普段、スマートフォンとPCを外出先で使う人は、スマートフォンのモバイル回線を利用してインターネットに接続する「テザリング」を駆使しているのではなかろうか。筆者は日頃から「MacBook Air」(以下、MacBook)と「VAIO Z」(以下、Windows PC)の両方で作業をしており、外出先ではスマートフォンのテザリングを使わなければならないことがあるが、どうしても面倒だと感じる部分があるので、テザリングの概要や実際の利用手順を踏まえて、何が面倒かをお伝えしたい。
そもそもテザリングは英語で「tethering」と記す。飼い主と動物をつなぐ鎖を意味する「tether」が語源だが、その構図とほぼ等しくスマートフォンとPCをつないで、インターネットに接続することから、テザリングと呼ばれるようになった。
Androidのスマートフォンでは設定メニューに「テザリング」「アクセスポイント」と表記されることが多いが、iPhoneではテザリングではなく「インターネット共有」と表記される。全機種共通表記ではないので注意したい。
ここからは実際の利用手順を踏まえた上で、何が面倒なのかをお伝えしたい。
基本的に外出先でテザリングを利用するには、スマートフォン側でテザリング機能を有効にしなければならない。
Androidはモデルによって使い方が異なるので、一概にこの手順だと言い切るのは難しいが、例えば、「Galaxy Z Fold4」ならロック画面で上から下に向かってスワイプし、コントロールパネルを表示。その後、「Wi-Fiテザリング」をタップして、パスワードなどのロックを外す。
「iPhone 15 Pro Max」の場合、設定→「インターネット共有」→「ほかの人の接続を許可」の順に進み、その横のアイコンをタップして有効にする。その都度、こうした手順を踏まずにインターネット共有をオンにする方法は他にもある。
1つはコントロールセンターから呼び出す方法だ。手順は次の通り。
もう1つはよく使う機能をすぐに呼び出したり、特定の操作を自動化したりできる「ショートカット」だ。これでテザリング機能をすぐに有効化できる。
「ショートカット」のアプリで「+」→「アクションを追加」の順に進み、検索窓に「インターネット共有を設定」と入力。一番上に表示された項目をタップし、アクションを「変更」から「切り替える」に変えた上で保存する。
作成したショートカットをホーム画面ではなく、ロック画面からもアクセス可能なウィジェット一覧に追加することで、iPhoneをパスワードなどでロックしている状態でも、以下2つの手順でオン/オフを切り替えることが可能に。
先ほどのコントロールセンターを使う手順よりは楽になったが、それでも操作そのものは必要だ。
こうして見ると、AndroidとiPhoneともに画面の操作そのものは必要なことが分かる。
Androidのスマートフォンで厄介なのは前述の通り、モデルによって操作の手順が異なること。Wi-Fiテザリングがコントロールパネルにプリセットされていない場合、テザリング機能のショートカットを手動で追加する必要がある。
iPhoneに関してはショートカットで手順を簡素にできるとはいえ、その設定すら必要になる。もう1点だけ補足すると、MacBookからiPhoneのインターネット共有の機能を遠隔で有効にする方法はあるが、Windows PCとiPhoneの組み合わせでは利用できない。
これらがテザリングを利用したいと思わない理由だ。
一方、こうした手間を省ける機能もある。AQUOSの一部モデルに搭載されている「テザリングオート」だ。テザリングオートは設定さえ済めば、いちいちテザリング機能のオン/オフを切り替えずに、設定場所で自動的にテザリングをオンにできる。テザリングオートはGPS(Global Positioning System)でスマートフォンの位置情報を取得し、指定した住所へ行けばテザリング機能が自動で有効になる。
最大5カ所の住所を登録できるため、自他やよく行く場所を複数登録しておける。試しに「AQUOS sense8」を外へ持ち出し、高層階(集合住宅)の自宅やよく利用するカフェを登録した上で、テザリングオートが機能するのかを確認してみた。
テザリングオートが機能したのは5カ所の内、自宅とよく行くカフェの2カ所でテザリングオートが機能したが、残り3カ所の地下エリアではテザリングオートが機能しなかった。衛星の電波を拾いづらいトンネルの中や地下、屋内などでは有効に働かない場合があることが分かった。
筆者の場合、別途月額料金はかかるが、SIM/eSIM対応のWindows PCやモバイルWi-Fiルーターを活用している。「金銭的な負担」と「テザリング起動の手間」をてんびんに掛けた結果、テザリング起動の手間が上回ったためだ。
SIM/eSIM対応のWindows PCで使う通信サービスとして、月額基本料0円で使いたいときにだけ利用料金を支払える「povo」を選んだ。MacBookについてはiPhoneと組み合わせて使ったり、パスワード入力などの初期設定さえ済めば、起動だけで接続可能なモバイルWi-Fiルーターを活用したりして、テザリング起動の手間を省いている。
「手間を省く」というとささいなことに思えるかもしれないが、この、ちょっとした手間が積み重なると大きなストレスになる。外出先で、ストレスフリーでPCからネット接続できる環境は、当面変えることはないだろう。
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