、河野氏が調べていたのは「自分のこと」だったのだ。そもそも辻元氏も河野氏を名指しで聞いた時点で分かりきっていた答えだろうし、質問をした後にほほ笑んだ辻元氏の表情が全てを物語っている。
ネットでは「河野氏は意図的に答えなかったのでは?」という声も挙がっている。つまり分かりきったことをあえて質問をすることに対して反抗の姿勢を見せたかったのではないか……と。河野氏が本当に忘れていただけかもしれないが、スマホを取り出した意図を考えると、何とも興味深いものがあった。
ちなみに、ライドシェアについては、岸田文雄総理大臣が「運用に当たって責任の所在をどこに置くのか。年内をめどに方向性を示していきたい」と述べており、モバイル(モビリティ)的にも注目したいところ。
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