こうしたセット割は、一般的に解約抑止にも効果が出る。河野氏は、「ライフタイムバリューといわれるチャーン(解約)にも効いてくる」と語る。楽天モバイルの解約率は、2023年末時点で1.7%。1GB以下0円を廃止した「UN-LIMIT VII」導入直後の5.4%をピークに、徐々にその数値は下がっている。三木谷氏も、「解約率は劇的に下がってきている」と自信をのぞかせた。
ユーザーの獲得が進み、解約率が低下すれば、契約者数は伸びやすくなる。実際、Rakuten最強プラン導入以降、「無料化(1GB以下0円)をやめていったんへこんだ契約数が、それ以前のレベルに戻ってきている」(同)。特に、2023年第4四半期(10月から12月)の伸びが顕著で、全四半期から86万契約を積み増し、トータルで596万契約に達した。1月には、MNOだけで600万契約を超えたことを明かしている。
ペースが伸びているのは、楽天市場の出店者を中心とした法人営業が奏功しているためで、今後、徐々にその勢いが落ちていく可能性はあるが、純増数の拡大と解約率の低下という両輪が回り始めている印象は受ける。最強家族プログラムは、個人のユーザーにその勢いを波及させるための施策。黒字化のため、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)を上げていく楽天モバイルにとっては、若年層を取り込みやすくなるメリットもある。
家族丸ごと楽天モバイルに移れば、その中に若年層が含まれる可能性も高くなる。若いユーザーは、「データの利用量や利用数が大きい」(同)。Rakuten最強プランは、「使ってもらえば2980円(税込みで3278円)になるし、留守番電話やかけ放題を使っていただければさらに(ARPUは)上がる」(同)。1GB以下0円のUN-LIMIT VIとは違い、楽天モバイル回線をヘビーに使うユーザーを取り込める見込みがあるといえる。
また、ユーザーが楽天モバイルにとどまれば、「結果的に、エコシステム全体の相乗効果が生まれてくる」(河野氏)。楽天モバイルのユーザーは、利用するサービスが1年平均で2.56個増えるといい、未契約者の0.42よりも2つ以上多い楽天グループのサービスを活用する傾向がある。こうしたユーザーは、楽天モバイルを契約していない人と比べて、楽天グループでのARPUが764円高いという。SPU(スーパーポイントアッププログラム)や楽天ポイントを軸に、エコシステム全体が拡大するというわけだ。
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