楽天モバイルを契約するユーザーは、その6割程度が「オンラインでのサインアップになっている」(同)という。他社と比べて店舗網が少ないことも一因だが、同社がもともと、楽天市場や楽天トラベルといったネットを主戦場にしていたことも大きい。2023年には、楽天カードの保有者が本人確認を省いでデータSIMを契約できる仕組みを導入。8月には、楽天銀行、楽天証券、楽天生命の本人確認情報を流用することで、音声プランも契約できるようになった。eSIMとの組み合わせで、サービス提供までの時間を短縮できるのが特徴だ。
ただ、三木谷氏からは、この簡易さにも満足していない様子がうかがえた。同氏は、「まだ複雑。30分ぐらいかかってしまう」と語る。これを、「より簡単にしろ。3分で終わるようにしろ(と言っている)」(同)という。同時に、オンラインでのマーケティングも強化していく方針。三木谷氏は「楽天の中でさらにインターネットマーケティングの精度を上げたり、海外のイノベーティブなモバイルの会社もあるのでそういったUX(ユーザー体験)を参考したりしていきたい」と語る。詳細は明かされなかったものの、こうした施策の強化は、「第2四半期(4月から6月)以降にギアを上げていきたい」(同)という。
一方で、当初は2024年以降に予定されていた衛星とスマホの直接通信には、まだ時間がかかることが分かった。三木谷氏によると、商用化は「26年を目指している」という。KDDIは、米Space XのStarlinkを使い、直接通信を2024年から実現する予定。当初はSMSに限定されるが、準備が整い次第、音声通話やデータ通信にも拡大していく。これに対し、楽天モバイルは楽天グループが出資する米AST SpaceMobileの低軌道衛星を活用。「スペースモバイル計画」として、国土カバー率100%の実現を目標にしている。
背景には、打ち上げた衛星の数が十分でないことがある。三木谷氏によると、日本全土をカバーするには「約55機の衛星が必要」。ASTが打ち上げに使うSpace Xのロケットに搭載できるのは、「1回で6〜8機ほど」(同)。国土カバー率100%を達成するには、「7〜8回の打ち上げが必要になる」(同)計算だ。実証実験が進み、「最初のメカニズムとして、動くところ(音声通話やデータ通信の実験)は成功した」(同)ものの、サービスとして提供するには衛星の数が足りないというわけだ。
打ち上げには、資金も必要になる。AST SpaceMobileは、1月18日(現地時間)に、Google、AT&T、Vodafoneから、総額で1億5500万ドル(約229億円)の資金調達を実施したことを発表。2024年中のサービスインを目指す。この戦略的投資は、AST SpaceMobileの商業的展開の支援を目的としているという。順調に行けば、2024年中にもサービスは開始できる見通しだ。その準備がようやく整いつつあるが、55機の衛星を投入するには「それでもまだ足りない」(同)。日本での商用展開に向け、越えなければならないハードルはまだまだあると見てよさそうだ。
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